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⑯ 母親の認知症(似ている母娘)

▶︎最初から読む:姫路への道のり-①母親の認知症
▶︎前回のお話:⑮母親の認知症(姉妹の仲が拗れた原因の一端)

ふと思い出した。

「ああ、母と姉は本当によく似ているなぁ」と思った。

これは、母の認知症が発覚するよりも前の話。

当時、姉からペットゲートのお下がりをもらったので、リビングからキッチンへと続く場所に設置することにした。

愛犬が立ち上がるとキッチンのシンクの中まで手が届いてしまうため、中に入ってイタズラをするのを防ぐための安全対策だった。
そのゲートは小型犬用のもの。人間の高さでいうと、だいたい膝くらいまでの、またげるほど背の低いゲートだ。

ある日のこと、母がキッチンの奥にある洗濯機置き場へ行こうとした。

しかし、その低いゲートをまたぐ際、思ったように足が上がらなかったらしく、つまずいて引っかかってしまった。

その瞬間、母は突如として激怒した。
「邪魔だがね! なんでこんなところに置いてあるんだ!」

私は冷静に説明した。
愛犬がキッチンに入ってイタズラをしないための対策なんだ、と。
「ただ、またぐだけでしょ?」 
そう返した私に、母はさらに激昂し、思わぬ言葉を口にした。

「あんたが私くらいの歳になったら、同じことをやってやるから!」

当時60代の母にしてみれば、「足を上げるのがどれだけ大変か分かっているのか」と言いたかったのだと思う。

それにしても、その返しには驚いた。
「同じ歳になったら」って…
母は特にこれといった病気持ちというわけでもないのに、ここ何年も前から、度々「私はもう、あと5年くらいしか生きられない」と言い続けていたのだ。

(あと何十年も生きる気満々じゃないか。この人は……)

あまりの矛盾と、予想もつかない斜め上の言い返しに、私はただただ呆気にとられるしかなかった。

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