肥満論:肥満の内と外──パイの量
そもそも「肥満」しているとは、単に体重が重いということではなく、体脂肪が標準以上に体に付いていることである。
脂肪細胞は、過剰エネルギーの“貯蔵庫”という役割を果たし、従って脂肪細胞が肥大化すれば体型に影響し“太目”になるので、太っていることを気にする人々は、何とか体脂肪を減らそうと、減量に躍起になるようだ。
しかし、脂肪細胞は単に過剰エネルギーの“貯蔵庫”であるだけでなく、いろいろな生理活性物質──総称してアディポサイトカインと呼ぶ──を分泌する“内分泌細胞”としての大切な役割を果たしていることは一般的にはあまり認識されていない。
周知のように、体脂肪には、皮下脂肪と内臓脂肪があるが、特に内臓脂肪が過多だと、成人病等の疾病を引き起こすので、健康のためには内臓脂肪を減らさなければならないということは一般的にはよく言われることだ。
皮下脂肪からも多少は出ているが、内臓脂肪からは次のような物質が大量に出て健康を害しているそうだ。(補注1:但し別項において、脂肪吸引について述べるが、その際、適度な量の脂肪組織からは、同じ物質であっても、免疫系などに有益な働きをすることについて指摘する予定。)
・PAI(パイ)-1→血栓
・TNF-α→糖尿病
・アンジオンシノーゲン→高血圧
他に内臓脂肪が神経を圧迫して腰痛や脚の麻痺を引き起こすということも判っており、内臓脂肪は健康によくない。
(補注2:但し、内臓脂肪が全面的に悪者ではあるわけではないことは言っておきたい。内臓脂肪から分泌されているアディポネクチンというホルモンはあくまでもそれが適量であれば、成人病を防いで健康維持に役立っていることが最近、分かって来ている。)
なお、女性は皮下脂肪が付きやすい(赤ん坊を産み、抱いて保護するためには乳房や腹部がプチプチ気泡緩衝材のように脂肪が付き豊満になるのは当然のヒトの進化)。対して、男性は内臓脂肪が付きやすい傾向にある。前者は外見で判り易いのだが、後者は判りにくく、よく‘隠れ肥満’と言われている。
NHKテレビ『ためしてガッテン』で、1) 皮下脂肪型肥満の人と 2)内臓脂肪型肥満の人を探したところ案の定、前者は女性(153cm、90kg)で後者は男性であった。やはりその女性は明かに外見上も太鼓腹で肥満が判るのに対して、男性は体格ががっちりしているものの、外見上は肥満しているようには見えなかった。
番組で調べたところ次のような数値が測定された──
・PAI(パイ)-1 の量(標準値:50ng/ml)
1) 20ng/ml
2) 186ng/ml
すなわち測定の結果は、1) 皮下脂肪が多いその女性の場合、血栓を引き起こすPAI(パイ)-1の量は標準より少なかったのに対して、2) 内臓脂肪が多い男性の場合は非常に多量であることが判明したのである。
ところが…
・レプチンの量
1) 28.4ng/ml(女性の標準値:7.9ng/ml)
2) 9.5ng/ml(男性の標準値:3.1ng/ml)
両者とも標準値を超えて高いのだが、特に1) の女性の方が目立っている。レプチンはいわば身体が出す‘食欲抑制ホルモン’なので、多ければ多い程痩せている筈なのに、彼女は大分肥満していた。これは一体どういう理由なのだろうか?
(つづく)
⇒肥満論:序文
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