となりのトップランカー #11 | 成功者の苦悩② 抗うもの
9日間の体験入店期間中に、
リピートしてくださったお客様。
50代の経営者で、金銭的にも社会的にも、
既に全てを手に入れたかのように見える方でした。
湯船の中で
廊下で何の準備もない唐突の逢瀬のあと、
汚れた身体をシャワーで洗い流し、
2人で広く綺麗な湯船に浸かりました。
ヤマシタ様の脚の間に私が背を向けて
すっぽり収まり、話しながらもヤマシタ様の手は
私の胸をやわやわと弄んでいました。
お風呂の中で交わしたのも、
お仕事の話がほとんどでした。
これまで乗り越えてきた苦労や、
成功者となってからの周囲の反応。
特に、銀行関係の方の手のひらを返したような
豹変ぶりを、大きな声で笑いながら
教えてくれました。
私は相槌を打ちながら、
今の自分には到底手の届かない話を、
まるで夢物語のように聞いていました。
このお仕事をしていてよく思うことですが、
自分のことを話したがる方が
本当に多いなと感じます。
私は聞かれなければ自分の話はあまりしないので、
純粋に「すごいな」と思います。
自信があるように見えるのです。
自分の身体に素直になること
のぼせる前にお風呂から上がり、
裸のままベッドへ。
ヤマシタ様は大きな体躯を大の字にして
ベッドに寝そべりました。
キングサイズのベッドなので、
それでも十分に余裕があります。
私が体を拭いてベッドサイドに腰掛けると、
ヤマシタ様はさっきまでの大仰な声ではなく、
気の抜けた甘えるような声色で言いました。
「・・・、・・てくださ〜い」
その豹変ぶりに内心驚きながらも、
私は言われた通り、
ヤマシタ様に覆い被さりました。
どちらかといえば受け身である私は、
攻めることに関してはまだまだ修行中です。
男性も、
快感が表に出る方と、出ない方。
して欲しいことを素直に伝える方と、
伝えない方。
様々いらっしゃいますが、
私としては反応を見せてくれたり、
伝えてくれた方が攻めやすいので嬉しいです。
目の前の方が悦ぶ方法を一生懸命考えて、
やってみたことに、悦んでもらえる。
そうすると、他では味わえないような
特別な充足感が溢れてきます。
肌の悦びや、お互いの温度を伝え、交換する。
性愛というものは、
余計な感情を捨てて
ただ快楽を追求することこそが、
本能が満たされるためのコツなのかもしれません。
羞恥や背徳を捨て、
純粋に性というものに向き合えたのは、
このお仕事に携わったからだと思います。
激しい熱の応酬が終わった後。
息を整えていた私の両手を掴み、ベッドに押し付けながら、ヤマシタ様は私に覆い被さってこう告げました。
「お前は俺の女だ」
その言葉の真意は、わかりません。
これは、制約された時間の中での関係だから。
少なくとも、気に入っていただけたのでしょう。
私は微笑んで頷きました。
ホテルを出る前に、
「絶対に無闇に連絡はしない。
ただお店を辞めたりする時には教えて欲しいから」
と言われ、電話番号を交換しました。
その後、
私が体験入店を終えるまでにはいらっしゃらず、
私も自分から連絡しなかったので、
次のお店をお教えすることはできませんでした。
しかし、数週間ほど経った頃でしょうか。
深夜に、ヤマシタ様から着信がありました。
通話の中で、
「仕事は完全に第一線を退いた。
これからは、頑張っている人を応援したい
と思っている」
といったことを、一生懸命に話していました。
私は、社交辞令として
「またお会いしたいです」と言い、
新しいお店のことも伝えましたが、
結局、ヤマシタ様がいらっしゃることは
ありませんでした。
もしかしたら、
私に縋って欲しかったのかもしれません。
あの言葉の通り、「俺の女」になって
欲しかったのかも。
ただ、それに応じるには、
私のプライドが高すぎました。
賢い女ならパトロンになってもらうことが
できたかもしれませんが、
私にはできませんでした。
そして、それでいいと思っています。
2026年4月19日
KANA
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▽前回の記事 #10『成功者の苦悩① 求めるもの』はこちら
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執筆後記です。
甘えた声から始まった、
激しい熱の応酬。
その詳細は……。
※以下の記事には一部に性的な描写や、成人向けの表現を含みます。
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