判事をティミー呼ばわりして実刑をくらった話(2)
その昔、今の夫であるアルゴが、判事をティミー呼ばわりして本来なら軽度の処罰で済むところを実刑判決を与えられた話の続き。その1はこちら。
私は、子供の頃から結婚とか家庭というものにさしたる憧れが持てなかった。お見合いで結婚した両親。二人は円満だったけれど、母親が父方の親族に苛め抜かれてそしてだんだん、なんだか心がおかしなことになっていく様子をみていて、うへぇぁと思っていた。過度のプレッシャーというのか、今考えれば、若かった母はかなり無理をしていたのだと思う。そりゃ、どんな人であれ、嫌われるよりは好かれた方がいいし、それが伴侶の家族ならなおさらだ。
そういうわけで『めんどくさそうだから、いいや、結婚とか』と子供の頃、そう思ったきり、大人になっても、うへぁ、としか思えなかった。付き合った人は何人かいたが、長く続いた人はいなかった。自分の生活に他人が入ってくるという感覚がいつも付きまとい、浮かれている時期はいいのだけどそれを過ぎると、なんかめんどくさいなぁとか。うへぁ……となってしまうのだ。だから、アルゴに何度かプロポーズされた時も、いや、結婚はしないよ、めんどくさいから、なんて断っていた。
このことがアルゴをひどく傷つけてしまったのだけど、何となくは、この人とずっと一緒にいるんだろうなぁと思っていた。でも、結婚するというビジョンや計画は全くなかった。後になって知ったけれど、統計的にみて、黒人男性が求婚して結婚するというのは統計的にみて非常に少ない。例えば、子供はいるけど籍は入れないまま一緒にくらしたり、別々に暮らしたり、とかいうケースが多い。だから、アルゴが求婚した時というのは、かなり真剣でレアなケースだったのだという。
義母が亡くなり、実の兄弟たちと縁を完全に切った(詳しくは→スペインを徒歩であるく話にあります)アルゴ。なんだか本当に一人きりになってしまった。とはいえ、ママの姉妹(おばさんたち)と兄弟(おじさんたち)は総勢で9人。天涯孤独というわけではなかったけど、母親が絶対無二の存在だった彼は、スペインを徒歩で横断して、少しの間は気持ちが落ち着いていたようだけど、気持ちが不安定な日々はその後も続いていた。なので、私はアルゴと結婚することにした。
血のつながりのない私たちだから、法律などの形でつながりを作りたかったのだという。いつもそばにいて、一緒に暮らしているけど、それでも不安なのだと彼が言ったから。だから、3回目にプロポーズされた時にわかったよぉとなったのだ。ちなみに1回目は軽く、明日、結婚しよ。といわれた。アルゴは当時、無職で指輪すらなく、指輪がないことに何の説明も言い訳もなかった。だから断った。2回目は言われたその日に浮気女から電話が来たのでふざけんな、ということで却下。三度目の正直というわけである。
2度断った理由は(まぁ2回目のは当然で、このことについてはまたゆっくり書いていきたいと思っている)そもそも憧れがなく、必要性を感じていないところに。プロセスが面倒なのである。まず結婚許可証(Marriage License)を取る、その後、定められた期間の間で婚姻を行う。結婚式をあげて司祭や僧侶が行う宗教的な式のほか、州役人の立ち会いによる結婚式を挙げることも可能。Civil Marriage Ceremonyと呼ばれていて、裁判所や市役所なので決まった日に予約を入れて行くと、結婚を宣言、宣誓して婚姻が認められる。その後、Marriage Certificateという証明書が発行されるので、それを取り寄せるというのが大まかなチョイス。さらに、私たちの場合はそこからビザの更新、グリーンカード手続きが必要となるため、弁護士を探し、膨大な量の書類を用意しなくてはならない。私たちの場合、こういったすべての手続きや書類の準備等、私が全部ひとりでやらなくてはいけないということはわかりきっていたので、それが面倒だったのだ。
そしてそんな面倒なプロセスのほかにも、当時の私は日本にいる母親に絶縁されていたため(黒人と付き合っていること、大学院を辞めた後もこちらに残っていたことが理由。私は10年近く日本にいる家族、親族との交流を断っていた)絶縁されてるとは言え、やっぱ報告した方がいいのか?ていうか、結婚だしなぁ。どうするかなぁという問題もあったのだ。結局、まぁいいか、めんどくさいし、ってことですべてをすっ飛ばして、籍を入れたのだけど。
というわけで私たちは籍を入れた。ここでようやくタイトル。市役所で結婚許可証を取り、それが届く頃合いを見て、州役人の立ち会いによる結婚プロセスが予定されている日取りを確認。アルゴがとにもかくにも一日も早くとせかすので、一番早い日に予約をいれることにした。入籍という人生でかなり大きな節目を私たちはさしたる感慨もないまま、あれよあれよという間に行った。ちなみに、式を挙げなくても、許可証を取りに行くときや、州役員の立ち合いの場に行くとき、盛装をしたり、人によってはウェディングドレスで行く人ももちろんいる。ちなみに、数年前に友人のゲイカップルの式の立ち合いをした時、彼らはウェディングドレスとタキシードで行った。彼らの式宣誓は、市役所で行われた。市役所は古い情緒のある建物で、写真撮影など大層はかどった。結婚宣誓できる場所は、市役所、各種裁判所である。裁判所は家庭裁判所とか、交通裁判所とか様々。で、私たちの場合はどうだったかといえば、裁判所。しかも、クリミナルコート。地方裁判所の中でも特に犯罪を扱うところである。
そうして、私たちは再度、判事ティミーと会うことになるのである。
(その3 最後)に続く。
