⑪ 母親の認知症(家を出る日)
▶︎最初から読む:姫路への道のり-①母親の認知症
▶︎前回のお話:⑩母親の認知症(姉夫婦の海外赴任と、母に告げた日)
家を出るにあたって最大の懸念事項は、愛犬の事。
今までは、日中は庭で、私が在宅の時は、室内と庭を自由に行ききしていたけど、これからは室内で長時間1人でのお留守番が待っている。
だから家を出ると決めてから、愛犬のためにプロのドッグトレーナーを頼んだ。
完全な「外トイレ派」でセキュリティードックの愛犬が、隣近所に迷惑がかからないように、愛犬が少しでも困らないようにするためだ。
それと同時に引越し準備も進めて行った。
新居の鍵の受け渡しを早めに設定し、毎日会社の帰りに荷物を運んだ。
新居は、実家から車で2時間ほど。仕事終わりの荷物運びに加え、家では朝早くから母の暴言が始まり、会社から戻るとまた始まる。家の中で顔を合わせると「泥棒しに来たのか」と疑われる。そんな毎日に、フラフラだった。
そんな私を見かねて、友達夫婦が引っ越しの荷物運びを手伝ってくれた。その優しさには、本当に救われた。
実家を出る数日前、母があたふたと「財布がない!」と騒ぐ。母と一緒に探していると、母がぽつりと言った。
「出て行かないでくれ」
私は静かに「お母さんが出て行けって言ったんでしょ」と返す。
すると母は、「あんたが泥棒するからでしょう」と言う。最後まで言葉は交わらなかった。
そして、引っ越し当日。
出発の直前、私は実家の鍵を母に返した。
鍵を受け取りながら、母は言った。
「自分の家なんだから、いつだって帰ってきたっていいんだから」
もう何も感じない位、
「ここはお前の家じゃない。早く出て行け。」と散々言われてきた。それなのに…
この時に母が口にした言葉こそが、本音だったのではないかと思った。
車が苦手な愛犬は、自ら進んで車に乗ってくれた。
これから始まる二人きりの新しい生活が、この子にはちゃんと分かっているのだと思えた。
そして、私たちは家を出た。
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⑫母親の認知症(離れても終わらない母の罵り)
