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寝る前のおふとんはわたしにとって「秘密の遊び場」だという話。

子どものころからの悪癖なのだが、わたしは布団に入ってから実際に寝入るまでの間に「おふとんの中で遊ぶ時間」を設けてしまう。

本当は、目にも脳にも良くないんだと思う。

でもこの時間がたまらなく好きで、やめられないのだ。



■ 小学生編①~空想世界とモルジアナ~

小学生のころ、3年生くらいまでは20時には布団に入らなければならなかった。

しかし、わたしはそれがイヤでイヤでたまらなかった。もともとわたしは赤ちゃんの頃から「なかなか寝ない子」タイプだ。それに習い事がある日は夕方出かけているし、何もない日には自宅で17~19時にはピアノの練習をしなければならない。

そこから1時間で寝るなんて、どだい無理な注文というものである。

当時の寝室は一家そろってひとつの和室だった。父は仕事が忙しいので24時近くまでやってこない。母はたしか22時半ごろに寝ていたと思う。

つまり、布団に入ってから母が来るまでの間が、わたしの「こっそりお楽しみタイム」ということになる。

画像は写真ACより

当時、我が家では寝るときに常夜灯をつけっぱなしにしていた。そのかすかな灯りをたよりに、布団の中ではいろんなことをしたものである。

まずは読書だ。枕の下にこっそりしのばせておいたお気に入りの本を読む。わたしには昔から「気に入った本を何度でも飽きることなく繰り返し読む」という癖があったため、ストーリーはほとんど頭に入っている。少しくらい見えにくくても支障はなかった。

低学年のころにヘビロテしていたのは幼稚園で配布された「アリババと40にんのとうぞく」。イラストもストーリーも怖かったが、それが「夜、こっそり読む」というシチュエーションにぴったりで、ゾクゾクしながら繰り返し読んでいた。

今読んでも怖い。でもやっぱりモルジアナがかっこよすぎる。

自分だけの物語を妄想するのも好きだった。途中からは自由帳とペンを持ち込んで、お絵描きをする日もあった。マンガというよりは本の挿絵に近い、ワンシーンの絵を描くことが多かった気がする。

ひとりきり妄想を楽しんだあとは、全部枕の下へ。そうすると夢に出てくるという俗説に期待していたのもあるけれど、実際にはほとんどそれ関係の夢は見なかった。残念。


■ 小学生編②&中学生編~ラジオのおもひで~

高学年ごろからは、読書に加えてラジオを聴くようになる。父のラジカセを布団の中に持ち込んで、なるべく小さな音でコソコソ聴く。

ラジオは当時のわたしにとって、初めて触れた「オトナの娯楽」だった。

小学校に入ってからは習い事とピアノで忙しく、テレビも朝の「ズームイン!朝」以外はほとんど見ない生活をしていたわたし。パーソナリティのアップテンポで軽妙な語り口も、それまで「不良かオトナが聴くものだ」と敬遠していたポップス音楽が当たり前に流れてくる番組構成も、何もかもが新鮮で、俗っぽくて、刺激的だった。


ラジオ生活は、中学校の終わりまで続く。

当時の文化放送はいわゆる「アニラジ」、つまりマンガやアニメを題材にした番組に力を入れていた。ちょうど友人とマンガの貸し借りをするようになってヲタクと化したわたしにとって、これは幸運以外の何物でもなかった。

途中からはさらに夜ふかし度が高まり、深夜番組にも手を出し始める。

土曜日、24時半になると『大学受験ラジオ講座』が始まる。それまでは民放っぽい賑やかな番組だったのに、突然落ち着いた声でアナウンスが流れてくるのだ。

「みなさん、旺文社の大学受験ラジオ講座の時間が参りました。」

あぁ。その声だけで背筋が伸びる。布団の中だけれど。

もちろん内容はまったく理解できない。そもそもテキストだって持っていない。でも、いかにも頭の良さそうな先生たちの講義をなんとなく聴いていると、それだけで少し賢くなれるような気がして楽しかった。

3時になると『走れ!歌謡曲』。それまでの番組は「こんばんは」だったのに、ここから「おはようございます」に切り替わる。それをうとうとと聴きながら「わぁ、もう朝だぁ…」とどこか悦に入りながら寝落ちする…そんな中学生だった。

もちろん流石に毎日こんな生活をしていたわけではない。そこまで起きているのはせいぜい週に数回くらいだったと思う。


■ 高校生編~人生で一番「夜ふかし」を後悔した日~

高校生になってからはゲームもするように。といっても、妹が飽きて使わなくなった初代ゲームボーイを拝借して、中古屋で買ってきたよくわからないソフトで遊ぶ程度だった。

このゲームボーイのせいで、いや、もちろん自分自身が悪いのだが、わたしは大学受験のときにエラい目に遭うことになる。

当時持っていたソフトの中に「Wizardry外伝II ~古代皇帝の呪い~」が含まれていた。1992年発売とのことだが、わたしが中古屋でゲットしたのはおそらく97年ごろのことだろう。

Wizardryは一人称視点でマップをうろうろするタイプのRPGだ。

画像は GOZILINE様の記事より

何度も同じフロアを回っていると、だんだん何も見なくても決まったルートを歩けるようになってくる。当時のわたしはその単純作業感にハマっていて、寝る前にフロアをぐるぐる回ることを日課にしていた。

そして高校3年生、2月。大学受験の二次試験前夜のこと。

もともとの夜ふかし癖に加え、試験に向けて気持ちがたかぶり眠れなくなったわたしは、ついつい一晩中ダンジョンをうろつきまくってしまった。

音 つ き で。

ゲームボーイで遊んだことのある方ならわかると思うのだが、あのハードの音はシンプルがゆえに耳に残りやすい。

徹夜でダンジョンを放浪したわたしは、そのまま入試会場へと向かう。

のだが。

頭の中でBGMが流れて止まらない。

下手したら歩くときの「ザッザッザッ」という効果音まで聞こえてきそうな勢いだ。

何がまずいって、わたしがこの日受けていたのは「教育学部音楽専修の二次試験」。音楽のペーパーテストやピアノ演奏、歌唱のテストを受ける日だったのである。

正直ペーパーテストのときにはかなり邪魔をされた。ピアノや歌のときは気にならなかったが、廊下で順番待ちをしている間もやっぱりダンジョンのBGMが脳内で流れ続けていた。

普段から夜ふかししているせいで、ちょっと寝つきが悪くなるとすぐ徹夜になってしまう。「夜ふかし癖って、こういうときに悪影響を及ぼすことがあるんだなぁ」と、少しだけ反省したのを覚えている。

大学には無事合格したものの、試験本番のことよりその前の「BGMが…止まらない…ッ」という焦りの方が強く印象に残っている。


■ その後~ケータイ&スマホで寝落ち生活~

ここまでさまざまな夜ふかしっぷりを経験してきたわたしだが、大学入学と同時に携帯電話を買い与えられ、そこからはおそらく他の人とそう変わらない夜ふかしの仕方をするようになった。

メールでやりとりをしたり、Webサイトを見たり、ゲームをしたり。ガラケー後期からはめちゃコミックなどでマンガも読むようになった。

時が流れてガラケーがスマホに変わってからも、その生活は変わっていない。昨晩も姫野カオルコの「レンタル~不倫~」をスマホで開いて独特な文章のリズムに陶酔しながら寝落ちした。

この本と初めて出会ったのは20年以上前。読んだ回数は50を下らないと思う。幼稚園~小学生のころと行動パターンが変わっていないのが怖い。

■ 今までも、そしてこれからも。

思えばもう25年近く「ケータイを見ながら寝落ちする」という日課には変化がない。

絵本、自由帳、ラジオ、ゲーム、そしてケータイからスマホへ。

触れるデバイスこそ変化していったが、わたしはこれまでずっと、布団の中で「自分だけの遊び」を楽しんできた。

自分ひとりだけで楽しむというワクワクした秘匿性、そしてそのまま寝てしまってもいいのだという圧倒的な安心感。

「おふとんの中での遊び」には、他の娯楽には代えがたい独特な魅力があると思う。

10年後、20年後のわたしの「おふとんのお供」が何になっているのかは皆目見当がつかないが、それでも何らかの「遊び」を布団に持ち込む生活自体は変わらないのだろう。

今夜は何を読みながら寝ようかなぁ。

(了)


🌙本作は「ねむりの日エッセイコンテスト」応募作です。

今回睡眠にまつわる思い出をつらつら語ってみたのは、とあるコンテストに参加してみるためです。


📢『喫茶夜ふかし』様にて、「ねむりの日エッセイコンテスト」開催中!

一応参加テーマは「②私の睡眠ルーティーン」のつもり、です。

大学入試の、しかも本命の二次試験前夜にうっかり徹夜してしまったエピソード。今でも鮮明に覚えていて、いつか記事にしてみたいと思っていたところでした。

こうして形にする機会をいただけて嬉しかったです!ありがとうございました!\( 'ω')/

以前寄稿させていただいたエッセイもよかったらご覧ください✨


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