「中国人差別」は、アリかナシか
埼玉県三郷市の「中国人による小学生ひき逃げ事件(5月14日発生)」や、中国人の無謀な富士登山などに関連し、ネットに「中国人差別」の文言が氾濫しているらしい。
それに関し、YouTubeチャンネル「中国まる見え情報局」が今朝、緊急に動画を発表した。
動画に中国人差別のコメントが殺到…日本の現実とは?(中国まる見え情報局 2025/5/17)
「中国まる見え情報局」は、中国人が日本人向けに、日本語で中国事情を発信している人気チャンネルだ。プロバガンダではなく、普段は中国のリアルな情報を提供している。
今朝の番組で、ホストの朱さんはまず、
「日本人を含めアジア人は、欧米ほど人種差別に敏感ではない」
と、日本人が国籍による人種差別をしがちな点に、警鐘を鳴らした。
これは「リベラル」のお説教か、と思ったが、そうではなく、朱さんは続けて、
「それは(リベラリズムの)教育不足だとよく言われるが、私はそう思わない」
と言う。
朱さんは、どんな国であれ、ある程度の大きさを持つ国では、いろんな人がいる。まして中国のような国は、実に多様な人がいる。
日本人だって、フィリピンやタイやインドネシアに逃げ込んで、凶悪犯罪を繰り返している人たちがいるーー朱さんはそれを例に挙げてはいないが。
「問題は、その人が、世界を知ろうとしているかどうか、ではないか」
と朱さんは言う。
「中国人は〜」とすぐ言う人は、中国人にあらかじめある偏見があり、それを例証する事例があれば、すぐにそれに飛びついて「ほら見ろ、中国人だからだ」と言うのではないか。
ーー朱さんが、そうはっきり言っているわけではないが、言いたいことはそういうことのようだ。
本当に深く世界を知ろうと、普段から情報を集めている人は、そんなステレオタイプな見方はしない、ということだろう。
それはそうだが、どれだけのことを知れば十分な知識になるのか。それも一つの理想論であると感じる。
私は、基本的には朱さんの考えに賛成だ。
人種差別をしてはいけませんーーという「リベラル」の教育は、結局のところ建前を教えるだけにならないか。少なくとも十分でない。
一般に、「反差別」の教育は、表面上は差別をしなくても、内心で差別心を持ち続ける、不正直な人間を育てるだけである。
自分でよく探索して、その上で判断しなさい、という教育が正しい。
よく知らない対象に、早急に判断を下さないようにしなさい、というのが、正しいと思う。
戦後、高度成長期以降の日本の「リベラル」は、日本以外のアジア、あるいは発展途上国や第三世界を、逆に理想化していたところがある。
私が「団塊文学」と呼んだ、かつての冒険小説は、左翼的世界観をもとにしていて、被抑圧者側を美化する傾向があった。
いま川口市で話題のクルド人が、舩戸与一の「砂のクロニクル」で美しく描かれていたのなどが典型だろう。
そういう美化が一面的であることが、日本人の海外経験が豊富になるにつれてバレたから、冒険小説ブームは滅びた。
いっぽう、今度の三郷市の事件などで、「外国人は危ない」という実感を持つのは当然だし、それ自体が間違っているわけではない。また、間違っていると言って、その実感が消えるわけではない。
日本人と外国人は、一般に意思の疎通が難しい。「子供の安全」といったセンシティブな問題では、とくに国民が過敏になるのは当然である。
そして、そういう「実感」によって、同じ日本人に対して「同胞感」を持ち、ともに「外敵」の備えるような姿勢こそ、愛国心やナショナリズムの基盤であったりする。
それは、数日前に取り上げた朝日新聞の安藤馨論文でも、触れられていたことだった。
したがって福祉国家は、国民と国民以外の間で道徳的地位の差異が存在することを前提とし、日本国憲法25条が保障する日本国民の生存権も、政治共同体を共有する「国民」の同胞意識抜きには成立困難である。
(安藤馨「ゆらぐ福祉国家の基礎、分断される国民」朝日新聞2025/5/15)
リベラルによる人権教育も、必要かもしれないが、それはえてして実感をともなわない。
いっぽう、実感は、ナショナリズムの基盤になるが、それだけを頼りにすると危ない。
難しいところだが、その中間で、あるバランスを取るしかない。
今回の問題でも、とりあえずの結論は、そんなところだろう。
政治学者の河野有理(法政大教授)も、上記安藤論文に関して、Xで以下のように述べていた。
デモクラシーの基礎はお気持ちですよ。他方、リベラリズムの基礎は反お気持ち主義。そのバランスが大事という話ですね。難しいかもしれないけど。
(河野有理 2025/5/16 18:05)
デモクラシーの基礎はお気持ちですよ。他方、リベラリズムの基礎は反お気持ち主義。そのバランスが大事という話ですね。難しいかもしれないけど。 https://t.co/P4uaAC62SD
— 河野有理 (@konoy541) May 16, 2025
<参考>
