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「花びら5枚の花はなぜ多い」編集後記 vol.1 掲載する科の選択

※ 1万字あります。
  この記事には、以下の初出が含まれます。
 「6数性の出現背景、中央遅出モデルで推定される3パターン」

∫1 はじめに


人気記事「花びら5枚の花はなぜ多い」の画像を強化しました。
(2025年7月15日付)

[ 見直し点 ]
 1. 画像を差し替えて、構造を判別しやすく(計10枚)
 2. 画像を追加して、説明を強化(計10枚)
 3. 数性の再検討(追加2科、区分変更2科)

お時間が許せば、下記リンクで改装版をお楽しみください。




数性を区分する際の苦労談を書き残しておきます。

本文は一般人向けの配慮をしていません。
裏話まで読みたい、研究者、愛好家の方向けです。
収録した画像は、どなたでも楽しめます。


∫2 目を概覧して掲載対象を決める


すべての科を掲載するのは、現実的でないです。
一般人の閲覧を念頭に、科を選抜して載せるのが適当でしょう。

全体像は、APG IIIに準拠すると、下記のようになります。※
まだ安定していない目や科がありますので、ざっくりです。

※1:ムラサキ目の新設は、APG IVです。
※2:ガマズミ科の新設は、APG IVです。

Omphalodes japonica(ヤマルリソウ) ムラサキ目 ムラサキ科
上位分類が決まってよかった。

[凡例]
 ◎ 数性リストに載せる+α
 ○ 数性で考えるのが難しい科として言及する
 ✕ 言及しない


上位分類なし
 ✕ アムボレラ目
 ○スイレン目 -スイレン科を例示
 ○アウストロバイレヤ目 -マツブサ科を例示
 ✕ センリョウ目 - センリョウ科の例示を棄却

モクレン類
 ✕ カネラ目
 ◎コショウ目 - ドクダミ科、ウマノスズクサ科を例示
 ◎クスノキ目 - クスノキ科、ロウバイ科を例示
 ◎モクレン目 - モクレン科、バンレイシ科を例示

単子葉類
 ✕ ショウブ目 - ショウブ科の例示を棄却
 ◎オモダカ目 - サトイモ科、オモダカ科を例示。トチカガミ科を棄却
 ✕ サクライソウ目 - サクライソウ科の例示を棄却
 ✕ タコノキ目 - タコノキ科の例示を棄却
 ◎ヤマノイモ目 - ヤマノイモ科を例示。タシロイモ科を棄却
 ◎ユリ目 - ユリ科、シュロソウ科を例示。
 ◎キジカクシ目 -キジカクシ科、アヤメ科、キンバイザサ科、
          ヒガンバナ科、ラン科、計5科を例示
 ✕ ヤシ目 - ヤシ科の例示を棄却 
 ◎イネ目 - パイナップル科を例示
 ◎ツユクサ目 - ツユクサ科、ミズアオイ科を例示
 ○ショウガ目 - ショウガ科、バショウ科を例示

真正双子葉類、コア真正双子葉類
 ✕ マツモ目 - マツモ科の例示を棄却 
 ◎キンポウゲ目 - キンポウゲ科、ケシ科、アケビ科、メギ科を例示 
 ○ヤマモガシ目 - ハス科、ヤマモガシ科を例示
 ✕ ヤマグルマ目 - ヤマグルマ科の例示を棄却
 ✕ ツゲ目 - ツゲ科の例示を棄却
 ✕ グンネラ目 - グンネラ科の例示を棄却
 ◎ユキノシタ目 - ユキノシタ科、ベンケイソウ科、マンサク科を例示
           ボタン科を棄却
 ✕ ビャクダン目 - ビャクダン科、旧ヤドリギ科の例示を棄却
 ◎ナデシコ目 - ナデシコ科、オシロイバナ科、イソマツ科、
          ジュズサンゴ科、タデ科、サボテン科、ハマミズナ科
          ハゼラン科、スベリヒユ科、ヒユ科、計10科を例示
          モウセンゴケ科、ヤマゴボウ科を棄却

バラ類、真正バラ類I、真正バラ類II
 ○ブドウ目 - ブドウ科を例示
 ✕ ハマビシ目 - ハマビシ科の例示を棄却
 ○ニシキギ目 - ニシキギ科を例示 
 ◎カタバミ目 - カタバミ科を例示
 ◎キントラノオ目 - キントラノオ科、オトギリソウ科、スミレ科、
            トケイソウ科、アマ科、オクナ科、計6科を例示
            トウダイグサ科、ヒルギ科の例示を棄却
 ○ウリ目 - ウリ科、シュウカイドウ科を例示
 ○マメ目 - マメ科を例示
 ○ブナ目 - ブナ科を例示
 ◎バラ目 - バラ科、クワ科、グミ科、クロウメモドキ科を例示
 ◎フウロソウ目 - フウロソウ科を例示
 ◎フトモモ目 - フトモモ科、ノボタン科、アカバナ科、
          ミソハギ科を例示
 ◎クロッソソマ目 - キブシ科を例示
 ◎アブラナ目 - アブラナ科、ノウゼンハレン科、パパイヤ科を例示
 ◎アオイ目 - アオイ科、ジンチョウゲ科を例示
 ○ムクロジ目 - センダン科、ミカン科を例示
          ムクロジ科、ウルシ科の例示を棄却

キク類、真正キク類I、真正キク類II
 ◎ミズキ目 - ミズキ科、アジサイ科を例示
 ◎ツツジ目 - ツツジ科、サクラソウ科、ツバキ科、カキノキ科、
         エゴノキ科、マタタビ科、計6科を例示
         ツリフネソウ科、サガリバナ科、モッコク科ほか、
         多数の科を棄却
 ◎ガリア目 - ガリア科を例示
 ◎リンドウ目 - キョウチクトウ科、リンドウ科、アカネ科を例示
          ゲルセミウム科を棄却
 ◎シソ目 - シソ科、キリ科、クマツヅラ科、ゴマノハグサ科、
        キツネノマゴ科、ハマウツボ科、ノウゼンカズラ科、
        オオバコ科、モクセイ科、イワタバコ科、計10科を例示
        多数の科を棄却
 ◎ナス目 - ナス科、ヒルガオ科、ハナシノブ科を例示
 ◎モチノキ目 - モチノキ科、ハナイカダ科を例示
 ◎キク目 - キク科、キキョウ科、ミツガシワ科を例示
 ◎マツムシソウ目 - マツムシソウ科、オミナエシ科、ガマズミ科、
            スイカズラ科を例示
 ◎セリ目 - セリ科、ウコギ科、トベラ科を例示
 ◎ムラサキ目 - ムラサキ科を例示


取り上げる基準は、市民における科の知名度と、花の愛されぶりです。
掲載基準は人為的ですが、裏では目ベースで考えています。


∫3 言及する科/しない科 各論目次

目次
[ 言及すると決めた科 ]
 1)セリ目 - トベラ科 (問題なし)
 2)ナデシコ目 - ヒユ科 (新規追加)
 3)キク目 - ミツガシワ科 (新規追加)
 4)ユキノシタ目 - ユキノシタ科 (区分移動)
 5)フトモモ目 - ノボタン科 (区分移動)

[ 言及しないと決めた科 ]
 6)ヤシ目 - ヤシ科 (確認不良)
 7)マツモ目 - マツモ科 (確認不良)
 8)キントラノオ目 - トウダイグサ科 (花弁欠損)
 9)センリョウ目 - センリョウ科 (花弁欠損)
 10)ムクロジ目 - ムクロジ科 (不定および不一致)
 11)その他、落選7科
  ・ツツジ目 - ツリフネソウ科
  ・ツツジ目 - サラセニア科
  ・ツツジ目 - サガリバナ科
  ・ユキノシタ目 - ボタン科
  ・リンドウ目 - ゲルセミウム科
  ・ヤマノイモ目 - タシロイモ科
  ・キントラノオ目 - ヒルギ科


∫4 言及すると決めた科

1)トベラ科|ほぼ5数性 ⇒ 問題なし

トベラ科は、APGで、バラ目からセリ目に移動しました。
どちらも5が出やすい系統で、数性の考察に影響があるわけではないです。
ただ、目レベルの移動があると、僕は心臓がバクバクしてしまうのでした。
鳥の愛好家たちが、「ハヤブサはインコの系統です」と言われて、
ドキドキしちゃうのと、たぶん一緒です。

Pittosporum tobira(トベラ) トベラ科
揺らぎは、たまに6が出る程度です。


2)ヒユ科|5数性 ⇒ 〇数性リストに新規追加

センニチコウ、ケイトウは、秋の花として市民に親しまれています。
イヌビユ、イノコズチなどの野草もあります。
地球最悪の侵略的外来種、ナガエツルノゲイトウもあります(怖)
ホウレンソウは、アカザ科の統合でヒユ科に編入されました。
ヒユ科は、できれば、リストに入れておいたほうがよい科です。

問題:写真判定が難しい
雄しべ5本、花被片5枚で、5数性ですが、いかんせん花が小さい。
旧ヒユ科だけでなく、旧アカザ科、アカザやコキアの花も極小です。
数えにくい種が含まれるのではなく、大半の種が数えにくい。

結論:悩んだ末、5数性でリストに追加
文献および手持ちの写真で確認する範囲では、5数性に見えます。
研究者から「確認してないの? じつはね」と突っ込みが入ったときは、
都度、実体顕微鏡下で分解して確認します。

Gomphrena globosa(センニチコウ) ヒユ科
マクロレンズでも構造が判別しがたい。
分解すると赤紫色の苞でカニのように1花を挟んでいることがわかるが、
他にも細かい構造物があって複雑。
花糸と花びらっぽい裂片が「対生」配置なので、「花冠」ではなく、「しべ冠」と思われる。
Chenopodium album(シロザ) ヒユ科
雄しべ5,花被片5。
花被片の5枚目が小さめで、4に見える蕾もある。
Bassia scoparia(コキア) ヒユ科
ぎりぎり、5つの花被片、5つの葯が見える。
Achyranthes bidentata(イノコズチ) ヒユ科
咲いていれば、雄しべ5,花被片5が判別できる。
Celosia argentea cv.(ケイトウ園芸種) ヒユ科
やっと、しべ冠が判別できる写真が撮れたと思ったら、数性乱れの花だった。
周辺の花を見ればわかる通り、通常、葯は5個。


3)ミツガシワ科|ほぼ5数性 ⇒ 〇数性リストに新規追加

昨今のビオトープ人気で、ミツガシワ科の知名度が上がってきました。
水生植物もリストに加えることにします。
ミツガシワ、アサザは5数性です。

問題:ガガブタは、最頻で6が出ることがある
ガガブタは通常5ですが、筑波実験植物園で観察した株は最頻6でした。
種の逸脱は許容する方針なので、見立てへの影響はありませんが・・・。

雌雄で花の特化が進んだ種は、雌雄で数性が異なることがよくあります。
「隊長の重役出勤で6が出やすくなる」という本編の仮説が本当なら、
雄花寄りの花で6が出やすい傾向は、雌しべの退化のせいかもしれません。

中央遅出で6が出やすくなるパターンは、3つ考えられます。
6数性の出現背景 -中央遅出モデル-] 瀬戸裕紀による
 パターン1 子房下位
       (例. ミソハギ科 ザクロ) 
       本編で例示。ただし、サルスベリは子房上位で6数性。
 パターン2 雄花(寄り)における子房の発達遅滞
       (例. ミツガシワ科 ガガブタ)
 パターン3 装飾花におけるしべの発達不全
       (例. キク科 ヤグルマギク)

Nymphoides indica(ガガブタ) ミツガシワ科  撮影地:筑波実験植物園
ビオトープ愛好家に、英名のWater Snowflakeで知られる。
観察した株は雄花寄りで最頻6だった。
パターン2を思わせる。
Menyanthes trifoliata(ミツガシワ) ミツガシワ科  撮影地:筑波実験植物園
ミツガシワは両性花。
通常5裂だが、画像の一番上の花は、よくみると6裂。
合弁花で、裂数や稜が揺らぐことはよくある。
アジサイ科 アジサイ属
属と種と株の中で数性が揺らぎ、6が出ることがある。

左: Hydrangea febrifuga cv. '碧の瞳'(ジョウザンアジサイ園芸種) 
子房半下位で、最頻6。
パターン1を思わせる。
右: Hydrangea macrophylla cv.(アジサイ園芸種) 写真は両性花
子房半下位で、最頻5。
アジサイ科 バイカウツギ属
属と種と株の中で数性が揺らぎ、6が出ることがある。

左:Philadelphus x lemoinei 'Belle Etoile'(バイカウツギ ベルエトワール) 
最頻4で、5が散発する。文献上は子房下位。
右:Philadelphus coronarius(セイヨウバイカウツギ)
最頻5で、6が散発する。文献上は子房下位。
パターン1を思わせるが、2点、考察が必要。

バイカツツジ属は、花が散ると、ガクより上側に盛り上がって果実を作る。
隊長「花が散ったら本気出す」
花後の経過は、原基が埋没せず、表層近くに位置にあることを示している。

子房モデルは、子房の原基細胞の「スタートダッシュ」が数性を左右するモデル。
原基の分裂速度が変動した場合、数性と子房の位置が一致するとは限らない。
初速が高いが失速して中位、出遅れるが速度を増して中位となるケースがありうる。
左:Centaurea cyanus(ヤグルマギク) キク科
右:Osteospermum cv.(オステオスペルマム園芸種) キク科
ヤグルマギクの装飾花はしべが発達せず、花冠の裂数はばらつき、6が出やすい。
パターン3を思わせる。
参考:オステオスペルマムの管状花は装飾的だが、しべがあり、裂数5が維持される。



4)ユキノシタ科|ほぼ5数性 ⇒ 5数性に移動

ユキノシタ科は当初、「属によって異なる」区分に分類していました。

問題:逸脱が2属ある
ユキノシタ科は逸脱属を抱えます。
ネコノメソウ属は4数性です。
ヤグルマソウ属は花弁欠落で、ガクの数が不安定です。

結論:悩んだのち、5数性に区分
時代はインクルージョン。基本数5で、5数性の区分にします。
アカネ科のように、科全体で数性が割れているわけではないです。

左: Saxifraga stolonifera(ユキノシタ)  右:Saxifraga × arendsii(セイヨウクモマグサ)
属の中に、左右対称花、放射対称花、両方が含まれる。
いずれも、雄しべ10本、花弁5枚、ガク5裂で、5数性。互生決め打ち。
Saxifraga × arendsii Chrysosplenium pilosum(コガネネコノメソウ) ユキノシタ科
雄しべ8本、ガク4枚で、4数性。
ボックス型の花に強いインパクトがあり、科全体を5で括ることに抵抗感を覚える。
Astilbe cv.(アスチルベの一種、植栽) ユキノシタ科
雄しべ10,花弁5,ガク5で、5数性だが、小花がぎっしり詰まっていて、数えにくい。
接写するか、高解像度のアンダーで撮って拡大しよう。

ヤグルマソウ属は小花タイプで、写真判定が難しい。
僕はヤグルマソウのヒストグラムを作っていない。
ローレンツは著書「攻撃」で、「生物学者は数える段になると、いきいきする」と笑っていたが、
それは手元で飼育・栽培・培養できたときの喜びと混ざっていないか。
ぎっしりタイプの小花は、栽培、採取、どちらかの利を得なければ数えられない。
noteの「ぜん」さんの写真は、標準撮影とマクロ撮影、両方の画像があって満足度が高い。
https://note.com/zen1302/n/nc2ac9f2d0f3a


5)ノボタン科|4または5 ⇒ 種によって異なるに移動

ノボタン科は当初、5数性に区分していました。
白状すると、シコンノボタンの印象が強く・・・。
シコンノボタン、花、あでやかですよね。
4数性の種は逸脱に留まるという見立てでした。

問題:想像以上に4数性の種が多かった
手持ちの写真を整理していると、4が出る出る。
しかも、雄しべは倍数で安定しています。
ざっと文献を見渡しても、やはり4を逸脱扱いにはできそうにないです。

結論:区分を「属または種によって異なる」に移動
区分を「属または種によって異なる」に変更しました。

ノボタン科は、熱帯・亜熱帯を中心に、5000種を超える大きな科です。
僕がノボタン科を把握しているとは、口が裂けてもいえない。
ざっくり4と5が出る、というレベルで許してください。

属や種によって数性が異なるケースは、計7科の掲載で整えました。
互生決め打ちで現れる振れです。
 ・キンポウゲ目 - メギ科
 ・ブドウ目 - ブドウ科
 ・リンドウ目 - アカネ科
 ・ニシキギ目 - ニシキギ科
 ・ムクロジ目 - ミカン科
 ・ツツジ目 - カキノキ科
 ・フトモモ目 - ノボタン科

5数性
左: Tibouchina urvilleana(シコンノボタン) 雄しべ10、花弁5
右:Medinilla magnifica(メディニラ・マグニフィカ) 雄しべ10、花弁5
Miconia calvescens(オオバノボタン)も5数性。
「花が大きくて、意識を持って行かれた・・・!!」
4数性
左: Centradenia inaequilateralis(セントラデニア・イナエクイラテラリス) 雄しべ8、花弁4
右: Medinilla Speciosa(メディニラ・スペキオサ) 雄しべ8、花弁4
Heterocentron elegans(メキシコノボタン)も4数性。

上下段右、メディニラ属の中で、4と5に割れており、属ごとの性質とはいえない。
ノボタン科 不詳種  撮影地:京都府立植物園
4数性。
学芸員殿が同定をspどまりにしている株。属立てすら悩む。
⇒Memecylon caeruleumと同定された模様(2025年付)。

日本自生のBredia hirsuta(ハシカンボク)、Osbeckia chinensis(ヒメノボタン)、
Melastoma tetramerum(ムニンノボタン)は4数性。
小花をつける種を含めると、4のほうが多いかもしれない。
ノボタン科の全容を掴むのは容易ではなさそう。


∫5 言及しないと決めた科

市民に親しまれている科であっても、記事で言及するとは限りません。

6)ヤシ科|3数性 ⇒ ×非掲載(確認不良)

ヤシ目の代表、ヤシ科を載せない方針には、異論がありそうです。
科の知名度は高く、種数も多いです。
入手できる文献や写真によれば、3数性で安定しているようです。
平行脈ですし、ふつうに考えれば3数性でしょう。

問題: 撮影が難しい
僕が花を確認できていないです。
位置が高すぎて接写できないケースばかり。
なぜそうなるかというと、ヤシ科は基本的に枝分かれをしないからです。

現地の人が、特殊な道具を使って、器用にヤシに登る動画を見ました。
ヤシ科を専門とする研究者は、現地の人に花を採取して貰っていそうです。
僕をおだてると木に・・・、いや、登りません。登れませんって。
ヤシの花の撮影は、接写レンズでなく、望遠レンズがよいかもしれません。

Veitchia merrillii(マニラヤシ) ヤシ科 ヤシ目  撮影地:グアム
ヤシ科の花は高い位置で咲くことが多く、判定に使う写真を撮るのが難しい。


7)マツモ科|3数性 ⇒ ×非掲載(確認不良)

水草は、水面を眺めた状態では、ほとんど情報が得られません。
水面からでは
  ・マツモ目 - マツモ科
  ・スイレン目 - ハゴロモモ科
  ・オモダカ目 - トチカガミ科
の識別すら、あやうい。
入手できる文献と写真によれば、マツモの花は3数性です。
花が咲いている株があれば観察できますが、咲きにくいそうです。

問題: 未確認
自分が撮影していない科を、文献情報だけで載せるのは気が進みません。
マツモ科は、確認不良のため、非掲載としました。
許してくだされ。>アクアリウム愛好家どの

推定 Cabomba caroliniana(フサジュンサイ、カボンバ) ハゴロモモ科
花が水面に出てくれば3数性と確認できそうだが、いつ咲くのか・・・。
Egeria najas(エゲリア・ナヤス) トチカガミ科 撮影地:筑波実験植物園
花が咲けば3数性と判明する。
撮影できて嬉しい。クリック大推奨 ←ぉぃ


8)トウダイグサ科|花弁を欠く種が大半 ⇒ ×非掲載

トウダイグサ科は、APGで一部を掃き出してなお、多数の種を抱えます。
これほど巨大な科を載せないのは、不自然に見えるかもしれません。

問題: 大半の種で花弁を欠く
花弁を欠く種が大半です。花弁のように色づいて見えるものは苞です。
シナアブラギリは立派な5弁花を咲かせますが、例外です。
トウダイグサ科は非掲載にします。

Euphorbia cyathophora(ショウジョウソウ) トウダイグサ科
雄しべは5本として、花弁もガクもない。朱色の部分は苞。
子房と腺体が目立ちまくる、子房上位というより子房脱出。
(クリックで拡大可能)
Euphorbia adenochlora(ノウルシ)
5人戦隊 5つの腺体に惑わされてはいけない。(クリックで拡大可能)
Euphorbia nutans(オオニシキソウ) トウダイグサ科
白く見えるものは、花弁ではなく、4つの腺体のケープで、付属体と呼ばれている。

腺体の数は、種によって異なる。
腺体の数が、数性の対象になるのかわからないが、
子房脱出と腺体がトウダイグサ科の花の構造を特徴づけているのは確か。


9)センリョウ科|花弁がない ⇒ ×非掲載

センリョウ科の花には、花弁とガクがありません。
唯一、頼りにできそうな、雄しべの数さえ不定という。
後述するモクレン同様、「最初に花芯ありき」を感じさせる花です。

Chloranthus japonicus(ヒトリシズカ) センリョウ科 センリョウ目
しべしかない。そのしべの本数も揺らぐ。


10)ムクロジ科|不定性+不一致 ⇒×非掲載

カエデ科がムクロジ科に統合されたことは、近年のトピックスの一つです。
旧カエデ科の知名度は十分です。
しかし、ムクロジ科は、どうにも数性がわかりにくい。

 ・カエデ属各種|花弁最頻5、ガク最頻5、雄しべ最頻8
 ・トチノキ属トチノキ|花弁4~5裂、ガク4~5、雄しべ5~9
 ・ムクロジ属ムクロジ|花弁4~5、ガク4~5、雄しべ8~10
 ・モクゲンジ属モクゲンジ|花弁4、ガク5、雄しべ8
 ・フウセンカズラ属フウセンカズラ|花弁4、ガク4、雄しべ8、+α

不定性と不一致のダブルパンチです。
「数性で考えるのが難しいグループ」に区分し、非掲載としました。

Acer palmatum(イロハモミジ) ムクロジ科
花弁とガクは最頻で5。しばしば合着で4になる花が混じる。
雄しべは最頻8で、観察の範囲で揺らぐ。
カエデ類は種類が多く、花は小さく、グループ全体を把握することは容易でない。
Aesculus sp.(トチノキの一種、アカバナトチノキか、セイヨウトチノキ) ムクロジ科
数えることはできる。数は安定していないけれども。
左右対称性あり。
Koelreuteria paniculata(モクゲンジ) ムクロジ科
強風で花序が落下していた。
ここは「カウント伯爵」になるしか。アーラー、ピーナツバター、サンドウィッチー!
数は安定、左右対称の不一致タイプ。
雌花寄り、雄花寄りの揺らぎがある。部品は揃っているものの、片方のしべが未発達で終わる。
上記画像で、雄しべが長く伸びているのが雄花。
花の接写画像については、廣野郁夫氏のサイトが秀逸。
https://kinomemocho.com/sanpo_mokugenji.html
Cardiospermum halicacabum(フウセンカズラ) ムクロジ科
雄しべ8、花弁4、ガク4。左右対称。
中央部に黄色く見える構造物を、どうカウントすべきか悩む。
花の構造については、廣野郁夫氏のサイトが秀逸。
部品だけは揃う、雌花寄り/雄花寄りタイプ。
https://kinomemocho.com/sanpo_fusenkazura2.html


11)その他の非記載

・ツリフネソウ科|不一致 ⇒ ×非掲載 
 ツリフネソウ科は、左右対称による変形が進行したタイプで、
 数性区分は「不一致」です。

 ツツジ目は、科ごとの個性が大きく、代表を立てる形でまとめにくい。
 ツツジ目の例示は計6種とし、ツリフネソウ科は落選としました。
 ツリフネソウ、アフリカホウセンカ、どちらも市民に人気があります。
 載せてあげられなくてごめんなさい。

Impatiens textorii(ツリフネソウ) ツリフネソウ科 ツツジ目
雄しべ5、花弁3、ガク3。
左右対称花。変形が進んでおり、部品の数は不一致。


・サラセニア科|5数性 ⇒ ×非掲載
 サラセニア科も、ツツジ目の枠で落選しました。
 熱心な愛好家がいる科を非言及にするのは苦しいです。
 「サラセニア科を出さんか!」などと苦情がきそうで怖い。

Sarracenia cv.(サラセニア栽培種) サラセニア科 ツツジ目
花をきちんと撮影できてなお、構造がわからない。
5数性はわかるとして、イシャ しべはどこだ?
栽培して分解しないと確認できないパターン。

食虫関連では、他に、ナデシコ目のウツボカズラ科(4数性)が落選しています。


・サガリバナ科|4数性 ⇒ ×非掲載
 サガリバナは、南の島や植物園で人気の高い花です。
 APGで、フトモモ目からツツジ目に移動したのですが・・・。
 しばらく保留にしておきたい気分です。
 この花が他人の空似だったとは。

左: Barringtonia racemosa(サガリバナ) サガリバナ科 ツツジ目
花弁4枚。雄しべ多数。
当園開花株。腰水を使い、落蕾を防ぐ。
夜咲きなので、照明をつけ、三脚を立てて撮影する。
右: Acca sellowiana(フェイジョア) フトモモ科 フトモモ目
花弁は最頻4枚。雄しべ多数。


・ ボタン科|不定性 ⇒ ×非掲載
 ボタン科は、APGでキンポウゲ目キンポウゲ科から分離独立し、
 ユキノシタ目ボタン科へ移動になりました。
 「キンポウゲ科から除外、まあそうだろうね。で、どの系統に?」
 「ユキノシタ目。花柱を考えるとそこしかないか。しかし数性が・・・」
 しばらく保留にします。
 アジサイ科は、独立してミズキ目に区分されるや、直ちに採用したので、
 独立直後、移動直後だからといって、非掲載にするわけではないです。
 ボタンは「花の王」と称えられるほど、市民に愛されているのに、
 掲載できなくてごめんなさい。

Paeonia lactiflora(シャクヤク) ボタン科
花弁の数は不定。雄しべ多数。雌しべ(花柱)は複数で数は不定。
Paeonia suffruticosa(ボタン) ボタン科
ガクは3~5枚と不定で、苞との分化が微妙。
構造的には、しべの尖塔を作らないモクレンといったところ。 


・ゲルセミウム科|5数性 ⇒ ×非掲載
 ゲルセミウム科が提案されたのは1994年。知名度が著しく低いです。
 日本で見かけるのは、カロライナジャスミンだけでしょう。
 都内では、壁面緑化の素材として人気があるのですが、落選です。

Gelsemium sempervirens(カロライナジャスミン) ゲルセミウム科 リンドウ目
雄しべ5本、花冠5裂、ガク5裂で、5数性。
柱頭は4裂。


・タシロイモ科|たぶん3数性 ⇒ ×非掲載
 
首都圏の植物園で、タッカ・シャントリエリが人気です。
 想像するに、ゴシック・ロリータのイメージかと。
 開花のニュースが流れてきたら、温室で愛でてあげてください。

Tacca chantrieri(タッカ・シャントリエリ、クロバナタシロイモ) タシロイモ科 ヤマノイモ目
新宿御苑、神代植物園、筑波実験植物園の温室にいます。
国内自生? ないない。


・ヒルギ科|数えられるが不定 ⇒ ×非掲載
 
オヒルギのガクと花冠は、8~12で不定です。
 「花びら5枚の花はなぜ多い」は、数性を考察することが本題なので、
 不定性の種の掲載は、最小限にします。

Bruguiera gymnorrhiza(オヒルギ) ヒルギ科 キントラノオ目
いわゆるマングローブ植物。
海辺の環境を構築する必要があり、本種を展示できる植物園は限られる。
この株は、京都府立植物園。
さすが京都。いけずなだけではなかった。

学会会場が京都でラッキー。
事務局になったことがないので、事情を知らないが、地方と都市で交互に開催しているような?
温泉好きのDr.Tは、地方開催の温泉チェックに余念がない。


研究者や愛好家には、何かしら「推し」の植物があるものです。
今回、推しの植物が掲載の対象にならなかった方には申し訳ないです。

書けなかった重要な考察がいくつかあるので、後記をシリーズ化します。
次号は気長にお待ちください。

写真・文 瀬戸 裕紀


「花びら5枚の花はなぜ多い」 シリーズ目次
  本編 「花びら5枚の花はなぜ多い」
  編集後記  vol.1 掲載する科の選択
  編集後記  vol.2 雄しべの不定性を考える 
  編集後記  vol.3 花弁の不定性を考える(掲載未定)
  編集後記  vol.4 不一致を考える(掲載未定)
  編集後記  vol.5 タワーマンションの余地問題(掲載未定) 
  編集後記  vol.6 謎は続くよ、どこまでも(掲載未定)