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肥満論:スローフードとしての粗食

スローフード」運動が注目されて久しい。「スローフード」という言葉は、マクドナルドのような「ファストフード」に対比された言葉で、この運動は、イタリアのローマに、まさにマクドナルド1号店が出来た折、1986年に北イタリアのブラという小さな村に「スローフード」協会が発足したことから始まったのだそうだ。(注1)

「質のよい食べ物を守り、そして違う人間同士が顔をつきあわせて食事をし、大いに語り合う」という当たり前のことが、スローフード運動の核(注2)だそうだ。まさに「共愉」である。(注3)

スローフード運動が具体的に推進していることは──

1) 消えつつある郷土料理や質の高い食品を守ること。
2) 質の高い素材を提供してくれる小生産者を守っていくこと。
3) 子供たちを含めた消費者全体に、味の教育を進めていくこと。
(注4)

ところで、この10年間、日本全国の小学校で、5.6年生の食事内容を調べた結果は惨憺たるものであった。朝食に「おにぎりとクリームパン」「ドーナツだけ」「ケーキだけ」とか、夕食は「カップ麺だけ」「チョコバーだけ」と答える子供たちが少なくなく、食事に問題があると思われる例が、全体の46%にのぼったそうだ。

'飽食'の時代にあって、子供たちばかりか人々の食生活は総じて相当に破綻しており、拒食症や過食症などの摂食障害もますます深刻な問題になっている。(注5)

拒食症であった20歳そこそこの息子さんに先立たれてしまった鈴木その子氏は、‘ダイエットは食べないことだ’という勘違いした当時の風潮を憂い、『やせたい人は食べなさい』(注6)という当時としては常識破りの挑発的なタイトルをつけた本を世に出したが、彼女が提唱していたのは、要するに、油の使用を極力抑えるという方法  (注7)を加味した上での伝統的な和食の勧めであった。

日常の伝統的な和食は、「粗食」として、それぞれの地元の特産の季節ごとの旬の、従って食品添加物など含まない食材を中心にじっくりと味わう食事様式であり、イタリアから声が上がった「スローフード」と、理念においても実践においても、合い通じるものがあり、飽食の時代にあって食の歪みを正す切り札として、近年とみに注目されて来た。(注8)

この「粗食」を推奨する幕内秀夫氏が説く「粗食七箇条」は次の通り。

ご飯(分づき米・胚芽米・玄米など)をきちんと食べる。
発酵食品(みそ汁やぬか漬けなど)を常食する。
・カタカナ主食(パン・ラーメンなど)は常食しない。
・副食は季節の野菜を中心にする。
・動物性食品は魚介類を中心にする。
・砂糖・油脂類のとりすぎに注意する。
・神経質にならない程度に食品の安全性にも配慮する。

幕内氏が『粗食のすすめ』で示している指針は、つまりこうだ

まず「とにかくご飯(米)をしっかり食べること。それが基本」。

何故か。「まず副食が整う。魚を食べるとき、ご飯なら、刺し身、焼き魚、煮魚などが思い浮かぶ。だがパンで魚を食べようとしたら、フライやムニエル、マリネといったところになるだろう。ご飯だと油を使わない料理が幾つも選べるのに、パンは油抜きは難しい。」

「また、ご飯はひらがな食が合い、パンにはカタカナ食が合う。刺し身や焼き魚などひらがなで書ける料理は脂肪が少なく、フライやムニエルなどカタカナの方は脂肪が多い。麺類でも、うどんやそばなら脂肪は少ないが、スパゲティやラーメンは脂っこい。食はひらがなを選んだ方が無難なのだ。」

「食パンを買ってきて、成分表示を見てみよう。小麦粉のほかに、食塩、砂糖、脂肪がたいてい含まれている。一方ご飯は、米を水で炊くだけ。全く無添加だ。」

「従って、ご飯を食べないダイエットは問題が多い。エネルギーが不足し、その分、甘い物や脂っこい物が欲しくなる悪循環を生む。」 
(注9)

だから、粗食をゆっくりと一口30回以上噛んで味わって食べ(注10)食卓を囲み共愉(注11)する、「粗食30回咀嚼嚥下共愉そしゃくえんげきょうゆ」がおすすめなのです!

(注1)
Wiki:スローフード
(注2)
日本スローフード協会
(注3)
共愉」的と訳されている「『コンヴィヴィアル(convivial)』という言葉は、例えば、気心が知れた仲間同士が、和気あいあいと共に円卓を囲み飲み食いして宴(うたげ)を愉しんでいる様子を示すような意味合いの日常語」⇒共愉──クィアの難問を解く生き方
(注4)
ニッポン東京スローフード宣言!
(注5)
⇒別腹の罠──過食症
⇒食べ放題論
(注6)
鈴木その子『やせたい人は食べなさい』(祥伝社)
(注7)
なお、太らないためには脂質を摂取しない程良いと短絡した食事法では、むしろ栄養バランスが崩れて、かえって太る体質になってしまうので注意しよう。欠乏した‘油’を求めて、スナック菓子などに手が伸びてしまうのが落ちだからだ。必須栄養素の摂取割合は、炭水化物6:たんぱく質2:脂質2がバランスが良いと一般に言われている。

炭水化物の割合を低めにして、たんぱく質や脂質を多めに摂る「4・3・3」の割合が良いと提唱する立場もある。
バリー・シアーズ『食事革命 4・3・3ダイエット―肥満解消、病気予防、そして長寿をもたらす食事法』

このような栄養バランスを考えた食事様式を“ゾーン・ダイエット”と敢えて呼んで取り上げているようだ。
(注8)
粗食の復権──飽食の歪みをただす切り札」『AERA』1999.11.29号、53-56頁。

健康のために伝統的な和食を勧める本として、すでに評判が定着している次のものを挙げることができる。
幕内秀夫『粗食のすすめ──「本物の健康」は「正しい食事」からつくられる』東洋経済新報社
幕内秀夫『粗食のすすめレシピ編』東洋経済新報社
幕内秀夫『粗食のすすめ実践マニュアル: もったいないこそ、最高の知恵 ムダなく食べる、まるごと食べる』東洋経済新聞社
島田彰夫『伝統食の復権──栄養素信仰の呪縛を解く』東洋経済新報社
帯津 良一『なぜ粗食が体にいいのか: 「食生活」ここだけは変えなさい!』三笠書房
最初は「この5つ」だけでもいい!
(1)1日最低2回は「ご飯」をきちんと食べる
(2)「ジュース・牛乳」をやめて「番茶」にする
(3)たまには「五分づき米」を食べてみる
(4)菓子・酒・果物は「食べる順番」に注意する
(5)「野菜・魚は安いものを買う」と考える
(注9)
前掲『AERA』56-57頁。
(注10)
肥満論:お米主食ダイエットのすすめ
(注11)
共愉──クィアの難問を解く生き方

肥満論:序文
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