「優秀な人を採れば会社は伸びる」という幻想


経営者と話していると、出てくる言葉があります。

「結局、人なんだよ」
「優秀な人材さえ来れば変わる」

もちろん、それは間違いではありません。

実際、組織は人で決まります。

ただ、ここで非常に危険なのは、「優秀な人」という言葉を、どこか万能薬のように捉えてしまうことです。

私はこれまで、さまざまな企業を見てきましたが、本当に強い会社ほど、「個人能力への過信」がありません。

むしろ逆です。

「普通の人でも成果が出せる構造」を徹底的に考えています。

一方、伸び悩む会社ほど、「スーパーマン待ち」になっています。

営業が弱いのは、人が悪い。
管理が回らないのは、人材不足。
採用できないのは、応募者レベルが低い。

そうやって問題を「人」に集約していく。

しかし、本当にそうでしょうか。

例えば、優秀な人が入社しても、数か月後には疲弊して辞めていく会社があります。

最初は期待され、現場に投入され、属人的な業務を大量に抱え、ルールも曖昧なまま、「なんとかしてほしい」と期待される。

これは育成ではありません。

ただの「丸投げ」です。

そして経営側は、

「思ったほど優秀じゃなかった」

と言う。

しかし実際には、能力の問題ではなく、「構造」の問題であることが少なくありません。

強い組織には、必ず「土台」があります。

情報共有の仕組みがある。
意思決定基準がある。
教育の流れがある。
相談できる空気がある。
数字の見方が統一されている。

つまり、人が力を発揮できる「環境」が整っています。

逆に、弱い組織ほど、「気合い」と「センス」に依存します。

すると、偶然うまくいくことはあっても、再現できません。

そして再現できない組織は、人が定着しません。

ここで重要なのは、「優秀な人材は重要ではない」という話ではないことです。

むしろ優秀な人ほど、「構造の弱さ」に敏感です。

成長できない環境。
基準の曖昧さ。
感情的な意思決定。
属人的な運営。

そうした組織に、優秀な人ほど長く残りません。

だから経営者に本当に必要なのは、「すごい人を探す力」だけではなく、「人が活きる構造を作る力」なのです。

これは採用でも同じです。

採用活動とは、単に人を集めることではありません。

「この会社なら、自分は力を発揮できそうだ」と感じてもらえるかどうかです。

つまり、採用力の本質は、「企業構造の魅力」です。

そして最後に残るのは、やはり経営者の姿勢です。

優れた経営者ほど、人に期待しすぎません。

その代わり、「人が能力を発揮できる状態」を作ろうとします。

精神論ではなく、構造で支える。

これが成熟した経営です。

会社が伸びない理由を、すべて「人材不足」で片づけ始めた時、実は最初に見直すべきなのは、「組織そのもの」なのかもしれません。

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