心を何にたとうべき
今日も今日とて、夕焼け空に心を奪われる。
胸がぎゅうと締め付けられ、空の赤みに見惚れてしまう。
この場所から見る空はいつもの空なのに、毎回初めて見せられるかのごとく溢れ出る感情に心を支配される。
「綺麗」
「郷愁」
「グラデーション」
この情景を表す言葉はいくつもあるだろうが、どれも足りない。
夕焼けを見た時の心をうまく伝える術が、今の私にはない。
この感情を誰かと共有したいが、共有するために説明する適切な言葉は、いつも見当たらない。

何の変哲もない、ただの住宅街。
この何気ない景色も、夕方になるとがらりと変わる。

街の色が変わる。
眺めた時の心が変わる。
美しいことには違いない。
ただ、それだけではこの感情の説明がつかない。
それをそれとして説明できないのであれば、この心はいったい何に例えることができるだろうか。
「強がったまま終わった、もう戻れない昔の恋」
「優しかった祖父母と手をつないで歩いた坂道」
「グラウンドに取り残されたサッカーボール」
思いついた情景を並べてみても、どれも少し違う気がする。
切ない気持ちを表すような言葉が多く頭には浮かんでくるが、それだけではない。
夕焼けが見られるのは昼と夜の狭間。
昼間でも夜でもないどっちつかずのわずかな時間。
こみ上がる感情も、そんな曖昧さが幾重にも重なっているような感覚。
同じ景色を眺めていたとしても、浮かぶ感情は人によって異なるだろう。
それぞれの中に説明するための特別な「言葉」や「思い」がある。
完全に誰かと共感するということはおそらくできず、自分に当てはめて想像するしかない。
ただ、完全に説明できないからこそ素晴らしい。
どれだけ言葉を尽くしても説明しきれないこの「もどかしさ」こそが、この感動を表現するための賛辞なのだろう。

全く同じ瞬間など、この世には存在しない。
刻々と色は変化していく。
きっとあなたにも、説明できない心があるだろう。
誰かと完全に共感し合えないことは、決して悲しいことではない。
その心は、あなただけのもの。
それはきっと喜ばしいことだ。
KAWAI
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