見出し画像

TOEIC865点、英会話0歳、AIコーチと英会話を始める。

初めてのオンライン英会話のレッスン
レッスン開始のボタンを押す僕の手は震えていた。

ボタンを押したら最後、画面の向こうに知らない外国人が現れて、英語で話しかけてくる。25分間、逃げ場はない。「やっぱり明日にしよう」というのを3回繰り返して7日間無料体験は残り4日間となっていた。

TOEICは865点ある。リーディングとリスニングはそれなりやってきた。
でも「スピーキング」は完全に手つかずのまま、ここまで来てしまった。
テストの点数だけそこそこ高くて英語を話せない人間。現代日本の英語教育の末路である。

それでもボタンを押したのは、今年の11月に彼女と一緒にLAへ行くことが決まったからだ。大好きなレイカーズの試合を観に行く。
(尚、レイカーズは今シーズンで八村塁との契約が切れるため、再契約を獲得して、僕が八村塁を目の当たりに出来るかは運次第である。)

その時、現地で外国人と英語で話してみたい。そして、彼女の前でかっこいいところを見せたかった。動機が不純なのは自覚している。でも人間を動かすのはだいたい不純な動機だ。

そんな、妄想を脳内で膨らませていた所、Youtubeのおすすめ欄で出てきた、やんさんという英語系Youtuberの方の動画を観て「自分にもこれならできるかも!」と思い、僕はDMM英会話の無料体験に申し込んだ。

ただ、怖かった。「自分の英語が通じなかったらどうしよう」という漠然とした恐怖。1年以上かけて積み上げてきた自分の英語力が、実は張りぼてだったと証明されるような気がしていた。

結果はどうだったか。

想像以上にちゃんと意思疎通できた。

文法はめちゃくちゃだったけど、会話は成立した。セルビア人の講師はレッスンの最後にこう言ってくれた。

You did very nice for your first lesson!
It's definitely a bit easy for you. I think you can try intermediate.
初めてのレッスンにしてはとても良かったよ!
今日のはあなたには簡単すぎた。次はもう少し難しいのに挑戦してみたら

25分のレッスンが終わった時、「あれ、思ったより大丈夫だったな」というのが素直な感想だった。

ただ、「読める」と「話せる」は全然違った。自分の言葉で文を組み立てようとすると、言いたいことの半分も出てこなかった気がする。

英会話が「怖い」の正体は3つの誤解だった

英会話を始める前に感じていた「怖さ」には3つの誤解があったと思う。

完璧に話さないと伝わらない

完璧に話さなくても伝わる。文法がめちゃくちゃでも、単語を並べるだけでも、講師は想像以上に文脈から汲み取ってくれる。

こちらが「I... go... LA... November...」みたいに原始人のような英語を発しても、講師は「ああ、11月にLAに行くんだね!」と理解してくれる。完璧な文を組み立てられた方がもちろん良いが、完璧に話せなくてもコミュニケーションは通じる。人類は言語が生まれる前からコミュニケーションを取っていたのだから、当然といえば当然かもしれない。

聞き取れないと詰む

講師の英語が聞き取れなくても詰まない。

わからなかったら「Sorry, Could you use simpler words?」(もう少し簡単な言葉で言ってもらえますか?)と聞き返せばいい。
ただ、それだけのことだった。

聞き返すのが怖いのは、自分が逆の立場でたまにイラっとくることがあるからかもしれない。
かくゆう僕の声は、ちょうど日常生活の中の雑音と同じ周波数になっている。少し騒がしい場所に行くと大体周りの雑音に埋もれてよく聞き返される。何回も聞き直される時にちょっとイラっとしてしまう自分がいる。だから自分が聞き返す側に回ると、相手にも同じことを思わせるんじゃないかと怖くなる。

でも英会話の講師は「聞き返されること」に慣れたプロだ。何度聞き返しても嫌な顔ひとつしない。そもそもこちらは英語の発展途上の生徒なのだから、わからなくて当然なのだ。

英語が下手で講師に笑われる

講師は頑張って英語を勉強する人を決して馬鹿にしない。

英語が下手すぎて会話にならず「どうしたもんかね・・・」みたいな苦笑いをされることもあるが、英語が下手なことに対して冷笑してくるような人は見たことがない。

あくまで所感だが、オンライン英会話の講師をやっている人は、基本的にボランティア精神に溢れており、人間としてよく出来た方が多い。
そして、意外とハイスペックな人が多い。今まで出会った講師陣でも、AIのモデル自体を開発しているエンジニア、官僚、大学教授といった恐ろしくハイスペックな講師とたまーに出会えたりする事があったりする。

このような方々に限らず、講師は「給料」が目的ではなく「外国人に英語を教えるのが好き」でやっている人たちが多く、皆さんとても優しくて気さくな方が多い。これはあくまで僕の経験だが英会話を始めてから、終了後に嫌な気持ちになったことは一度もないというのを伝えておこうと思う。

英会話=フリートークではない

そして、これが一番大きな誤解だった。DMM英会話には英会話中に利用できる教材が用意されている。その中でも「Daily News」という教材がめちゃくちゃよくできている。

Daily Newsの一例

構成はこうだ。

  1. まず記事に出てくる単語を講師と確認して、音読をする。

  2. 次に記事を音読する。講師が一文ずつ読んでくれて、それをリピートするだけ。

  3. そして記事の内容について質問に答える。

  4. 最後にテーマについて自分の意見を述べるDiscussionがある。

重要なのは、授業の進め方がある程度決まっているということだ。

何を話すか、どんな順番で進むかが事前にわかる。つまり、準備ができる。フリートークだと「今日は何を話そう」というゼロからのプレッシャーがあるが、Daily Newsなら記事を読んで質問を確認しておくだけで、レッスンを円滑に進められる。

僕は今まで一度もフリートーク形式の授業はやっていない。教材という補助輪があるお陰で、英会話のハードルは体感で半分以下になる。

それでも、レッスンを受けるだけでは足りなかった

最初の数回は「レッスンを受けた」という事実だけで満足していた。

毎回25分、講師と話す。うまく言えなかった表現を「次は直そう」と思う。でも翌日には忘れている。次のレッスンでまた同じミスをする。「あれ、これ前も言えなかった気がするな」というデジャヴを毎日体験する。

問題は、ミスが「記録」されていないことだった。レッスンが終わると、何を間違えたかの記憶はどんどん薄れていく。翌日にはもう「何かうまく言えなかったな」くらいの印象しか残っていない。

これは多分、何百回レッスンを受けても同じだ。
数回の授業を受けた後、僕は「受けっぱなし」の限界を感じていた。

プロダクトマネージャーの本能が発動した

ちなみに僕は普段、IT企業のプロダクトマネージャーとして働いている。

プロダクトマネージャーについてよく「どういう仕事?」と友達に聞かれるが、ざっくり言えば、製品(プロダクト)をどう良くするかを考えて実行する仕事だ。だから「問題を見つけたら仕組みで解決したくなる」のは、もはや職業病みたいなものである。

「受けっぱなし問題」を前にした時、その職業病が発動した。

レッスンの音声を録音して、全部データにしてAIに食わせればいいのでは。

DMM英会話にはレッスンの録音をMP3でダウンロードできる機能がある。そしてOpenAIのWhisperという音声認識モデルを使えば、音声を自動で文字起こししてテキストに起こしてくれる。AIにやりたいことを伝えたら、Pythonスクリプトを即書いてくれて自動化できた。

録音をフォルダに置いて、コマンドを1回叩くだけ。これで25分のレッスンが全文テキストになる。

この文字起こしが面白くて、発音が間違っていると、ちゃんと間違ったまま文字に起こされる。自分では正しく言えたつもりの単語が、全然違う綴りになっていたりする。初回のレッスンでは「Lakers」と言ったつもりが「Ray cards」と文字起こしされていた。僕が一番好きなチーム名ですら、うまく発音出来てなかったらしい。たまに、Google翻訳に向かって発音して正しく認識されるか試したことがあるけど、それと同じ原理だ。文法だけでなく、発音の改善にも使える。

ここからが核心だ。

文字起こしテキストをAIに渡して、今回のレッスンの復習シートを自動生成してもらう。また、今回のレッスンの文字起こしだけでなく、過去の全レッスンの復習シートや文字起こしをAIが自由に読める場所に配置している。

つまりAIは、僕の1回目から現在までの全ミス、全成長、全課題を知っており、それを元に今回のレッスンの復習シートを作成してくれるのだ。

たとえば僕がたびたび同じ文法ミスをしているときは、AIは「このミス3回目ですよ」と教えてくれる。実際の復習シートはこんな感じだ。

復習シートの一部を抜粋、間違えた文章を修正してくれる。

人間のコーチを雇っても、何十回分のレッスンの細かいミスを全部覚えてくれるコーチはいない。でもAIにはそれができる。同じミスを何回したか数えてくれるAIコーチ。

これが僕の英語学習を変えた。

なぜみんな始められないのか

この記事を書こうと思ったのは、自分の周りにも「英語話せるようになりたい」と言いながら英会話を避けている人がたくさんいたからだ。

最近では、AIと会話するAI英会話なんかも流行っている。
AI英会話が巷で流行っているのを見ると、人は人から自分のどう思われるかを強く気にしていて、それがハードルとなって英会話を始められない人が沢山いることが伺える。

英語学習をしているが、英会話をしていない人に理由を聞くと、だいたいこう返ってくる。

  • 「もうちょっと勉強してからにする」

  • 「まだ自信がない」

  • 「人と話すのは恥ずかしい」

気持ちは正直死ぬほどわかる。自分もそうだった。TOEICで良い点数が取れるようになってきてからもずっと英会話だけは頑なに避け続けていた。「もうちょっと勉強してから」「もうちょっとリスニング力をつけてから」そう言い続けて、いつまでも始められなかった。

英会話を始めてから毎日25分の英会話を余程のことがない限り必ず受けるようにしている。これを、友達や家族に話すと「凄いね」と言ってくれる人も多いが、正直、最初の1ステップさえ踏み出せれば、そこまでハードルは高くなかった。

続けてみて確信したのは、「もうちょっと勉強してから」の「もうちょっと」は永遠に来ないということだ。

英会話で必要なスキルは、リーディングやリスニングの勉強の延長線上にはない。どれだけ単語帳を回しても、長文を読んでも、「口から英語を出す」経験の代わりにはならない。

まだまだ拙い、でも走り続ける

ここまで偉そうに書いてみたが、まだまだ僕の英語は拙い。

冠詞にaをつけるかtheをつけるか、はたまた無冠詞なのかは何回やっても間違える。また、即興で長い文を組み立てると文法が崩壊してしまう。

一番悔しいのは、頭の中ではもっと深い考えがあるのに、英語にした瞬間に浅い会話になってしまうことだ。

たとえば「AIは学校教育に取り入れるべきか」というテーマがあった時、頭の中では「私はAIを積極的に教育に取り入れるべきだと思う。これは算数・数学の授業における『電卓』と同じ構造だ。電卓が登場する前は、手動での計算力が重要視されていた。でも電卓が普及した今、計算力そのものは求められなくなった。同じようにAIは、知識を暗記して引き出すようなハードスキルの必要性をなくしつつある。その代わりに、問いを立てる力や人を動かす力といったソフトスキルの重要性が高まっている。技術の進歩によって、求められる能力も解くべき課題も変わる。AIもいずれ電卓と同じようにスタンダードになるだろう」みたいな話をしたかった。

でも、実際に口から出たのは、"I think….. AI is good … for students…." くらいの薄っぺらい一文だった。日本語ならパッと言えることが、英語だと口をついて出ない。頭の中の自分と、口から出てくる自分の差に、毎回もどかしさを感じる。

今でもDiscussionパートでは毎回文法が崩壊するし、言いたいことの半分も伝えられない。

でも、そのもどかしさを記録して、分析して、次に活かす仕組みがある。僕がやるのは「レッスンを受ける」「録音をAIに渡す」「復習シートを見て音読する」だけだ。残りはAIが全部やってくれる。

完璧を目指して始められないより、不完全なまま走り続けるほうがずっといい。そもそもこの世に完璧なんて存在しない。
「旅は恥のかき捨て」という言葉もあるが、英会話もまさに同じだ。
どうせ講師も、明日には僕と話したことなんて覚えていない。

初回レッスンのボタンを押す時、手が震えていた。
ただ今朝、ボタンを押した瞬間には何も感じなかった。
最近は、英会話が生活の一部になっている。

画面の向こうには世界のどこかに住む誰かがいて、毎日25分間だけ僕の英語の先生になってくれる。その25分が終わると、少しだけ自分の世界が広くなった気分がする。

英会話を始めるのに「準備万端」なんてタイミングは来ない。今持っている英語力で、今日始めればいいと思う。

そんな事を思いながら、明日も僕はレッスン開始のボタンを押す。そんな毎日を暮らしている。


関連記事


いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集