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【 その手は、ちゃんと覚えていた 】――折り紙教室で生まれた小さな誇り──【 認知症 / 介護 / 家族 / エッセイ / 4コマ漫画 / AIイラスト / 画像生成AI / 創作日記 】

人には、長い時間をかけて身につけてきたものがあります。
普段は見えなくても、ふとしたきっかけで、その力が静かに輝くことがあります。
これは、折り紙教室で生まれた小さな出来事です。

4コマまんが 介護編#142


「先生」は、いつの間にか交代していた。折り紙教室で生まれた、やさしい時間

「今日は私が先生です! 鶴を折りましょう!」

施設内で始まった、折り紙のレクリエーション。
明るく元気な若い職員が手を上げると、テーブルを囲んだ利用者さんたちも、楽しそうに色紙を手に取ります。

今日の先生は職員。
折るものは、昔から親しまれてきた折り鶴です。

ところが、張り切って折り始めた職員の手が、途中でピタリと止まります。

「……あれ? 次、どうするんだっけ?」

折りかけの紙を見つめ、困った表情を浮かべる職員。
先ほどまでの勢いは、どこへやら。

すると、その様子を見ていた女性の利用者さんが、そっと手を伸ばしました。

「貸してごらん」

利用者さんの手に渡った折り紙は、迷うことなく形を変えていきます。
角を合わせ、折り目をつけ、紙を返す。

その手つきは、驚くほど滑らかです。

職員は隣で、目を輝かせながら見つめています。
そして、きれいな鶴が完成した瞬間、笑顔でひと言。

「今日から先生は交代です!」

そう言われた利用者さんは、少しうつむきながら、

「うふふ」

と、照れくさそうに笑いました。


教える人と、教わる人

介護施設では、職員が利用者さんを支えたり、何かを教えたりする場面が多くあります。

けれど、本当はいつも一方通行ではありません。

利用者さん一人ひとりには、長い人生の中で身につけてきた知識や技術があります。
料理、裁縫、園芸、昔の遊び、季節の行事。

そして今回のような、折り紙。

普段は職員に手伝ってもらうことが多い人も、得意なことを前にすれば、たちまち頼もしい先生になります。

誰かに教えられる。
誰かに頼られる。
「すごいですね」と喜んでもらえる。

それは、人の表情をふっと明るくしてくれる、大切な時間なのだと思います。


「できない」が生んだ、やさしい交流

もし職員が完璧に鶴を折っていたら、予定どおりの折り紙教室で終わっていたかもしれません。

けれど、職員が途中で分からなくなったからこそ、利用者さんの出番が生まれました。

職員の小さな失敗が、利用者さんの得意なことを引き出したのです。

支える側が、時には素直に教えてもらう。

そんな関係があることで、施設で過ごす時間は、もっと温かく、もっと対等なものになっていくのではないでしょうか。

「先生」と「生徒」は、年齢や立場だけで決まるものではありません。

そのとき、その場所で、得意な人が先生になる。

今日の先生は若い職員。
でも、少し後には利用者さん。

完成した一羽の鶴と、照れくさそうな「うふふ」。

そこには、教える喜び、頼られるうれしさ、そして人と人が笑顔でつながる瞬間が詰まっています。

小さな折り紙から生まれた、小さな先生交代。

それはきっと、施設の日常に舞い降りた、やさしくて温かな一羽の鶴だったのでしょう。


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