2024年の生産量1割減のCAVAってサステナブルですか?~わこさんのワイン片手の経済視点~
(第三十一回)プレミアム化と気候変動の影響、どっちが勝つ?
前回はトランプに迫られる中でのEUのワイン産業政策変更のお話
前回は、供給過剰問題を受けてEUのワイン産業政策が修正されたんだけれど、トランプ大統領の関税政策もあって前途多難です、というお話をしました。書いたそばからドナルド君がヘタレたり、いろんなことが起きてますが、最終的にワイン産業がサステナブルになるか、という観点のお話は今後もいろいろな形で続けていきます。それから、数回前にお話ししたワインコングロマリット、コンステレーション・ブランズですが、カリフォルニアのセントラルヴァレーの(普及価格帯)ワイン事業をThe Wine Groupに売却して、高価格帯のワインポートフォリオは(とりあえず?) 手元に残すことを発表しました。コングロマリットのリストには名前を残せるかな?量的には少ないのでどうかな?
今回はスペインのカヴァのお話です
今回は、シャンパーニュは普段飲みにできないけれどシュワシュワな、だけどシャンパーニュにちょっとでも近いお手頃なスパークリングワインが飲みたい!!というわがままな酒飲みに大事なお話。スペインを代表するスパークリングワイン、カヴァ(CAVA)を片手にわこさんが語ります。
2024年のカヴァ生産量は前年比13.4%減少
3月25日に発表されたプレスリリースでは、2024年のカヴァの生産量はボトル換算で2億1800万本と前年比13.4%減少しました。ただし、売上金額は(数字はリリースには書いていないのですが)国内市場、海外市場とも増加した、とのことです。何が起きているのでしょう?
D.O. CAVA confronts product shortage by revaluing its sales | D.O. Cava
カヴァはシャンパーニュと同じ伝統的製法のスペインのスパークリングワイン
背景になるポイントは副題に書いてあるのですが、それを考えていく前に、カヴァについて少しご説明を。カヴァは、スペインの主にカタルーニャ地方(バルセロナのあたりです)で採れるブドウを使い、瓶内二次発酵という、シャンパーニュと同じ伝統的な製法で作られるスパークリングワインです。
スペインのスパークリングワイン生産量は世界第四位
スパークリングワインについてのOIV(International Organisation of Vine and Wine)のグローバル調査レポートは毎年出ているわけではなく、最新版が2020年です(oiv-sparkling-focus-2020.pdf)。このレポートによると2018年のスパークリングワインの生産量はワイン全体の7%、生産量トップ5の国は、第一位イタリア(27%)、第二位フランス(22%)、第三位ドイツ(14%)、第四位スペイン(11%)、第5位アメリカ(6%)残り20%がその他、ということになっています。そろそろ新しいデータが欲しいところですが、概略こんな感じです。


ちなみに消費トップ5は、第一位ドイツ(17%)、第二位フランス(14%)、第三位アメリカ(14%)、第四位ロシア(9%)、第五位イタリア(8%)その他38%となっています。トップがドイツというのは意外に思う方が多いかもしれませんね。このポイント、この後の話に関連します。それとロシアの消費量、今はどうなってるんですかね。ロシアと言えば歴史的にシャンパーニュとかかわりが深いという話は知る人ぞ知るわけですが。

スパークリングワイン伝統的製法の簡単なご説明
さて、カヴァに戻ります。スペインで生産されるスパークリングワインはほとんどがカヴァです。マカベオ、チャレッロ、パレリャーダという三種類がメインの白ブドウ品種で、ここから一度発酵を進めて白ワインを作り(一次発酵)、そのワインボトルに追加のLiqueur de tirage(ワインおよび/またはブドウ果汁、砂糖、培養酵母、酵母栄養素、および清澄剤の混合液)と言われる液体を入れてボトルの中で二次発酵(瓶内二次発酵)を促します。二次発酵が終わった後、働き終わった酵母菌の死骸が自己分解してアミノ酸などのうまみ成分になってワインに溶け出しながら残骸が沈殿するのでそれを回収し、栓をして出荷されます。
瓶内二次発酵で味に複雑さや深みが
この二次発酵のおかげでワインの液体の中に追加の二酸化炭素が溶け込み、抜栓してグラスに注いだ時の泡になるとともに、二次発酵で働いてくれた酵母菌が自己分解したうまみ成分などが溶け込んで、味に複雑さや深みを与えてくれます。合掌。
カヴァの典型的な味わいってこんな感じです
白ワインで早飲みタイプとして作られると、レモンやリンゴのような果実味、ハーブのような香りとともに軽めのブリオッシュとかビスケットのような酵母菌由来の味わいがして、中程度からやや高い酸味の感じられる爽やかなスパークリングワインとなります。暑いときやのどが渇いているときにはこのさわやかな味わいがたまりません。ハーブっぽい香りが時々チャレッロ由来のゴムっぽい香りに感じられることもありますが、これがあると「あ~、カヴァ飲んでる」という気分にもなります。
カヴァは安い!!
で、この早飲みタイプの普通のカヴァが全体の9割程度のシェアとWSETの教科書には書いてあります。このタイプ、安いんです。今はわかりませんが、ピンクの看板の安売りの酒屋さんで、750mLボトル一本500円で売られてたりしました。ダイエットに良いとかいう、おフランスのミネラルウォーターの方が高かったりします。コンビニやスーパーでもフレシネとかがボトル1500円で売られていたりします。
カヴァが安いのは日本だけじゃない!!
これは日本だけの話じゃありません。世界トップクラスでコスパを気にするドイツでもお安いカヴァは人気があったりするんです。カヴァの出荷先は、三分の一が国内市場、四割弱がEU域内、残りの三割程度がEU域外という形のようです。国外向けではドイツ、ベルギー、アメリカ、イギリスの順番のようです。
「安物」イメージになったのを払拭するためのプレミアム化路線
さて、この高コスパ状況、売上数量にはプラスですが、ブランドイメージとしては決してプラスではないですよね。「お手頃で爽やかな」イメージ以下の「安物」イメージになっている可能性があります。これについては、カヴァ生産者も気にしていて、瓶内二次発酵期間を長くしたり、オーガニック栽培認証のブドウを使うという形でプレミアムカヴァの生産を増やそうという動きが先に挙げた2024年の売り上げの背景にあるわけです。
二大メーカーで4分の3の市場シェアなのでこだわり型は少数派
それから、その上でワイナリー自らがすべての製造プロセスに関わっている(自社畑のブドウのみで自社生産のカヴァ)場合に‘100% Integral Producer’ (Elaborado Integral) という認証ラベルを使用することもできます。2024年には新たに2つのワイナリーがこの認証を取得して、合計17の生産者がこの認証を得ているということです。カヴァの生産では、二大メーカー(フレシネとコドルニウ)が全体の4分の3くらいを占めているので、こだわり型の生産量は伸びてきているようですがまだ少数派、ということのようです。
2024年の生産量はコロナ禍の2020年に匹敵する低水準
さて、ここまでご説明をして、2024年のカヴァ生産の話に戻りましょう。2024年の生産量は大きく落ち込みました。2億1800万本は、新型コロナの影響で生産量が大きく落ち込んだ2020年に匹敵する生産量となりました。この要因は欧州での大旱魃です。なかなかの落ち込みです。これが続くかどうかはお天道様次第ですが、ブドウの樹がやられてしまっているということだと、回復はなかなか難しいかもしれません。
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