犬初心者、保護犬を引き取る
サンフランシスコに引っ越して、しばらくして犬を飼い始めた。市内を歩いていると、あちこちに犬を見かけるし、レストランでもアウトドアシートで犬連れのグループをよく見かける。無意識のうちに「犬、いいかもしれない」がすりこまれていたようだ。
ちょうど私とパートナーがサンフランシスコに引っ越して数ヶ月したころ、パートナーの幼馴染のダニエル(仮名)夫婦が、シェルターにいる保護犬の一時預かり(foster)をしていた。その話を聞くうち、ニューヨークに住む彼らに犬が飼えるなら、うちでも飼えるかも?と思ったのもあるかもしれない。
どんな犬が飼いたいかを考える
ところで、犬を飼う、というアイディアはわたしとパートナーにとって長期的で綿密に計画されたものでは全くなかった。
私は基本的に猫派なので、飼うなら猫かなあと20代の頃から漠然と思っていたのだけど、結果的にパートナーはわりと重めの猫アレルギーだったので、猫は選択肢から早々に外れてしまった。犬派のパートナーの希望により、じゃあどんな犬が飼いたいか?を話し合った。
欲望のままに理想の犬を考えるとこんな感じ。「大型犬で、でも毎日長時間の運動が必要なわけじゃなく、まったく攻撃的(Aggressive)じゃなくて犬にもこどもにも優しい」。
わがまま放題である。でも許してほしい。わたしたちは何も知らない犬初心者だったのだ(いまでもそうだけど。日々学びである)。しかし、わたしたちの良いところは、即行動に移すことだ。ということで、おおよそ「犬が飼いたい、できればおっきい犬がいい」くらいまで合意が取れたところで、保護犬のシェルターへと犬を見に行くことにした。
シェルターを周り、ちょっと挫折する
シェルター巡りと現実を知る
保護犬を集めたシェルターはサンフランシスコにいくつもあり、車で1時間以内の範囲で3, 4ヶ所をまわった。
クリスマスシーズンだったので、SF SPCA(サンフランシスコ動物虐待防止協会)などの大手の保護センターはペットを引き取る手数料を無料にしているところが多く、また訪問者も多かった。数日後に気になる犬を再度見に行ったらもう別の家族に引き取られてしまっていなくなっていた、ということも何度かある。
1週間ほどで4ヶ所ほどをぐるぐるしたあと、何頭か実際に会って触れあってみる。SF SPCAなどの大きなシェルターでは、一頭一頭ガラス張りの個室が与えられていて、訪問者は自由に犬と犬の基本情報を見ることができる。
触れあいたい場合は、カウンターで申し込み用紙に自分たちの基本情報と会いたい犬を書き、スタッフから簡単なカウンセリングを受けて、実際に大きな囲いに連れ出された犬と対面することになる。
パートナーは子どもの頃に犬が家にいて一緒に育ったが、わたしは犬を飼った経験が全くなかったのでそれも申告する。他には、財政状況(年間かかる費用の見込みを負担できるかについて聞かれるだけ)や家族構成、家に人がどれくらいいるかについて聞かれる。どちらかというと家でどれくらい犬の面倒を見られるのか、という具体的な点に重きをおいているようで、要点は抑えつつポジティブにどんな準備が必要かを教えてくれる。
さらに、わたしたちの状況を聞き取りしながら、今申し込んでいる犬がどんな犬か、彼らが知っている限りの性格や他の犬、子ども、人とのふれあい歴、しつけがどれくらいすんでいるか等について共有してくれ、申し込んでない犬についても1〜2匹すすめてくれたりする。
犬ド初心者のわたしは「最初は2時間おきにトイレに連れ出すか、庭に出してやるのか…新生児並だな…」「一部屋を破壊されてもいいように犬用に確保するしかないか…」など、腹をくくることができた。
SF SPCAで犬と対面
10分弱のカウンセリングが終わったら、いよいよ申し込んだ犬(あるいは、オススメされた犬)との対面だ。話しているうちにあまり神経質な犬は難しいかも…と思い、もともと申し込んだ犬と違う犬と対面することもあった。カウンセリングで「大型犬、ちょっと大変そうだな…」と思い初めていたけれど、どうせ買うなら大型犬がいいよね〜と二人で盛り上がっていたこともあり、対面はいつもワクワクした。
SF SPCAの大型の保護犬は、ピットブル(あるいはBulllyと言われる種類)やボーダコリー、ハスキーなどのミックスが多めだった印象で、そのうちの一頭と対面したときのことだ。スタッフさんオススメのピットブルミックスのサム(仮名)は、聞いていた通り人懐っこく、「おすわり」や「お手」などの基本的なコマンドはすでに習得していた。
スタッフさんに促されておやつをあげるとすぐに心を開いてくれ、尻尾をフリフリ!「おーーかわいいなあ」と言っていたのもつかの間、エキサイトしたサムはパートナーの顔に思いっきりジャンプ!大したことはなかったが、ちょっと唇が切れてしまった。その後もサムは勢いよく対面室の中を走り回り、スタッフさんとわたしたちが話している周りをぐるぐると猛スピードで周回していた。
この一件で、「大型犬が欲しい!」と言っていたパートナーは「やっぱり手に負えないかも…」となり、犬探しは方向転換を迎えた。
長い犬との出会い
どんな犬が飼いたいかを考え直す
いくつか大型のシェルターを周ったり、その間にもネットで見つけた地元の個人の動物保護活動家などと連絡を取ったり、合計6〜7頭の犬と対面してもあまりしっくりこず、わたしたちは最初の非常に楽観的な条件を変更することにした。
新しい条件はこんな感じだ。「中型か、大型でもとてもエネルギーが低く、Chill(のんびりした)な犬」。大型犬に未練が残っているが、現実的な修正を加えているのがわかると思う。
何頭もの保護犬にあって、自分はどちらかというと雑種の方がなんとなく好きだなと思っていたわたしは、このままシェルターで探したいけれど、大型のシェルターにいる犬は犬の飼育経験がしっかりある飼い主さんや郊外の広大な庭付きの家に住んだ方が幸せそうな犬も多いな…と思い始めていた。
そこに、パートナーが「車で1時間半くらいだけれど、別の街にNPOがやっているシェルターがあって、そこではSF SPCAのようにピットブルミックスばかりじゃないみたい。行ってみない?」と提案してきた。
まだクリスマス休暇の時期だったので次の日にはそのシェルターに行ってみることになり、そこでわたしたちは長い犬と出会うことになる。
長い犬との短い出会い
シェルターにつくと、そこはSF SPCAのような大型シェルターよりもはるかにカオスな空間で、あらゆる犬が吠えており、強烈な消毒剤の匂いが漂っていた。今思えば動物がそれなりにいる空間なので当たり前だとも思うが、やたらにクリーンで、子供時代のわたしより広い個室に住んでいる犬たちのいたSPCAに足を運んでばかりだったので、その違いに目眩がする思いだった。
休日だったので昼前に到着したときには、家族連れが何組かすでに来ていて、基本情報を登録するためのカウンターで情報を入力し、少し待つ。
その間にウェブサイトで見て会いたいと思っていた犬をチェックすることもできるし、まだウェブサイトに乗っていない犬のファイルを見ることもできる。さらに、スタッフと話しているうちに、まだこのシェルターに来たばかりでファイルにすら情報がないけど、とても気立てのいい犬がいるから会ってみますか?と聞かれた。
それが、今わたしの隣でのんびり寝ている長い犬との最初の出会いだった。
クレートから出されて連れてこられたその犬は、中型の雑種で、ちょっとしょんぼりして見えた。パートナーと二人でシェルターの外に少し散歩してみて、どんな感じかみて見たら、と言われ連れ出すと、玄関を出てすぐの木の下で特大の下痢。渡されたばかりのゴミ袋で片付ける。
特大のものをかました後は少し気分が良くなったのか、人懐っこくなった犬は勝手知ったるといった感じで周囲を嗅いでいる。パートナーとわたしは、他のシェルターで会った大型犬に比べると引っ張ったりもしないし、とても散歩がしやすい!と感動。
30分ほど周辺を歩き回り、シェルターに戻って「この子はとてもいい感じ。もし引き取りたいと思ったら、今後の手続きはどうなるの?」と聞いてみた。すると、最初に登録した情報をもう一度確認したあと、クレジットカードで引取料を払い、いまシェルターで食べているフード数日分とハーネスはそのまま持って帰っていいので、できれば同じフードを近くのペット用品店で買って行ってくれとのこと。
このまま連れて帰れるってこと?!と驚きつつ、手続きをすすめる。そしてそのまま車の後部座席に載せて、ペット用品店で家用のクレートと犬用の骨、おもちゃなどを買い込み、一緒に帰宅。
なにか大きな責任をとんでもないスピードで決めてしまったぞ…という感覚と、でもこれも縁だな、という不思議な感覚。犬は後部座席で少し不安そうにしていたものの、ペット用品店ではあらゆるスタッフになでてもらいテンションをあげ、好きなおもちゃを選んでもらって気を許したのか、その後も素直にうちに居着いてくれた。
長い犬よ、幸せになれ。
これから、長い犬との生活について少しずつ書いていきます。

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サンフランシスコには犬がめちゃめちゃいるという話。
SF SPCAの公式ウェブサイト。施設にいま保護されていて、すぐに引き取れる犬の一覧が見られる。みんなかわいい。
犬との日々を綴った記事を集めたマガジンを作りました。長い犬のその後が気になる方はぜひ読んでみてください。
