朝倉慶:円安インフレ物価高〜今は減税より賃上げ政策だ!!
朝倉慶:円安インフレ物価高〜今は減税より賃上げ政策だ!!
2026年7月3日配信の朝倉慶氏による動画「減税より賃上げ!デフレは終わって政策を変えろ」の内容を詳解する。
1. 株式相場の現状と足元の「半導体ショック」
激しい市場の地合いとセクターローテーション [00:07]
足元の相場は非常に派手な動きを見せている。これまで大人気だった半導体銘柄やAI関連銘柄(キオクシア、太陽誘電、村田製作所、東京エレクトロン、アドバンテストなど)が急激な下げに見舞われている。しかしその反面、他セクターへの資金流入(ローテーション)が起きており、市場の約8割の銘柄は上昇している。ニューヨークダウやドイツのDAXが最高値を更新していることからも、相場全体の基調そのものが崩れたわけではない。
急落のきっかけと受給の悪化 [01:40]
半導体株急落の背景には、「Appleが中国からの半導体調達を検討している」という直近のニュースや、同社が製品を2〜3割値上げするとの発表がある。ただし、本質的には「短期的な上がりすぎ(キオクシアは公募から一時期70倍にまで達した)」に対する急激なスピード調整である。人気株が短期間にここまで下がると、信用取引の追加保証金(追い証)が発生し、資金力のない個人投資家が強制的に振り落とされるという相場特有の厳しい受給の波乱が起きる。しかし、各企業の収益構造そのものは依然として好調を維持している。
2. 為替と金利の動向
止まらない円安の底流 [05:55]
政府による突発的な為替介入への警戒感や、米国雇用統計が市場予想(11万人)を下回る5.7万人であったことから一瞬円高に振れる場面もあったが、結局は円安方向への地合いが続いている。「株高・円安・金利高(日本の長期金利も2.8%まで上昇)」という基本トレンドは普遍であり、この流れが根本から止まることは考えにくい。
3. インフレの本格化を示す経済指標(日銀短観・路線価)
驚異的な日銀短観の結果 [07:34]
最新の日銀短観は驚くべき好結果を示した。大企業・製造業の業況判断DIは「+22」(市場予想+16)と8年ぶりの高水準を記録。非製造業にいたっては「+37」と過去最高水準である。調査期間がイラン情勢を巡る地政学的リスクの緊迫期であったにもかかわらず、AI・半導体関連を筆頭に日本経済の底強さが証明された。さらに、設備投資計画は「+11.5%」と極めて旺盛であり、販売価格DIも過去最高水準に達している。これは企業が「どんどん投資をし、どんどん値上げをできる」状態にあることを意味し、日本経済がデフレから完全に脱却しインフレ経済へ移行した動かぬ証拠である。
資産価格の高騰とインフレの特徴 [09:33]
東京都内の路線価は9.4%上昇(全国平均は2.9%上昇)し、東京の新築マンション平均価格は1億3784万円(前年比18.5%増)と高騰している。インフレ経済下では、供給が制限され需要がある特定の「勝者(東京、大阪、地方の主要都市)」に資金が集中するため、想定を上回るスピードで価格が跳ね上がる。明確な「勝ち組と負け組」の格差が生じるのがインフレ期の特徴である。
4. 1980年代バブル期との決定的な違い
「円安」が生活を直撃する恐怖 [11:43]
株高、不動産高、旺盛な設備投資といった現在の状況は、1980年代後半のバブル期を想起させる。しかし、当時と今では決定的に違う点が1つある。それは「為替」である。1980年代後半は猛烈な「円高(1ドル240円から120円へ)」が進んだため、輸入物価が上がらず国民の生活が圧迫されることはなかった。対して現在は「円安」が進行しているため、輸入物価、人件費、物流費、あらゆるコストが上昇し、生活を直撃する。株を持たざる一般国民に対して、インフレという名の「株高の請求書」が届く時代なのである。
5. 政策提言:減税よりも「2桁の賃上げ」と「規制緩和」
最低賃金目標の後ろ倒しに対する強い批判 [14:42]
政府が骨太の方針において、最低賃金1500円の達成期限を後ろ倒し(2030年代前半へ交代)したことは「あり得ない失策」であると断じる。国の税収は84.2兆円と過去最高を更新しており、法人税収は21.1%増、所得税収は19.3%増と国や企業には莫大なインフレの恩恵(インフレ税の徴収)が入っている。それに対して消費税収は4%しか増えておらず、一般生活者への格差が広がっている。それにもかかわらず、政府や連合(労働組合)が「年7%超の引き上げは非現実的」「賃上げ目標5%」などとデフレ時代の感覚のままためらっているのは致命的である。物価高から生活を防衛するためには、5%程度ではなく「2桁(10%以上)の賃上げ」を企業に迫るべきである。最低賃金の引き上げは単なる福祉政策ではなく、企業に生産性向上を促すための構造改革である。
消費税減税の無意味さと、本当に必要な「身を切る改革」 [17:34] [22:40]
巷で叫ばれる消費税減税や現金給付などの「需要を増やす政策」は、デフレ期の発想であり、インフレ下ではさらなる物価高を招くだけで意味をなさない。また、現在の政府方針は財政支出や補助金といった「お金を配る話」ばかりで、痛みを伴う「規制緩和(構造改革)」が抜け落ちている。本当に必要な改革とは、一銭の国費も使わずに供給力を高める以下のような施策である。
ライドシェアの完全解禁(タクシー業界の既得権益打破)
農業への企業参入の自由化(高齢化する農業の効率化)
雇用規制の緩和(労働流動性を高め、人手不足の成長産業へ人をシフトさせる)
東証が推進した「PBR1倍割れ是正改革」が、国費を1円も使わずに経営者の意識を変え株高を導いたように、政府が成すべきは資金のバラマキではなく制度の撤廃と民間が自由に投資できる環境整備である。お札を刷って通貨価値を減価させるリフレ政策は即刻やめ、インフレ経済に適合した政策へと舵を切らねばならない。

