MiRai_sideF - 読心
前話 → MiRai_sideE
誰かがカレーを食べている。
間違いなく、かなりおいしいやつだ。
「虚空線、東京発・大阪行き、ただいま発車いたします。
所要時間、十一分三十秒でございます」
乾いた女性アナウンスが車内に響く。
すぐ着いてしまうのだから、
発車前に食べ始めるのも当然だ、とブレンダは思う。
そして、自分も空腹であることに気づく。
しかも、かなり強烈な。
「10分ぐらいじゃ何もできないわ」
「せめて、飲み物ぐらい買えばよかった」
その時だ。
「コレ、よかったら」
隣の席の男性が、
いきなり何かを差し出してきた。
もちろん知り合いではない。
「え?なんで?」
「ワタシ、何も言ってないですよね」
「ええ、あなたは何も言ってませんよ。
でも、私には解るんです。
ハイ。お茶をどうぞ」
ブレンダは、考えた。
① 不意に声が出ていた
② 読唇術のようなもの
③ 超能力者?まさかね
男は立ち上がると、
ブレンダにニッコリ微笑んで、
ゆっくりと隣のチューブへ消えた。
—— 何?
車内の表示に、小さな文字が流れる。
〈本日より、虚空線コンシェルジュサービスを開始いたしました〉
真空チューブ型超高速輸送システムに、
新たに搭載されたサービスらしい。
「いつから、法改正になったんだっけ」
「だからって、気持ちのいいことではないわね」
男が戻ってきた。
「カレー、どうされます?」
「いらないわ。もう着くから」
END
MiRai|未来に置いてみる
未来に問いを置く思考実験。
D4G Works
