『 草ヒロ 』お題指令㉚ #せりふ三題噺 #エビフライ三輪車つらら
▼今週のお題
■セリフ
「はい、忘れ物」
■三題
・エビフライ
・三輪車
・つらら
*お世話になっております。宜しくお願い致します。(キラー)
*想い出
( 元・コードネーム・キラー 編 )
今回の指令・・・・セリフは『 はい、忘れ物 』
三題は『 エビフライ 』『 三輪車 』『 つらら 』。
任務を拒否した時点で身体に内蔵された《起爆カプセル》の
起爆スイッチが起動し瞬時に命が絶たれる・・・
どんな不満があろうと実行するしかない理不尽な任務。
偶然にも自由となった身で、当然、無視の対象だが・・・
今となっては、懐かしい指令だ。
***********
俺の稼業のポリシーは
悪人を悪と共に葬る 《 殺し屋 》だった。
そんな自分の過去も含めて、まるで嘘だったかのように
真っ当な暮らしをしている自分がいる・・・・
自分の犯した所業を背負ったままにしろ、
運命かのように出逢った母子と、ついには家族となった。
自分に舞い降りた幸運には感謝しかない。
当然ながら廃業し、本来の仕事だった鍵屋を続けている。
近頃では依頼も多いし、それなりに忙しい日々を送っている・・・
****************
その日は、
郊外の山間部にある廃屋の金庫を開けて欲しいという
依頼を受けての仕事となった。
「 はい、忘れ物 」
背中に、妻となった由衣の言葉が優しく触れる・・・・
弁当を受け取り、娘のユキと一緒の
笑顔の「いってらっしゃい!」の声に送られて出発した。
*******
数日前に降った雪が、まだ残っている山間部の廃屋での
仕事を終えた時には夕方になっていた。
軒先の・・・
名残り惜しむように夕陽を受けて光る《 つらら 》が美しい☆
帰り道の山道で車を降りた。
来る時に気になっていた《 草ヒロ 》を確かめるつもりだった。
*草むらのヒーロー、通称「草ヒロ」。
草むらや山中、空き地などに放置されている廃車を指す言葉。
・・・遺されていたのが奇跡に思えるほどの古い車種だった。
運転席で、腕一杯に広げて持つようなゴツい・・・ハンドルバー?!!
高度成長期を迎える前・・・
昭和30年代以前の《 三輪車(三輪自動車)》だった。
不意に遠い記憶が呼び覚まされた☆
俺の子供の頃にも、すでに見かけなくなった
古い三輪車に乗せてもらった記憶。
・・・あれは誰だったろう?
「もう、こんな車に乗ってる奴はいねぇが、俺は・・・
この車が好きなんだ。いいべや?このハンドル!!」
声の大きな おじさん に乗せてもらった三輪自動車。
なんか・・・・とてもカッコよかった おじさん の記憶。
「・・・・いいか、ボウズ! ボウズが大きくなったら・・・・
自分に似合う車を 見つけろや!!」
・・・・知らない おじさん の、そんな言葉まで思い出した。
運転席は、さすがに荒れ放題で乗り込む余地はなかった。
*****
自分の車の運転席に戻り、食べそびれていた弁当を開けた。
おにぎりと、おかずは豪勢な《 エビフライ 》だった。
・・・幸せの味を噛みしめる ☆
草ヒロとの出会いも偶然だったが、
今は妻と娘になった二人との出逢いが 浮かぶ・・・・
北国のとある街角で、雪の降りしきる中、
シャッターの閉まった店先で
ただボンヤリ立ち竦んでいた母子・・・・☆
娘にとって、知らない《 おじさん 》だった俺は
今では《 おとうさん 》になった。
・・・・残照が一帯を紅く染めていた。
一瞬だったが、懐かしい幼い頃の記憶が甦り・・・
不意に、娘のユキ(4歳)へのお土産に
《 三輪車 》を買うことを決めていた。
《了》
( 何故か、指令と共に。)
*このお話はフィクションです。
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