世界の長期金利反転ってサステナブルですか?~わこさんのワイン片手の経済視点~
(第六十六回)2026年、反グローバリズムとポピュリズムの帰結はどうなる?
前回は「EU土壌戦略」とワイン産地のお話でした
前回は、ちょっと忘れかけていたEUのグリーンディールの一翼を担う「土壌戦略」のお話をしたうえで、EUの主要ワイン産地の現状との対比をしてみました。結局、ワイン産業は土壌戦略の先行きを鏡写しするような印象にもなりました。
わこさんは2026年の金利動向が気になるんです
今回は、「じゃない方」がもう少し話したいみたいです(笑)。前々回に午年相場をお話した時に、ちょっと触った世界の長期金利とその影響のお話です。日本の10年国債金利が2.1%まで上昇しました。インフレ定着による政策金利引き上げと積極財政による財政赤字懸念が理由とされてはいますが、日本の金利が上がっても円安は修正されず、対ユーロでは最安値更新が続き、欧州からのワイン輸入価格は下がりません。どっちのわこさんも困っています。
日本が利上げしても円安修正されません
日本が政策金利を引き上げたら円安が修正される、という考え方は、海外、特にアメリカの政策金利が引き下げ方向にあるので日本と海外との金利差が縮小して、お金が日本から出て行きにくくなる、だから円安が修正されるんだ、という話がベースになります。金利の差、ということで言うと、政策金利やそれにコントロールされている短期金利の差、という話です。
内外の長期金利差も縮小してるはずなのに
一方で、金利には長期の金利というのもあります。代表的には、各国の10年国債の利回りを比較することになります。こちらの金利が上昇する、というのはその国の債券を売る、ということです。理屈では、政策金利が上がったり下がったりすると、長期の金利もそれにある程度くっついて上がったり下がったりします。上に書いた通り、日本の長期金利は上がってます。その時に海外の長期金利が下がっていてくれると円が買われやすくなる、ということにもなるわけです。
先進国で長期金利が下がらなくなってます
実は、先進国でこの長期金利が下がらなくなってきています。アメリカも12月に金融緩和しましたが、そのあと長期金利は下がっていません。インフレ率が下がってないんです。ドイツも2025年通じると上がっています。欧州では、金融政策の次の一手が「引き締め」かもしれないという話も出てきていて、日本の引き締めが「周回遅れ」になっているので、円安に歯止めがかからないなどという話も出てきています。
インフレ率が下がりにくい背景は?
とすると、この根っこにある「インフレ率が下がらない」ことが「長期金利が下がらない」ことの背景なのかもしれません。なんで?
長期的な変化が関連していると思います
これは、結構根深い問題だと思ってます。長期的な視点で振り返っておきたいと思います。
グローバリゼーションってなんでしたっけ
2025年は、アメリカのトランプ大統領の政策に振り回されました。
世界経済にとって、トランプ大統領以前との違いという点では、「グローバリゼーション」が大きく変質したということでしょう。「グローバリゼーション」は日本語にすると「国際化」ということですが、モノ・カネ・ヒトが国境を越えて自由に動けるようになる、ということです。
世界の貿易量の拡大が経済成長の後押しになっていた第二次大戦後
第二次世界大戦後の世界経済は、アメリカが同盟国の経済成長のために経済圏を作り、西側陣営のアメリカ経済圏の中でのモノの取引(貿易)を自由化しようという流れに乗る形で発展してきました。東西冷戦が終結した後はその動きがさらに活発化して、世界のGDPは世界の貿易量の増加に歩調を合わせるように拡大しました。

おカネの流れもヒトの動きも自由になってコストが下がる
1970年代以降、中東産油国の「オイル・マネー」の存在感が大きくなり、アメリカの貿易赤字が問題視されるようになったこともあって、国際的な資金の動きを自由化して投資を活発化させようという流れが強まりました。そして、東西冷戦終結後はいわゆる発展途上国から低賃金の労働力が先進国に流入する形でヒトが国境を越えて動くようになりました。その過程で企業はコストを下げ、利益を稼ぐ形を作っていきました。
グローバリゼーションの影が様々な問題の原因に
ところが、この流れが様々な問題の原因となったのです。
低賃金の国で作られたモノが先進国に流入して同じような品質のモノの競争力がなくなって先進国では失業が発生します。また、低賃金のヒトが先進国に流入すると、低賃金の雇用は海外からの移民労働者に置き換えられるとともに、そうした移民の流入が先進国の人々の感情面も含めて社会問題につながったりします。さらに、投資機会を求めて資金が自由に流入すると、値上がりする資産とそうではない資産の格差が拡大し、それが人々の間の経済格差を広げることにもなりました。
2016年が曲がり角の始め、新型コロナ禍で明確化、そして…
こうした問題に対する先進国の世論の反発が表面化したのが2016年のイギリスのEU離脱の国民投票と1期目のトランプ大統領の当選だったと言えます。
そして、2020年の新型コロナ禍でヒトやモノの動きが停滞、グローバリゼーションは曲がり角を迎えました。
世界のサプライチェーンの混乱がインフレを引き起こす
コロナ禍からの回復の過程では、世界のモノの動き(供給網)が物理的に混乱する中で欲しいものを買おうとするためインフレになりました。その状況の下でトランプ大統領の2期目が始まったのです。
トランプ大統領がグローバリゼーションの逆回転に動く
トランプ大統領は「古き良きアメリカ」(これが具体的に何を意味するのか細かく考えるとわからなくなりますが)を取り戻すという「Make America Great Again」というスローガンの下、アメリカの貿易赤字を減らすために海外からの安価な輸入品に高関税をかけようとし、「古き良きアメリカ人」の社会を取り戻すために低賃金の不法移民の排斥を行おうとしています。
混乱が大きく逆回転させきれなかったのが2025年
しかし、こうした政策は、アメリカ経済や企業業績に悪影響を与えるとの懸念を膨らませ、株式市場や為替市場が混乱します。そしてそれを見たトランプ大統領は一度引き上げた輸入品の関税率を下げるといった場当たり的な対応を取りました。また、不法移民についても、農業や小売、外食などでの人手不足が深刻化したことで以前ほど厳格な対応ができなくなっています。
グローバリゼーションのメリットが享受できなくなりました
結果的に、2期目のトランプ大統領の1年目は、大きな混乱はあったものの経済への悪影響は限定的となり、NY株式市場も最高値圏で年越しする模様です。しかし、安価な輸入品が欲しいときに買えないかもしれない、という状況や低賃金の(海外)労働者が雇いたいときに雇えない、という状況が好転したわけではありません。
世界的にモノの目詰まりが起きやすいことに変わりはないです
世界最大の消費市場であるアメリカ経済がこういう状況では、アメリカにモノを輸出する各国でも企業が供給網をどのように整備すれば良いのか見通しが立てられず、目詰まりが起きやすいことは変わっていません。
インフレになりやすくなってます
つまり、何かあるとモノやヒトの価格は上がる、インフレになりやすいという姿は変わらないと見ておくべきでしょう。
2026年のアメリカ中間選挙に向けた人気取り政策が出るか?
こうした環境の中で、2026年にはアメリカの中間選挙があります。トランプ大統領の政策は格差拡大につながっていますが、中間選挙での上下両院での議席獲得のために、中低所得層の人気取り政策を打ち出す可能性が考えられます。
日本の財政政策スタンスも人気取り
日本も、「責任ある」とついていますが積極財政スタンスです。現在の高支持率を維持しながら衆院の過半数を取り戻そうとする早期の総選挙が模索されると思います。そのためには人気取り政策です。
欧州でも。ポピュリズムの拡大はインフレ圧力になりやすいです
欧州でも有権者に耳触りの良いことを訴えて伸びてきた極右政党を止めようとするためには政権が有権者に良い顔しなきゃいけなくなります。ポピュリズムがさらに拡がる方向性が見え隠れしています。ポピュリズムの行先は財政赤字拡大によるインフレ圧力につながりやすいでしょう。
トランプ大統領の意を汲むFRB議長が出てくると…
さらに2026年には米FRB(連邦準備制度理事会、中央銀行に相当します)の議長が交代し、トランプ大統領の意をくんで新議長が金融緩和に積極的になったりすると、景気が刺激されてインフレ率が加速する危険性がありますよね。
アメリカの長期金利は金融緩和しても下がってません
景気にとってはプラスの話にもなると期待されますが、場合によっては長期金利が上昇し景気や株式市場にマイナスとなる懸念もあります。2025年12月のFRBの金融緩和の後、長期金利が低下していない(もっと言えば10年債や30年債の利回りは9月の金融緩和直前が最低レベルで、その後はじり高傾向だったりします)ことが2026年にかけての市場心理を物語っているのかもしれません。
世界的に長期金利反転はサステナブルになってしまった?
だとするとアメリカ以外の国でも、インフレになりやすい状況が続くといえるわけですから、世界的に長期金利は上昇しやすい環境、つまり金利反転はサステナブルになっていると考えるべきでしょう。
長期金利の上昇ペースには注意しましょう
2026年、自然体で考えると経済成長率や企業業績の増益率はそこそこのプラスになるという見通しが国際機関や金融機関から発表されています。しかし、長期金利の上昇は景気や企業業績にマイナスとなりえます。上昇のペースによっては金融市場の波乱要因になりうるのではないか、と思ってます。

配当利回りでみた日本株の魅力は低下してきました
一方、日本では、現在の10年国債利回りは東証プライム市場の予想配当利回り(加重平均ベース)と同水準まで上昇しました。個人向け国債は利回り低いですが、債券市場で直接買えるくらいの資金力がある人(なかなかいませんが)なら、利回りだけで株を買う理由はなくなってきました。ここからさらに長期金利が上がるのであれば、株の魅力はさらに低下します。
価格転嫁を順調に行える企業がどのくらいあるかが全体のカギに
予想配当利回りが3%を超えるような個別株はまだまだたくさんありますし、持続的な利益成長が期待できる日本企業も増えてきています。ですから、メインシナリオとしてはそんなに心配しなくていいということになります。ただし、その中で、世界のインフレ率と金利が下がりにくい、場合によっては急上昇するシナリオを考慮した収益構造、つまり価格転嫁が順調に行える企業がどのくらいあるのかが市場全体の底堅さのカギを握っているんでしょう。
リスクはゼロじゃなく顕在化しうるんです
いつも書いていることなんですが、リスクはゼロではなく顕在化しうることを認識したうえで、各社がサステナブルな企業経営の体制を構築してくれることを願ってやみません。
2025年、お読みいただきありがとうございました
2025年のわこさんNoteはこれにて終了です。2026年は1月11日から再開の予定です。来年はもっと読者が増えますように。
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