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ショートエッセイ:隠された約束

「儀式」

と聞いてなにを思い浮かべるだろうか。

結婚式、
葬式、
誕生会、
お祭り。

身近な儀式。
いわゆる冠婚葬祭。

でも、なぜそれらを行うのか、
その意味まで考えることは少ない。

子どものころ、

母の実家のそばの砂浜で、一人で釣りをしていた。

となりでは、近所の子どもが竿を出していた。
会えば少し話す程度の関係だった。

彼が、大きな青魚を釣り上げた。

いいなー、と横目で見ていると、
魚だけを持って、どこかへ消えた。

しばらくして戻ってきた彼は、
三枚におろされた頭と骨を持っていた。

それを海に向かって投げ入れ、
手を合わせた。

「誰にも言うなよ。神様に怒られるからな」

私は、
なにか見てはいけないものを見たような気がした。

それが何なのか、
当時は分からなかった。

いまも、
うまく言葉にできない。

ただ、あの浜辺には、
目に見えない約束があった。

もう、あの浜には行っていない。

でも、あの少年の背中だけは、
いまでもはっきり覚えている。


▼ 答えは、いつも境目に現れる

▼ 儀式は、荒ぶるものを静かに受け止める

▼ 魚を獲ることは、魚の世界を借りることでもあった


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