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「介護の大変さを、少しでもやわらげる方法」㊳「マインドフルネス」

 いつも読んでくださっている方は、ありがとうございます。
 おかげで、書き続けることができています。

 初めて読んでいただいている方は、見つけていただき、ありがとうございます。

 私は、臨床心理士/公認心理師越智誠(おちまこと)と申します。家族介護者の心理的支援を仕事にしています。


家族介護者の負担

 まるで、コロナ禍が明けたかのように言う人も増えてきたようになりましたが、ご高齢者に関わることが多い家族介護者の方にとっては、実際はコロナ禍が完全に終息したわけではありませんし、それほど不安の大きさが変わっていないかもしれません。

 それに、もともと、介護が始まってから、いつ終わりが来るか分からない毎日が、ずっと続いているかと思います。

 その気持ちの状態は単純ではなく、説明しがたい大変さではないかと推察することしかできないのですが、それでも、ほんの少しでも負担感や、ストレスを減らせるかもしれない方法は、お伝えする努力はしていきたいと考えています。

介護の大変さを、少しでもやわらげる方法

 時間的にも余裕がなく、どこかへ出かけることも出来ない場合がほとんどだと思いますが、この「介護の大変さを、少しでもやわらげる方法」シリーズでは、お金も時間も手間もなるべくかけずに、少しでも気持ちを楽にする方法を考えていきたいと思います。

 今回は、特に介護者の気持だけに関わることではないのですが、臨床心理学の分野のことでもありますし、一度はご紹介しようと思いました。

 説明しなければいけない前置きが長くなりますので、もし、「介護の大変さを、少しでもやわらげる方法」を、早くお知りになりたい方は、「インフォーマルなマインドフルネス」から読んでいただければ、と思っています。

認知行動療法

 もしかしたら、一度は聞いたことがあるかもしれませんが、「認知行動療法」という心理療法があります。

 認知行動療法は簡単に言えば、「認知」と「行動」にアプローチすることで、辛かったり苦しかったりする気持ちと折り合って、前に進めるよう手助けする心理療法です。『認知行動療法は考え方(認知)を“変える”方法だ』『認知行動療法でネガティブ思考からポジティブ思考に変えよう』などと言われることがありますが、実際は“考え方を変える”心理療法ではなく、“考え方が変わる”という表現が的確です。

(『JMAメンタルヘルス研究所』より)

 そして、現状では、特にアメリカやイギリスで、盛んに用いられている心理療法だと言われています。

認知行動療法は、Aron Beckというアメリカの精神科医によって開発されました。そのため、アメリカにおける心理療法の中心は認知行動療法である、といっても過言ではありません。アメリカでは、1990年代前半から従業員のメンタルヘルスの一次予防に認知行動療法を取り入れて、その効果検証がなされてきました。

その結果、認知行動療法が「心理的な苦痛の減少」「心理的リソース(レジリエンス*や楽観性など、心理的側面での個人の力)の上昇」「ワークライフの質の向上」「従業員の不満の低下」などに効果があることが示され、それ以降、認知行動療法はアメリカ企業におけるストレスマネジメントのツールとして活用されています。

(『JMAメンタルヘルス研究所』より)

 そして、日本でも盛んに治療として採用されるようになりました。

 心理士(師)であれば、認知行動療法を専門にするかどうかは別としても、そのことを全く知らない人はいないと思います。

認知行動療法 第3世代

 そして、認知行動療法は、気がついたら(というのは自分の勉強不足でもあるのですが)、第3世代と言われるような方法が注目されるようになっていました。

 専門家が、このようにわかりやすく説明してくれています。

ここで認知行動療法の歴史的展開に目を転じますと、その端緒はパブロフの条件反射学説、学習理論に基づいた行動療法に始まります。 これを第一世代とすると、上述のように認知に焦点をあて認知も含めて行動を操作しようとするのが第二世代の認知行動療法といわれます。

そして、昨今この第二世代を超えてゆこうとする手法や考え方が台頭してきており、第三世代の認知行動療法といわれるようになりました。 その代表的な手法の一つとしてマインドフルネス認知療法があります。

その代表的な技法はマインドフルネス瞑想です。 マインドフルネス瞑想は、原始仏教で実践されていた瞑想で2500年以上の歴史があるといわれています。現在でもミャンマーなどの国々で実践されています。しかし、日本に伝わった仏教が大乗仏教だったため、その技法については最近まであまり知られていませんでした。

(『さくまクリニック』より)

 認知行動療法は、それまで認知と行動に焦点を当ててきたように見えたので、第3世代と言っても、急に感覚的なものを中心に扱おうとする動きは、その方法を専門に持たない人間からは、不思議に思えました。マインドフルネスは、認知行動療法というには、あまりにも違って見えたからです。

 ただ、それは第2世代の真剣な取り組みの中から見出されたものだったのは、間違いないと思います。

マインドフルネスというのは、意識を常に中心対象(身体感覚)に集中させようとすることにより、何かにとらわれ移ろいやすい心を、思考へのとらわれから解放し、事実を、今の瞬間をあるがままに受容する強い心を作ることを目指す心のトレーニング法なのです。

(『さくまクリニック』より)

 それは、今や、認知行動療法の第3世代ということは知らなくても、ビジネスパーソンにも広く行われるようになっているのですから、普遍的な方法でもあるのかもしれません。

インフォーマルなマインドフルネス

 今回、「介護の大変さを、少しでも和らげる方法」として、マインドフルネスを紹介しようと思ったのは、ゆっくりと時間をかけるフォーマルなマインドフルネスだけではなく、インフォーマルなマインドフルネス、という方法を知ったからでした。

 まずは、マインドフルネスのことが、当然ながら定義されています。

 専門家のコンセンサスが得られたマインドフルネスの定義の一つに「開かれた姿勢で、受容し、好奇心のこもった目指しを向けつつ、目の前の体験に注意を向け続ける(Bishop et al,2004)」がある。マインドフルネスでは、周囲の出来事(誰かと話をするなど)か、内面の出来事か(思考、感情、身体、心の感覚など)によらず、「今ここ」で起きていることに注意を向ける。そして、何が起きていても決めつけない態度でそれを体験しようとする。

(『認知行動療法実践ガイド』より)

 この基本については、今は広く知られるようになったという感触がありますが、フォーマルと、インフォーマルの区別については、恥ずかしながら、初めて聞いたように思います。

 マインドフルネスの実践にはフォーマルとインフォーマルの2種類がある。フォーマルなマインドフルネス瞑想では、瞑想のための時間をしっかり取り(5~60分)、静かな場所で、特定の体験(呼吸、身体の様々な部分、動作、思考、感情、周囲の様子、音など)に注意を向ける。対象から注意が離れてさまよったことに気づいたら、それをありのままに受け入れ、体験へと注意を向け戻す。フォーマルな瞑想は、初めは5分程度の実践から始めるのがよい。多くのクライエントで、フォーマルなマインドフルネス実践は短いほうが継続する見込みが高くなる。
 インフォーマルな実践も勧められる。マインドフルネスの原則を日々の体験に適用して、その瞬間にしていることや起きていることに心を開き、受容し、決めつけをせず注意を向けることである。心が未来や過去にさまよい、それ以上考えても役に立たないときは、注意を現在の体験へと連れ戻す。また、望まない思考や感情や感覚に不快感を覚えたら、その不快感そのものに注意を向けて、それをコントロールしようとするのではなく、そのままにし、今までしていた作業に注意を戻す。

(『認知行動療法実践ガイド』より)

 もし余裕があったら、このフォーマルなマインドフルネスを習慣化できればいいのかもしれませんが、毎日、介護をしているとすれば、それだけでおこなうのは難しそうですが、この文章の後半のインフォーマルな実践ならできるように思いました。

 例えば、表現としては繰り返しになり、申し訳ないのですが、この専門書の著者は、インフォーマルなマインドフルネスに対して、このように書いています。この方が、より具体的にイメージしやすいかもしれません。

 インフォーマルなマインドフルネスも日中様々なタイミングで行う。食べながら、歯を磨きながら、休憩を取りながら、などである。自然を眺め、感覚を通じて日々の瞬間を体験すると、仕事や生活のストレスから離れ、周りの環境を味わうことができるようになる。心がさまよっていることに気づいたら、その瞬間の体験に注意を連れ戻す。ほとんどどんな体験に対してもマインドフルネスになれるものである。マインドフルネスに散歩できるし、運転できるし、課題や雑用もこなせるし、セルフケアの活動ももちろんできる。

(『認知行動療法実践ガイド』より)

 目の前の体験であれば、もしかしたら介護中にも可能かもしれません。それが難しくても、介護の合間の数分でも、インフォーマルなマインドフルネスによって、少しでも気持ちが楽になる可能性はあります。

 インフォーマルな実践を5分ほどしてみましょう。窓の外を見たり、絵画を眺めたり、散歩をしたり、その他、目の前の活動に専念しましょう。五感を使って気づきを広げ、その瞬間の体験を受容し、開かれた態度で、目の前の体験に関心を向けます。心がさまようたびに、自分を批判せずに注意の焦点を目の前の体験へとそっと戻します。

(『認知行動療法実践ガイド』より)

 短い時間でも、インフォーマルなマインドフルネスの実践によって、少しでも気持ちが楽になったら、幸いです。もしよろしかったら、今日からでも、行うことが可能な方法だとも思います。

 もし、この方法が合わない場合は申し訳ないのですが、お手数ですが、他のやり方も試してみていただければ、幸いです。


(他にも介護のことについて、いろいろと書いています↓。よろしかったら、読んでもらえたら、うれしいです)。

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越智誠  臨床心理士/公認心理師  『家族介護者支援note』  この記事を読んでくださり、ありがとうございました。もし、お役に立ったり、面白いと感じたりしたとき、よろしかったら、無理のない範囲でサポートをしていただければ、と思っています。この『家族介護者支援note』を書き続けるための力になります。  よろしくお願いいたします。