【S1|形のルール】私がルアーを作る理由──形が生まれる前の話 #1
第1章|カタチが決まる瞬間
1.削っていると、突然わかる瞬間がある
木を削っていると、
ある瞬間に「もう迷わなくていい」と感じることがある。
それまでは、
少し削っては止まり、
角度を変えて眺め、
また手を動かす。
だが、ある一点を越えると、
次にどこを削るべきかが
不思議なほど自然に見えてくる。
2.木片が、こちらに指示を出してくる
こちらが主導しているつもりでも、
実際には逆だ。
「ここだ」「そこではない」
そう言われているような感覚が、
手の中から伝わってくる。
私はただ、
心を澄ませてそれに従うだけになる。
3.いわゆる“ゾーン”かもしれない
集中が深まり、
時間の感覚が薄れ、
判断に迷いがなくなる。
それを“ゾーン”と呼ぶ人もいるだろう。
だが私にとっては、
特別な状態というより、
余計なノイズが消えただけの状態だ。
4.デザインにも、同じ瞬間がある
デザインでも、
まったく同じ瞬間が訪れる。
アイデアをひねり出している間は、
まだ形は生まれない。
だが、
視点と目的と感覚が揃った瞬間、
形は一気に輪郭を持ち始める。
「決めた」のではなく、
「決まった」と感じるあの瞬間だ。
5.形は、選択の結果ではなく、応答の結果だ
この瞬間に生まれる形は、
論理の積み上げでも、
偶然の産物でもない。
世界と自分が、
一瞬だけ同じ問いを共有した結果だ。
私はその応答として、
形を受け取っているにすぎない。
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