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「日本の左翼事典」を作ろう

日本の「オールドメディア」は、左翼偏向を改めれば再生できる、と少し前に書きましたが、それはテレビ・新聞だけでなく、出版も同様です。


戦後の出版界は、戦前・戦中の「右翼」出版物の焚書から始まり、基本的にリベラル左翼出版物により繁栄しました。

岩波文庫や岩波新書が、その代表と言えるでしょう。私の子供の頃までは、どんな田舎の本屋にも岩波文庫の「資本論」がありましたし、新書の代表は岩波新書でした。

70年代以降は、より多様化していき、保守系の出版物も一定の地位を占めるようになりましたが、メインストリームの新聞が書評で取り上げるのは、今も「岩波文化」系です。


つまり戦後出版界は、大きく言えば、「戦前の否定」の上に成り立っていました。

こういう歴史の断層は、やはり敗戦国に特有なのでしょう。

私は、その否定された部分に、これからの教養の隠れた宝庫があると思います。

出版界の編集者も、多くは戦後の出版物しか知らないので、左翼的教養のいわば自家中毒になり、似たような「リベさよ」企画しか生み出せていません。

ですが、戦前の日本の出版との連続性を取り戻すことで、現在の読者にも新鮮な企画を生み出すことができると思っています。


その「戦前との連続性を取り戻す」企画の手始めとして、「日本の左翼事典」を企画すればどうでしょう。


私は1990年にアメリカで出版された「アメリカ左翼事典」を重宝して使っています。



たとえば、アメリカ共産党時代の片山潜とか、日本人左翼についても記述があり、勉強になります。

金子喜一のような、日本であまり知られず、アメリカで活躍した左翼のことも、この事典で知りました。

*金子は1907年にアメリカで「社会主義女性 The Socialist Women」という最初のフェミニズム雑誌の一つを創刊。


私が持っているのは第一版ですが、現在は第二版(改訂版)が出ています。

この事典は、もちろん公平で客観的な歴史家の視点で編集されており、編者代表のマリ・ジョー・ビュリーは、とくに労働運動史の専門歴史家です。


現在の第二版のアマゾンでの紹介文は、以下のようになっています。


アメリカの左翼は、共産主義者や社会主義者だけから成り立っているのではない。1990年に出版された初版を3人の学術歴史家が編集したこの優れた改訂版が示すように、本書には政治、社会、芸術の運動が豊かに織り交ぜられている。学者、芸術家、活動家によって執筆された650項目は、個人、団体、出版物にとどまらず、フォークミュージック、障害者権利運動、労働運動、ラジオ、心理学、SF・ファンタジーなど、多様な分野にまで踏み込んでいる。第2版で新たに追加された項目には、「ACT-UP」「ジャズ」「レナード・ペルティエ」「復興」「ヤング・ローズ・パーティー」などがあり、時事問題や社会・文化的な話題を網羅している。各項目は1段落から数ページにわたり、それぞれ簡潔な参考文献と相互参照で締めくくられている。新版では、別々に存在していた人名・主題索引を1つの索引に統合するなど、構成上の小さな変更もいくつか行われている。また、本書に頻繁に登場する用語の用語集、簡潔な書誌解説、そして項目の概要も収録されています。初版(LJ 1990年6月15日)を所蔵するすべての図書館は、第2版を必ず所蔵してください。大規模な大学図書館や公共図書館にお勧めします。Stephen L. Hupp、オハイオ州アーバナ大学図書館
Copyright 1999 Reed Business Information, Inc.


同じようなものを、日本のどっかの出版社が企画してくれないでしょうか。

左翼思想の受容の仕方は、国によって違うので、他国のを翻訳してもあまり意味がなく、自前で作るしかありません。

日本の出版界は、今こそ、「日本の左翼」を、客観的に、総合的に、その功罪両面を公平に評価しながら、振り返るべき時だと思うんです。


さっき、ちょっと考えたんですが、日本の左翼は、だいたい以下の5期くらいに分けて考えればどうかと思います。


第1期 左翼思想の輸入と最初の過激化

1897年(明治30年)〜1910年(明治43年)
(1887年「国民の友」が初めて社会主義を紹介、1896年足尾銅山事件)〜日本最初の労働組合結成(片山潜)〜大逆事件(幸徳秋水)


第2期 ロシア革命と世界大戦・非合法左翼の時代

1917年(大正6年)〜1933(昭和8)
ロシア革命(1917)〜東大新人会(1918)〜虎ノ門事件・大杉栄虐殺(1923)〜佐野・鍋山転向声明(1933)


第3期 戦後共産党の合法化と分裂

1945年(昭和20年)〜1955年(昭和30年)
敗戦・共産党合法化〜東宝争議等〜赤狩り〜六全協


第4期 新左翼の時代

1960(昭和35年)〜1975年(昭和50年)
60年安保〜ベトナム反戦運動〜成田闘争〜1968・9年の世界的学生反乱・全共闘〜ベトナム戦争終結


第5期 文化左翼・大学とマスコミの左傾化(冷戦後の左翼)

1983(昭和58年)〜現在
『構造と力』ニューアカブーム(1983年)〜冷戦終結・土井社会党の躍進(1989年)〜朝日新聞等の従軍慰安婦報道〜「派遣村」〜シールズ〜安倍晋三暗殺(2022年)



これだけの範囲を扱うとすれば、それなりの数の歴史家や思想史家、社会学者や思想家が必要だと思いますが。

竹内洋さんや、河野有理さんとかには、編集委員に入ってほしい。

「日本左翼と天皇制」みたいな大項目から、「日本左翼とポップミュージック」みたいな項目まで(栗原裕一郎さんか、「みの」さんに書いてほしい)、いろいろ読みたいじゃないですか。


どっかが、誰かが、企画してくれないかなあ。



<参考>


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