【S1|形のルール】私がルアーを作る理由──形が生まれる前の話 #2
第2章|友人がくれたキッカケ
1.始まりは、いつも自分の外側から来る
何かを始めるとき、
それは必ずしも「強い意志」からではない。
たいていは、
誰かの何気ない一言や、
偶然のような出来事が、
こちらの背中にそっと触れる。
後から振り返ると、
あれがキッカケだったのだと分かる。
あるキッカケで釣り雑誌の編集者と知り合いになった。
彼はごく近所に住んでいた。
今度、旅行で河口湖に行くと話すと、
バス釣りの道具一式を貸してくれた、これでやってこいと。
もちろん、そんな付け焼刃で釣れるはずもなかったが、
フィールドに立つ感覚は、幼い日々に私をいざなってくれた。
2.細分化された世界の中で
釣りの世界は、
驚くほど細かく分かれている。
スタイル、道具、思想、流派。
同じ「釣り」という言葉の中に、
無数の文脈が折り重なっている。
選択肢が多いということは、
自由であると同時に、
どこにも属さない不安も生む。
バス釣りにもさまざまな文脈が存在する。
楽しみ方は人それぞれだ。
3.別の入口を教えられた
河口湖での釣りのあと、ふと昔の友人のことを思い出した。
迷わず彼に電話した。そしていっしょに釣りに行く約束をした。
彼のスタイルは、トップウォーターと呼ばれるもの。
沈むルアーは使わず、水面でしか勝負しない釣り方だ。
それは主流でも、効率的でもない。
むしろ遠回りで、
理屈より感覚に寄った世界だった。
だが、
なぜかそこだけは、
最初から身体に馴染んだ。
4.選ばなかったのではなく、選ばされた
友達はビンテージのルアーを好き好んで使った。
しかし、なぜか私はそれになじめなかった。
結果的に、
ビンテージを集める道ではなく、
自分で作る道を選んだ。
それは「こだわり」でも
「反発」でもなかった。
ただ、
他の選択肢が
自然と視界から消えていっただけだ。
5.キッカケは、理由にならない
この章で語れるのは、
明確な動機ではない。
なぜなら、
キッカケは説明できても、
必然は説明できないからだ。
だが確かに、
ここで何かが
静かに動き始めた。
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