「介護時間」の光景④「林」と「紙」 4.15
今から13年前の日のことです。
1999年から、2007年まで、母と義母(妻の母親)の2人を、妻と一緒に介護していました。その頃は、母の入院する病院に毎日のように通い、帰ってきてから、義母の介護をする、という毎日でした。やたらと疲れて、気持ちも追い込まれて、病院と自宅以外の世界がないかのように思っていました。
ただ、その単調な繰り返しの時間の中で、日常の小さな風景の変化に、今よりもはるかに敏感になっていたと思います。それは、家族介護者の独特の緊張感があってこそだと、思います。
(この頃の詳細は、介護離職して、10年以上介護をしながら、50歳を超えて臨床心理士になった理由④を読んでいただければ、と思います。クリックして、読んでいただければ幸いです)
今から、13年前の同じ4月15日に見た光景です。
(その日のメモを一部修正しています)
林
病院のそばの林。
ものすごくちっちゃい花びらみたいなものが、道路に落ちてきていたのが見えた。
よく見ると、近景・中景・遠景と、歩いている私から見て、3等分されたような空間の中に、同時に、それぞれ3つのちっちゃいものが落ちてきた。
通り過ぎる時に、道路に落ちているのを見たら、名前も知らない木の、中途半端なプロペラみたいな形をしていた…たぶんタネだと思う。
それが、同時に、落ちてきている時は、そこの空間が何か特殊なものにも、ちょっと感じた。
(2007年4月15日)
5月に母が亡くなってしまうので、それまであと1ヶ月の時点で、さらに追い込まれていたようで、今から考えると、より、周囲のことに敏感になっていたように感じます。この頃のメモを見ると、1日のうちにいくつも記録しています。以下も同じ4月15日でした。
紙
電車に乗る。
座席に座る。床に小さな紙くずが落ちている。
よじれた上に、ペシャンコになっている。
手足と頭があるようで、夜中に家の玄関で何度か見たヤモリの形に似ていた。
(2007年4月15日)
それから13年が過ぎて、今日(2020年4月15日)は、とてもいい天気でした。
庭先の、これから、ふくらみそうなビワの実が緑で、きれいに見えました。
昼前に、洗濯物を干していたら、力強い足音が聞こえました。
うちの庭からは、元が水路だった、人がすれ違うのもギリギリの狭い路地が、向こう側へ、まっすぐ伸びているのが見えます。
そこを、走ってくる青年がいました。かなりのスピードで走って、路地の出口付近まで全力で走ってきて、スピードを急速にゆるめています。
それから、Uターンして、元の路地へ、ゆっくりした走りで、戻っていきます。だんだん姿が小さくなります。向こう側の路地の出口まで、たぶん、40メートルくらい。そこまで移動してから、こちらに体の方向を変え、準備運動をするように手足を動かしたあと、また走り始め、少しずつスピードがあがり、路地の半分を過ぎたあたりで、ほぼ全力の走りになるようでした。
足音が強く、スピードも速く、上下が黒っぽいアスリートの格好と体型で、とても気持ちいい姿でした。耳には音楽を聴くためか、イヤホン(?)を装着しています。
そのトレーニングを、何度も繰り返しています。
この路地は、普段は、幼稚園に面しているため、園児が出入りしていることが多いのですが、今、幼稚園は休園のようで、声も聞こえず、本当にほとんど誰も通らない路地になっています。そこはクルマも通らず、考えたら、トレーニングには適しているかもしれませんが、今のような状況でなければ、その青年も、そこを走らなかったはずです。そして、こちらも、この路地が、走るのに、結構向いていることに気がつかないままだったと思います。
ずっと気持ちも体も縮こまるような状況の中で、本当に久しぶりに、力一杯エネルギーを発散している人を見ました。自分の肉体的な全力をつくし、さらに、力を伸ばそうとする意志を感じさせてくれて、その姿は、本人は、意図していないと思いますが、爽快さを、強く伝え続けてくれていました。
路地を、人が通る時は、通り過ぎるまで待ったり、御老人とすれ違う時は、走るスピードをあげないで、こちらまで走ってきたりしていました。
何十分かたった頃、青年は、向こう側にゆっくり走って行って、さらに、向こう側へ走っていき、もっと小さい姿になって、そのうちに見えなくなりました。
次回は、「介護時間」の光景⑤こいのぼり です。
ここをクリックすると、リンクしています。
(他にも介護に関して、いろいろと書いています↓。もし、よろしかったら、クリックして読んでいただければ、幸いです)。
「介護books」 ① 介護未経験でも、介護者の気持ちを分かりたい人へ、おすすめの2冊
#介護相談 #臨床心理士 #日記
#公認心理師 #家族介護者への心理的支援 #介護
#心理学 #自己紹介
いいなと思ったら応援しよう!
この記事を読んでくださり、ありがとうございました。もし、お役に立ったり、面白いと感じたりしたとき、よろしかったら、無理のない範囲でサポートをしていただければ、と思っています。この『家族介護者支援note』を書き続けるための力になります。
よろしくお願いいたします。
