その27「1990年代生まれ俳優」 Archives『THE NIKKEI MAGAZINE Ai』プレミアムクラブ会員向けメールマガジン/歌舞伎編
(2015年11月~2023年3月配信/文:Katsuma Kineya、編集:講談社、配信元:日本経済新聞社)
※俳優名と公演情報は配信当時のものです
※敬称略
1990年代後半生まれ俳優の見どころと見せどころ
2020年9月4日配信
ミーハーな歌舞伎の楽しみ方の一つが、俳優の成長を見守ること、そして歌舞伎好き同士で「○○さんはほんと、急によくなったわね」と記憶を確かめ合ったり、歌舞伎をそれほど観ていない方に「○○さんは若い頃はこれこれだったけれど、最近ぐっとしかじかになったのよ」などと自慢できることです(笑)。そのための布石となる、1990年代生まれの俳優の顔ぶれを、2回に分けてご紹介します。今回はここ1〜2年で出演回数が増えている1995〜1999年生まれ。
1995年と1997年生まれ:中村3兄弟の、橋之助と福之助
2017年名題(なだい)昇進で、1995年生まれの俳優が、芝翫の長男四代中村橋之助。2016年、父と兄弟とともに襲名披露をした舞台がまだ記憶に新しいですね。凜々しく精悍な立役として、とくに古典に実力を見せていますが、2018年にはストレートプレイ『オイデュプスREXXX』で主役を演じるなど歌舞伎以外でも活躍しています。
兄と同時に名題昇進した、1997年生まれで芝翫次男の三代中村福之助も成長株。兄同様古典で奮闘していますが、スーパー歌舞伎Ⅱ『新版 オグリ』の小栗四郎を勤めるなど、新作にも挑んでいます。舞踊好きとのことなので、舞踊劇での活躍も期待できます。
1996年生まれ:正統派のオーラで目を引く、莟玉
1996年生まれは初代中村莟玉。梅玉の部屋子として子役デビューし梅丸を名乗っていましたが、2019年梅玉の養子となり改名。目鼻立ちの整った容姿で口跡もよく、上品な華があり、莟玉となってから以前より大きな役を勤めているためか、舞台でオーラを放ち、気になる存在です。女形だけでなく立役も演じてすでに頭角を現してきています。2017年名題昇進。
1998年生まれ:上方歌舞伎の未来を担う、虎之介
1998年生まれは初代中村虎之介。扇雀の長男、祖父は藤十郎(坂田)。目が大きくくっきりとしており女形がメインですが、立役もこなす兼ねる役者として、上方歌舞伎の未来を担う若手です。若手の出番も多い「納涼歌舞伎」の『東海道中膝栗毛』には2018年、2019年と出演し、第1回公演ほかで父扇雀も務勤**めている「平成中村座」にも、2011年から常連となり、2018年「平成中村座十一月大歌舞伎」『狐狸狐狸ばなし』では大切な役を立派に勤めています。やはり2017年名題昇進。
1999年生まれ:まさに青田買い、鷹之資
名題昇進はこれからですが、すでに存在感があり将来を嘱望されるのが1999年生まれの初代中村鷹之資。父は五世富十郎。今月の「九月大歌舞伎」『色彩間苅豆(いろもようちょっとかりまめ)』にも重要な役で登場しています。舞踊にも力を入れており、13年から自身の勉強会「翔之會」も主宰。この10月は藤間勘十郎、猿之助、猿弥とともに京都芸術劇場「春秋座 花形舞踊公演」に出演予定です。
名題俳優とは?
ここまで名題昇進と軽く書いてきましたが、ある程度歌舞伎俳優を続ければ自然に名題俳優になれるものと思っていたら大間違い。晴れて名題俳優になるには、筆記、実技の試験に合格して適任証を取得し、関係各方面の賛同を得て名題昇進披露を行わなければなりません*。しかも、受験資格を得るにも、経験や推薦が必要です。
もともと名題とは江戸の用語で歌舞伎や人形浄瑠璃の題名(上方では外題、芸題)のこと。江戸時代、名題に関する看板を名題看板といい、立派な枠に入れる大名題看板上部に舞台姿を描き、そこに役者の名前を載せたところから、名題役者(名題俳優)という呼称が生まれたといいます。名題看板も名題役者も略称は名題。
現在は名題に昇進していない名題下との区分があり、役割分担があるため、名題適任証を取得していても名題下のまま続けている俳優もいます。
次回は1990年前半生まれの俳優を紹介予定です。
(参考資料:『かぶき手帖 2020年版』(日本俳優協会、松竹、伝統歌舞伎保存会)、『新版 歌舞伎事典』平凡社、歌舞伎公演筋書、『歌舞伎 on the web』*)
**2025年10月8日訂正
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1990年代前半生まれ俳優の見どころと見せどころ
2020年10月2日配信
今回は1990年代前半生まれの俳優の顔ぶれをご紹介します。みなさんすでにかなり露出が増えており、最近はオンラインでも活躍しています。歌舞伎好き同士で記憶を確かめ合ったり、歌舞伎をそれほど観ていない方に「Aさんは最近ぐっと良くなってきたのよ」などと自慢する(笑)にはもってこいのラインナップ。
1990年生まれ:壱太郎、新悟
以下、年功序列でご紹介していきます。まず1990年生まれの初代中村壱太郎。吾妻流七代目家元も襲名し吾妻徳陽の名を持ちます。鴈治郎の長男で、祖父は坂田藤十郎、母は吾妻徳穂。上方歌舞伎の次代を担う女形です。デジタルパイオニアといわれるミレニアル世代だけあってオンラインでも意欲的に活躍しています。YouTubeでは『かずたろう歌舞伎クリエイション〈Kabuki Creation〉』を主催し、ライブ配信では実験的な舞踊作品『中村壱太郎×尾上右近 ART歌舞伎』に出演。またこの夏は「八月花形歌舞伎」の『連獅子』で見事な舞を披露。同年生まれが、初代坂東新悟。彌十郎の長男でやはり女形中心に活躍中。昨年から今年にかけて『蝙蝠の安さん』お花、三谷かぶき『月光露針路日本』マリアンヌなど新作の重要な役を勤め、若々しいオーラを放っていました。「十月大歌舞伎」では第一部『京人形』に出演。壱太郎も新悟も名題昇進は2012年です。
1992年生まれ:右近(尾上)、廣太郎
1992年生まれは二代尾上右近と三代目大谷廣太郎。右近は七代清元宗家延寿太夫の次男で父方曾祖父は六世菊五郎、母方祖父は鶴田浩二。清元栄寿太夫の名も持ちます。女形を中心に着実に実力を着けていますが、昨年自主公演『第五回 研の會』で菊五郎監修で弁天小僧を演じたり、『ワンピース』に続き『風の谷のナウシカ』でも大役を勤めたりなど 、多方面で活躍中。また、前述のART歌舞伎でも立役を勤めています。10月は「錦秋御園座歌舞伎」に出演。2014年名題昇進。廣太郎は友右衞門の長男、祖父は四代雀右衞衛**門。近年白鸚、幸四郎のもとで立役の修行を重ねている*とのことで、インターネット配信4月歌舞伎座公演『高坏』では大きな役、次郎冠者を熱演しています。名題昇進は2015年。
1993年生まれ:廣松、種之助、米吉、隼人、児太郎
廣太郎の弟の二代大谷廣松は1993年生まれ。女形だけでなく立役としても研鑽研鑽を重ねており、最近は海老蔵の一座に必ずといっていいほど出演して精進中。回を追うごとに成長ぶりが実感できます。今年9月10月の『古典への誘い』でも大事な役を勤めています。廣松に加え1993年生まれの2015年名題昇進同期には、生まれ月順に、初代中村種之助、五代中村米吉、初代中村隼人がいます。種之助は又五郎次男。浅草新春歌舞伎と並んで若手が活躍している『風の谷のナウシカ』などの新作歌舞伎各公演でも、存在感を示しています。兄弟出演の『双蝶のうたたね 2020 Soaring』も配信中。米吉は歌六の長男。かわいらしい娘役や姫役が印象的でしたが、昨今は大人の女性の大役を立派にこなしています。「九月大歌舞伎」では昨年「團菊祭五月大歌舞伎」に引き続き『寿曽我対面』で化粧坂(けわいざか)少将を好演。隼人は錦之助長男。眉目秀麗で長身、口跡もよいという生来の資質に甘んじることなく精進し、スーパー歌舞伎Ⅱ『新版 オグリ』で猿之助と交互主演を勤めるなど若手としてめきめきと腕を上げています。テレビでも昨年NHK BS『大富豪同心』で主役のお坊ちゃま同心をコミカルに演じていました。9月に続き、10月も歌舞伎座に出演。
六代中村児太郎も1993年生まれ。名題昇進は2017年です。福助の長男、祖父は七世芝翫で、2018、2019年と『壇浦兜軍記』の阿古屋を熱演して話題をさらいました。今年の「八月花形歌舞伎」では『与話情浮名横櫛』お富という大役に挑戦。また昨年末「十二月大歌舞伎」『本朝白雪姫譚話』で嫉妬深い継母の役を好演するなど芸幅も広くなってきています。
1990年代生まれではありませんが、1989年生まれに十世三津五郎長男の二代坂東巳之助、時蔵次男の初代中村萬太郎、種之助の兄中村歌昇がおり、現在30歳前後の俳優の層の厚さを感じさせます。
今回まとめたなかには4年前にご紹介した俳優もいますが、みなさんすでに大きな飛躍を遂げつつあります。これからいっそうの研鑽を積み、さらなる高みへと羽ばたいていく姿を引き続き見守っていきたいと思います。
(参考資料:『かぶき手帖 2020年版』(日本俳優協会、松竹、伝統歌舞伎保存会)*、『新版 歌舞伎事典』平凡社、歌舞伎公演筋書、『歌舞伎 on the web』)
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