薄暗い短歌・詩・小説 Xまとめ2026年3月
ごきげんよう! 花星沙夜です。
短歌・詩・小説 Xまとめ2026年3月第2弾です!
わたしは暗いニンゲンなので、作品も薄暗いものが多いです。数が多いので二編に分けるか迷ったのですが、ひとつに凝縮しました。
今回はセンシティブなものもあります。ともすれば怒られそうなのですが、真面目に作っているので、できれば怒らないでほしい……。
3月分の過去のまとめはこちら!(今すぐ読まなくても大丈夫だよ!)
性質上、過去のまとめとの重複もあるかもしれませんが、お気になさらずお読みください!
短歌(+解説、短歌と繋がる140字小説・詩)
愛のため「秘すれば花」と耐え忍ぶ無償のそれを持たぬ大人は
「秘すれば花なり」室町時代申楽観世座の二代目太夫世阿弥が残した名言。実はくだらないものでも、それを秘めることで花となり人を惹きつける。
だから私は欲に逆らって、つまらない中身を隠し、花となり愛を得る。
全てを曝け出しても愛を貰えた子供時代を持たない私は。
当事者でない者たちが知ったげに冷笑してる自傷よりグロ
センシティブだが迷いはなかった。心の傷の視認化、鎮痛ホルモン分泌、自罰による切り替え行為。医学的にも有力な説。ここまで追い込まれても作り笑顔で生きている人の心を暴き、巻き込む想像力もなく、「承認欲求」「気持ち悪い」「後悔する」と冷笑する様、グロいって。
グロいのは人の傷をグロいグロいと囃し立てるその心の方かと。
「豊かさの上で曲らは生まれゆく」渇いた喉で唄う僕らは
曲らは豊かさの上で生まれゆく。
僕らは渇きの横で死んでゆく。
「曲」は確かに「豊」の文字の上にある。
「渇」の文字は横に「シ」がある。
真冬のスラムの裏路地を思い浮かべる。
誰も知らない唄が聞こえる。
飢えて渇いた喉が最後に奏でた誰も知らない唄は消えてゆく。
「曲ら」は豊かさの上で生まれ、「僕ら」は……。
生きるか死ぬかの暮らしでも確かに存在したのに、豊かでなかったせいで記録に残らないものたち。
死にきれず死を仄めかすプレゾンビ金の亡者のインプレゾンビ
プレ花嫁、プレママ、プレゾンビ。
インプレゾンビとかけました。「金の亡者」、慣用句として使われ意味は薄れていますが、「亡者」の単語が入っているんですよね。心のこもっていないインプレゾンビの投稿。
「死にたい」という投稿は死後も電子の海を揺蕩い残り続けます。魂が抜けた後も彷徨うメッセージ。
空っぽな自分は浮くか浮かないか落ちていくなら空がよかった
空の字にたくさんの意味があるように、たくさんの解釈ができる歌にしました。
自分は質量がないのではないかと思うほど空っぽで、それでもやっぱり飛べば落下する。アスファルトではなく空に落ちたかったと、最後に思う。
空っぽな自分でも案外浮かないもので、どうせなら空に落下するほどの奇人でありたかった。
みなさまの解釈をお待ちしております。
「満たして」と縋り応えてもらえども今やお前は容器になりぬ
さみしい。話し相手になってほしい。愛してほしい。ママの代わりになってほしい。他人に縋り付き応えてもらうばかり。「満たして」「満たして」と呼びかけ応えてもらって、ひと時の安寧を得る。その呪いの代償に、お前は人ではなく、中身のない容器になってしまったね。
診断書出し蚊帳の外死んだよう心臓お前も休んだらどう
心身ともに限界で、「就労不可」と記された診断書を提出した。働けず部屋に籠っているのに、「蚊帳の外」なのはこちらで、社会的に死んだよう。ひとり寝てばかりなのに、心臓は絶えず働いている。心臓、お前も働き続けて嫌になんない?休んでくれない?せめて一緒にさあ。
働けないのに生きている後ろめたさ。休めと言われても罪悪感で休めない。よく、わかります。
めちゃくちゃに刻んだ具材泣くものか薄いカレーをガリリと噛んだ
泣くものか 死ぬものか
こんなにもひとのこころは薄黒く
紅の内側で黄色い歯が
甲高い声でわらっていた
形見が刻まれていた
泣くものか 死ぬものか
わたしは命であった具材を
一番重い包丁でめちゃくちゃに刻み
水も量らず薄明るいカレーを作り
煮え残った野菜をがりりと噛んで
歯をトパーズ色にした
花星沙夜 X
参考:『レモン哀歌』/高村光太郎 詩集『智恵子抄』
千枚に及ぶ二人の契約書「契る」「千切る」は同じ音だね
何枚契約書を作っても、紙切れだから千切れるよ。
水鏡見慣れたそれは青く揺れ私を見るの最後だねっ、ぴょん!
何度も青い海を下見しに来ていたんでしょうね。
快晴に舌打ちをして二度寝する窓を貫くよその幸せ
起き上がれない日々が続くと心も荒み、他所の家族が散歩する声にも苛立ってしまう。
僕たちの血は飲み込まれていくんだねこの村が町になったみたいに
人の遺伝子はたった数世代で薄まってしまうらしい。
長すぎる遺書を貴方は持ち歩き最期まで手をかけさせぬまま
「予定や行動記録のために携帯するノート」が手帳の定義なら、貴方が常に懐に入れていた長すぎる遺書は「手帳」なのでしょうね。
貴方は人に迷惑をかけまいとする人でした。
「手帳」には必要なことがすべて書いてあり、警察、家族、知人、誰の手も煩わせずに逝きました。
お題(タイトル)ありきの歌でした。
手をかけさせぬ人の、死ぬまで人の手にも触れさせない、書き加えさせない、秘密の手帳。
御守りにボンボニエール、マグカップ もらった品は骨壷に似て
お土産にくれた有名な神社の御守り
二人のハレの日にくれたボンボニエール
一緒に住み始めた記念の揃いのマグカップ
いつも骨壷や骨覆を連想してしまうのだ
でも貴方とならいつか笑い話になる
その折には美しい入れ物を贈りたい
貴方の贈り物に囲まれて今、一人美しい骨壷のカタログを読まされている
花星沙夜 X
色々と解釈できる歌なので小説は蛇足だったかもしれませんが、この人は香典返しも選ばなくてはいけなくてですね……。
またカタログを見るのです。
血は鉄の味がする拷問器具の原子番号26番
鉄、Feの原子番号は26だ。
俺は今、囚人番号26番である。
只でさえ鉄は血の味がするのに、拷問器具は鉄でできている。
血の味は嫌いだ、不味くて痛い。
口内に拡がる二重の苦。
勒(ろく)される。
二重に勒される。
舌はこれは鉄だという。
脳は血が出ていると叫んでいる。
(「げんしばんごう にじゅうろくばん」が7・7と気づいたときめちゃくちゃ興奮しました)。
別名と別の家族と幸福をビクリと揺らす諱(いみな)の響き
ボロボロになって枯れかけていた命を攫い、一度死んだことにして、新しい名前と優しい家族に総入れ替えしてめでたし。しかし、所詮は別名、別の家庭。本名に近い響きの音が聞こえる度、その命はビクリと反応します。諱(いみな)とは、貴人や死者の「本名」という意味です。
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私たちいつも並んでいたけれど落ちて割れたの君だけだった
こちらの短歌で、短歌アプリ57577の毎日新聞社コラボにて天野慶さんに【原石の57577】に選んでいただきました!
ありがとうございます!!
#短歌アプリ57577 の毎日新聞社コラボ企画にて、天野慶さんに【原石の57577】に選んでいただきました!!🎉
— 花星沙夜 (@kaseisayo) April 14, 2026
私たちいつも並んでいたけれど落ちて割れたの君だけだった / 花星沙夜
お題『別』
ありがとうございました!#短歌 #tanka #アプリで推し短歌 https://t.co/6yaiEmNKR3 pic.twitter.com/Sx69ht29Oo
突然の事故で長年隣にいたパートナーを失い、自分だけ生き残ってしまった別離の歌です。
僕たちは共鳴し合う薄ガラスだと思ってた君だけ割れた
「割れた」繋がりで、こちらも壊れてしまったパートナーをグラスに喩えた歌です。しかし、まったく異なる意味を込めました。
お題「共」では、「共同であるはずだ」という自己中心的な振動の蓄積によって、パートナーの心が壊れてしまったのです。加害者の後悔。
毒虫になったつもりで空を見るグレーチングも格子状だし
格子状の側溝蓋、グレーチングの中には毒虫や鼠が住む。格子もグレーだが、彼らの色覚なら空もグレーだろう。
カフカの「変身」を想う。主人公のグレーゴル・ザムザは、朝目覚めるとベッドの中で毒虫になっていた。毒虫は精神病の比喩という説がある。
精神病棟の格子窓から見える空は今日もグレーだ。
花星沙夜 X
参考:『変身』/フランツ・カフカ
毒虫状の社会性。
無条件の愛に至る過程では条件付けが行われてる
パブロフの犬で有名な条件付け。始めは無条件反応であったはずの唾液の分泌が、餌の合図である「ベルの音」という条件刺激が行われるうち、ベルの音のみでされてしまうようになる。
経験による条件付けがされてない愛はあるのかしら。
無条件の愛には条件が付き纏います。
物心ついた頃から物分かりいい子と呼ばれ偽物となり
物になってしまいました。
執拗に方位磁石は北をさしN極の刃は赤く染まりて
地球という大きな磁石の力で、槍先のように鋭いひし形は北を指し続ける。
N極は赤と決まっている。まるで「N極は北を指す」という役割により、執拗に北を「刺し」て血塗られる運命にあるよう。
性質は同じはずなのに、対角線で色が塗り分けられる。人が使いやすいように。
今はなきビー玉入りのサイダーをこじ開けた傷だけ残る夏
見かけなくなった形のサイダー。
価値はなくとも欲しくなる夏色の球。
無理やりこじ開けてしまうもの。
無理やりこじ開けられてしまうもの。
一瞬で飲み干した甘過ぎる泡。
割れた爪と残った引っ掻き傷。
甘さを求めてビー玉を口に含んだ。
あの涼しいビー玉はもうない。
紆余曲折を経て、現在はビー玉入りの容器に入った炭酸飲料を「ラムネ」、王冠やキャップで封をしてあるのが「サイダー」と呼ぶようになったらしいです。
ビー玉入りのサイダーはなくなり、あの日傷だらけになって取ったラムネのビー玉も、大切だったはずの「何か」もなくなってしまいました。
今日もまだ侵入不可の交差点十字架の中はりつけの君
十字路の中心部には交差点。交差点は侵入許可を要す神域だ。間違えれば死と衝突する。
信号は今日も赤いまま、黒いアスファルトを染め上げている。停止線の「外」ただ止まり続ける。君との思い出に踏み込む許可は未だ下りない。
十字架では僕の神が磔にされて死んでいる。
お静かに全然平気慣れてます自然に治る体の方は
見えない傷、全然心配してもらえない。心の傷で騒いでほしいです。
人間の寿命はかつて四十(しじゅう)ほどこれ泡銭!パーっと使お!
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短歌連作・小説
概念の関連付けが好きなので、上記の短歌からいくつか選び短歌連作と小説を作りました!
概念の関連付けが好きなので、3月に作った短歌を繋げて連作に仕上げる試みをしました。
— 花星沙夜 (@kaseisayo) March 31, 2026
連作とはこれで合っているのかも疑問ですが、まあ間違ってたらわたしが創始者になればいいか……。#短歌 #tanka #連作 #短歌連作 #縦書き画像メーカー pic.twitter.com/LquhaX4vxz
こちらの記事にまとめていますのでぜひ!
エッセイ
私は理想のママに育てられた妄想をして育ちを補填して社会的な振る舞いを模して生きてきたので、いつまでも存在しない理想のママを追い求めるバグとなってしまった。
子供の私は考えました。「本当のママが何も教えてくれないなら、理想のママを作って育ててもらえばいいじゃない」
図書館は無料です。
今回は見出し「詩(単体)」はありませんでした。
詩ならよかったなあ。
抗生剤や抗炎症剤がなければ今の生活どころか生きているかも怪しいため、現代医療には頭が上がらないが、定期的に「本来の寿命より長生きしているのでは」と思う。
「余生ラッキー✌️」の意の日、「死後の世界でバグが起きるのでは」の日、「もう終わらせても無罪では?」の日がある。
明日もよき日を。
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できた!
1ヶ月分のはずなのにやたら数が多く、まとめるのが大変でした。どれだけ暗いニンゲンなんだ。
もし気に入った作品がありましたら、ぜひ教えてください。よろこびます!
短歌・詩・小説 Xまとめ2026年3月、残りは「偏愛」「季節・モノ」編の予定です!
みなさまどうか幸せに。次回もお会いしましょう!
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作品を作るにあたり、参考にさせていただいた作品、また、たくさんのお題を使わせていただきましたこと、感謝いたします。
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