広告経済の次 #3: タダの怖さに気づき始めた世界
「少なくとも今は理想じゃない」 や「タダより怖いモノはない ~広告経済依存の代償~ 」で今の個人の情報インフラに関する私の違和感・懸念をお伝えしました。
しかしこの問題は、もはや一個人の違和感で済まされるものではありません。
調べてみると、同様の懸念を持ち、深く掘り下げてきた方々がたくさんいることが分かりました。
今回はその中から5名を紹介します。
鳥海 不二夫(とりうみ・ふじお)
専門:情報学、計算社会科学(東京大学大学院工学系研究科 教授)
著作/記事:
情報的健康に関する基礎的研究 (2022年1月)
https://www.kgri.keio.ac.jp/docs/S2101202201.pdfSNS・プラットフォームを民間企業が支配するリスクが顕在化し始めた (2024年9月)
https://steranet.jp/articles/-/3568
実績/主張:
山本龍彦と共に「情報的健康(informational health)」という概念を日本で初めて体系的に提示。
情報空間における感情操作・認知バイアスの構造的リスクに注目し、政策提言へと接続。
行動ログ・ソーシャルグラフの科学的分析に基づき、健全な情報環境の設計可能性を追究。
山本 龍彦(やまもと・たつひこ)
専門:憲法学、情報法、情報倫理(慶應義塾大学 法科大学院 教授)
著作/記事:
情報的健康に関する基礎的研究 (2022年1月)
https://www.kgri.keio.ac.jp/docs/S2101202201.pdfSNSで関心奪い合う構造に風穴を (2025年4月)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCD023Y20S5A400C2000000/
実績/主張:
SNSが注意を奪い合う構造が、民主主義を破壊し社会の分断を招いていると警鐘。
大脳辺縁系への情動刺激によって人々が「狼化」するというホッブズ的ディストピアを提示。
アルゴリズムの透明化と情報空間のリテラシー向上を、制度的・倫理的両面から提言。
ジョセフ・E・スティグリッツ(Joseph E. Stiglitz)
専門:経済学(コロンビア大学 教授、ノーベル経済学賞受賞)
著作/記事:
スティグリッツ 資本主義と自由 (原著 2024年4月 / 邦訳 2025年5月)
https://www.amazon.co.jp/dp/4492315640/スティグリッツ警告「ソーシャルメディアの弊害」 (2025年5月)
https://toyokeizai.net/articles/-/879677
実績/主張:
プラットフォーム寡占の構造問題を、ネットワーク効果とデータ活用から分析。
広告主が不満を持っても市場から離脱できない構造に、競争の機能不全を見出す。
デジタル経済における「勝者総取り」モデルの再設計と規制強化を主張。
西田 亮介(にしだ・りょうすけ)
専門:情報社会学、公共政策、政治コミュニケーション(東京工業大学 准教授)
著作/記事:
マーケティング化する民主主義 (2016年4月)
https://www.amazon.co.jp/dp/4781650651アテンション・エコノミーとデジタル資本主義――問われるメディアと社会のレジリエンス (2024年3月)
https://www.digitalpolicyforum.jp/dpi2024_5/
実績/主張:
SNSやメディアの広告収益構造が、社会的分断・政治的極端化を引き起こす危険性を指摘。
「公共性の空洞化」「制度設計の不在」が、デジタル資本主義における最大のリスクだと論じる。
アカウンタビリティや透明性の欠如が、民主主義的プロセスの脆弱化を招いていると警鐘を鳴らす。
シャシャナ・ズボフ(Shoshana Zuboff)
専門:社会哲学、経済社会論、ビジネス倫理(ハーバード・ビジネススクール 名誉教授)
著作/記事:
監視資本主義: 人類の未来を賭けた闘い (原著 2019年1月 / 邦訳 2021年6月)
https://www.amazon.co.jp/dp/4492503315民主主義は監視資本主義に勝つ 米ハーバード大ズボフ氏 (2022年1月)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQODK1168A0R10C22A1000000/
実績/主張:
「監視資本主義」をアテンション・エコノミーの中核構造として理論化。
行動データを「未来の予測・操作」のための商品に変える経済システムの危険性を体系的に提示。
民主主義と個人の自由意志が、データ収集+広告最適化のアルゴリズムによって掠奪される構造を批判。
まとめ
広告経済が私たちの関心、時間、思考までもを支配する構造は、すでに多くの人に認識され始めています。今回紹介した論者たちの視点は、その構造を解きほぐすための手がかりとなるでしょう。
では、私たちはこの現実にどう向き合えばよいのでしょうか。ただ「広告が悪い」と叫ぶだけでは不十分です。その仕組みを理解した上で、別の選択肢を創ること。そのための「戦略」を、これからみなさんと一緒に考えていきたいと思います。
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