短編ミステリ「前世記憶の殺人者」(6)(創作大賞2024・ミステリー小説部門応募作品)
(6)
翌日の夕方。
カウンセリングルームに入ると、真希那が神妙な面持ちでソファーに座っていた。
美加と漣は、前回来たときと同様、二人並んで彼女の正面に腰を下ろす。
真希那が漣と視線を合わせた。
「これから漣くんの前世記憶が本物だということを証明したいと思いますが、そのためには、漣くんへの聞き取り調査を追加で行う必要があります」
名前を呼ばれた漣は、真希那の顔をじっと見据えている。
昨日、家に帰ってきたときには漣はすでに寝ていたし、今日は幼稚園の送迎でずっとバタバタしていたので、いまだに前世記憶の話を漣と共有することができていなかった。
意味も分からず連れてこられた漣は、最初こそはしゃいでいたが、真希那と会ってから一気に大人しくなっている。
真希那が何を聞いてくるのか、美加には想像もつかなかった。漣の前世記憶が本物だとしたら、葛木亮が菊地琢馬を海に突き落としたという話も実話だったということになる。しかし葛木にはアリバイがあり、菊地琢馬を殺すことはできないと、昨日の夜に稲本志保から聞いたばかりだ。漣への聞き取りで、このアリバイを崩そうというのだろうか。
緊張感が高まる中、真希那が丁寧な口調で切り出した。
「漣くんの前世記憶が本物であることを証明するカギは、前世の人物が結婚の約束をした女性の正体だと私は考えています」
「え? そっち?」
読みが外れて変な声が出た。真希那は美加を睨みながら咳払いをした。
「――私の仮説が正しければ、その女性の正体が分かると同時に、前世記憶が本物であると証明されます」
「でも、そういう女性はいなかったですよね」
志保の話では、菊地琢馬に結婚の約束をした女性はいなかったということだった。
「いえ。前世記憶を引き継いだ漣くんがいたと言うからには、実際いたはずなんです」
「結婚の約束をした女性が誰か、見当はついているんですか」
美加の問いかけに、真希那は「はい」と答えた。
「見当はついています。ですが、特定するには漣くん自身の証言が必要なんです」
「そうは言っても、漣はその女性の名前をどうしても教えてくれないんですよ」
「大丈夫です。私が聞いてみます」
真希那は大きく息をした後、身体ごと漣の方を向き、「結婚の約束をした女の人の名前って、漣くんの口からは絶対に言えないんだよね?」と尋ねた。
漣が「そうだよ」と返す。真希那はなぜか満足そうに頷き、続けて質問をした。
「前の漣くんが『逢いたい』っていう映画に出ていたのは間違いない?」
「うん、出てた。うそじゃないよ」
「その映画に主役で出ていた役者さんの名前は分かる?」
「滝浦くん」漣からすぐに答えが返ってくる。
間髪入れずに真希那が聞く。
「じゃあ、その映画のヒロイン役の女優さんは誰かな?」
漣はすぐに口を開きかけたが、次の瞬間、言いたくても言えないというような、悩ましげな表情をした。
「もしかして、分からない?」
首をかしげる真希那に、漣が頬を膨らませる。
「誰かは分かるよ。ただ……名前を言いたくないんだ」
「何で言いたくないの?」
漣が下を向き、無言を決め込む。真希那はそんな漣をさらに追求する。
「なぜ漣くんがヒロイン役の女優さんの名前を言いたくないか。それはきっと、ヒロイン役の女優さんこそ、前の漣くんが結婚の約束をした女性だからだよね? 前の漣くんとはあまりに身分が違いすぎるから、内緒にしないといけなかったんでしょ?」
「えっ、そうなの?」
美加が驚いて漣を見る。漣は恥ずかしそうに下を向いたままだ。これでは真希那の指摘を認めているに等しい。
ヒロイン役の女優である稲本志保は、菊地琢馬のことを柄の悪い男と表現し、しつこく言い寄ってきたので事務所から厳重注意をしたと言っていた。結婚の約束をしていたような仲には到底思えなかったけど、無名の男と付き合っているという噂が広まったら女優人生が終わるとも言っていたから、もしかしたら、志保の菊地琢馬を嫌う表現はすべて演技で、本当は誰にも知られないように付き合っていたのかもしれない。そうだとしたら、稲本志保にすっかり騙されたということになる。
「ほら、お母さんもその女性が誰か、見当がついてるみたいだよ。誰にも言ってはいけないって約束だったのかもしれないけど、もう昔のことなんだし、他の人には広めないから、私たちにだけでも教えてくれないかな」
漣の真っ赤な顔が真希那の方を向く。
「……他の人には絶対内緒だよ?」
「約束する」
「あのね」観念したように漣が言った。
「ヒロイン役は……、結婚の約束をしていた女の人は――小室真紀子さんだよ」
※
真希那から二人で話がしたいと申し出があったので、漣をカウンセリングルームから退室させることにした。受付の女性に手を引かれ、漣が部屋を後にする。
「映画のヒロイン役が小室真紀子って、どういうことですか?」
部屋のドアが閉まるなり、美加は真希那に詰め寄った。
小室真紀子が何者かは理解している。昭和の名優であり、葛木亮の母親だ。美加が疑問に思っているのはそこじゃない。
「ヒロイン役は、稲本志保じゃないんですか?」
想定していた質問だったのだろう。真希那がタブレットで映画情報を見せてくる。
「映画『逢いたい』でヒロインを担当した女優は二人いるんですよ。一人は三十五年前に作られた葛木亮主演の映画でヒロインを担当した稲本志保さん。もう一人は、今から七十年前に作られた坂巻史郎主演の映画でヒロインを担当した小室真紀子さんです」
そういうことかと納得した。葛木亮が主演した映画は、彼の両親である坂巻史郎と小室真紀子が共演した映画のリメイクだったことはディレクターの成田から聞いていた。そのオリジナル版のヒロイン役が小室真紀子だったというわけか。確か稲本志保が「葛木亮の両親とは立場が同じ」と言っていたから、きっとそうなんだろう。
美加が疑問を口にする。
「待ってください。ということは、漣の前世は同じ『逢いたい』でも、三十五年前のリメイク版ではなく、七十年前のオリジナル版の方に出ていたってことになりますよね。それってつまり、漣の前世は菊地琢馬じゃないってこと?」
困惑する美加に、真希那が順を追って説明する。
「私も漣くんの前世は菊地琢馬さんだと信じていました。なぜなら、漣くんはテレビに映る葛木亮さんを指差して『この人に殺された』と言っていたからです。このときすでに、前世記憶の殺人者が葛木さんであることは私たちの共通認識であり、漣くんの前世が殺人者の親友だったという情報から、菊地琢馬さんを前世の人物だと思い込んでいました。
ところが稲本さんによると、漣くんの前世記憶と菊地琢馬さんの実態に食い違うところがたくさんありました。漣くんは殺されたと言うけれど、菊地琢馬さんは葛木さんに殺されていません。また、漣くんは結婚を約束した女性がいるということでしたが、菊地琢馬さんにそのような女性はいないようです。それに元々、葛木さんと菊地琢馬さんは親友ではなかった。ここまで特徴が異なれば、前世の人物が菊地琢馬さんではないことは明白です。
では前世の人物はいったい誰なのか。これまでの漣くんの発言を思い返したとき、ある事実に気づきました。
漣くんは、これまで一度も葛木亮さんが前世の人物を殺したとは言っておらず、親友の滝浦くんが殺したと一貫して言っていました。それに漣くんが指差したのは現在の葛木亮さんではなく、若い頃の葛木亮さんの姿だけだったんです。
美加さんが『この人は葛木亮という俳優さんだよ』と説明しても、漣くんは頭を振って否定していたんですよね。これらから分かるのは、漣くんは滝浦という名前の、葛木さんの若い頃の顔に似ている男性を指差したということです。若い頃の面影が似ている、と言い換えてもいいでしょう。該当する方が一人いませんか? その人こそ、前世記憶の殺人者です」
美加は「そうか!」と大きな声を出した。面影が似ているといえば、この人しかいない。
「前世記憶の殺人者は、葛木亮の父、坂巻史郎だったんですね!」
真希那が頷く。
「漣くんは若い頃の葛木さんの映像を見て若い頃の坂巻史郎だと勘違いし、親友の滝浦くんだと言いました。坂巻史郎は葛木さんのお父さんなので、本名は同じ滝浦です。顔は親子ですから似ていて当然。つまり漣くんは最初から、前世の人物は若い頃の坂巻史郎に殺されたんだと、私たちに伝えていたんです」
美加も夫も、漣の行動を見て前世は葛木亮に殺されたのだと勘違いしていた。そして、勘違いした情報をそのまま真希那に伝えたことで、彼女まで勘違いさせてしまったのだ。これがなければ、もっと早く坂巻史郎の存在に気づいていたかもしれない。
「漣くんは映画『逢いたい』に出ていたことを認めていましたが、前世の人物の親友が若い頃の坂巻史郎であるなら、前世が出ていたのは必然的にオリジナル版の映画ということになります」
真希那は紙に印刷された資料を出してきた。美加が一部受け取る。
「――昨日の夜、成田さんに再度調べてもらいました。今回は、坂巻史郎の親友であり、『逢いたい』オリジナル版で坂巻史郎と共演し、撮影期間中に亡くなったキクチという人物についてです。速報版ですが、必要なことは確認できました」
再調査の依頼を受ける条件として、成田は半年後に放送される超常現象特番への真希那の出演を持ちかけてきたらしい。それが影響しているのか分からないが、とても辛そうな表情で、真希那が資料を読み上げる。
「――該当者はいました。菊地新喜という男性で当時二十五歳。いわゆる大部屋の役者で、同郷の坂巻史郎とはもともと仲が良かった……とのことです。状況から考えれば、漣くんの前世は菊地荒喜さんである可能性が高いでしょう」
「新喜って、もしかして、稲本志保さんが言っていた、あのアラキのことですか」
「そうです。それに、成田さんに追加で調査してもらってますが、おそらく菊地琢馬さんの親戚に当たる方だと思います」
葛木亮と菊地琢馬がホテルで口論をしたとき、菊地琢馬の口から「アラキのおじきのことを忘れたとは言わさない」という発言を聞いた稲本志保は、おじきという響きから、アラキをヤクザの名前と捉えていたが、実際は本当のおじき、つまりアラキ伯父さんのことを指しているのではないか、と真希那は推測したそうだ。
「菊地新喜さんも映画の撮影期間中に岸壁――菊地琢馬さんが亡くなった場所と同じ岸壁から海に落ち、事故死として処理されています。ですが、漣くんの前世が菊地新喜さんであるとするなら、彼は坂巻史郎によって海に突き落とされ、殺害されたと考えられます。警察が他殺の痕跡を見逃したのかもしれませんし、もしくは何かしらのもみ消し工作が行われたかのかもしれません。昭和の半ばといえば、まだ芸能興業をヤクザの仕切りで行っていたと噂される時代ですから、あり得ない話ではないでしょう。
そして菊地琢馬さんは、叔父の死が事故ではなく坂巻史郎の手によるものであることをどこからか嗅ぎつけ、その情報を使って葛木さんを脅し、映画の役を得ていたのではないでしょうか。『アラキとの繋がりが公になったら、お前もこの映画も終わりだぞ』と言っていたのがその根拠です。
叔父が亡くなった岸壁に葛木さんを呼び出そうとした菊地琢馬さんでしたが、葛木さんは稲本さんの部屋にいて来ることはなく、最後は泥酔した状態で誤って海へ転落してしまいました。これが、菊地新喜、菊地琢馬両名の死の真相なのではないでしょうか」
美加は大きく息を吐き出した。
漣の前世は菊地琢馬の叔父で、七十年前に亡くなった菊地新喜という大部屋俳優だったという。想像が追いつかないというのが正直なところだ。
すべてを理解するの追々でいい。まずは気になるところ、今の話で触れられなかった部分について、美加が疑問を口にする。
「漣の前世が菊地新喜という男だったとして、結婚を約束した女性が小室真紀子だということは、漣に聞く前に目星はついていたんですか」
真希那は少し考えた後、「はい」と肯定した。
「大部屋俳優である菊地新喜さんが結婚の約束をしていた女性は誰だろうと考えたとき、気になったのは、その女性の名前を公言できない理由は何かということです。最初に思いついた理由は、さっき漣くんにも言ったとおり、身分違いの恋でした」
成田の資料には、菊地新喜のデータだけではなく、小室真紀子の生い立ちやキャリアも記載されていた。
「当時、ヒロイン役の女優といえば、それは高嶺の花でした。特に小室真紀子さんは、いくつもの映画でヒロインを演じ、歌を歌えば大ヒット、化粧品会社のイメージガールとしても活躍するなど、一番勢いのある若手女優でしたから、男性とのスキャンダルは絶対に許されなかった。ましてや大部屋俳優が手を出せる女性ではなかったんです。身分違いの恋だとしたら、相手はこの人だろうと思いました」
資料によると、小室真紀子は裕福ではない家庭に育ったらしく、庶民的な感覚を持っていたという。菊地新喜のことを、家系や肩書きではなく、人となりを見て好きになったとしても不思議ではない。
互いに惹かれ合った二人は、スキャンダルを恐れ、隠れて交際を続けた。
その後、結婚の約束をする二人であったが、菊地新喜の死をもって永遠の別れとなった。
漣の前世記憶によると、坂巻史郎が菊地新喜を海に突き落として殺害したということになるが――。
「あれ? ちょっと待ってください」
美加がとんでもないことに気づく。
「坂巻史郎が菊地新喜を殺したとして、でも実際は表沙汰にならず事故死として処理されたんですよね。小室真紀子にとっては最愛の人を不慮の事故で亡くしたということになるわけで、大きなショックを受けたはず。そして、傷心した小室真紀子の一番近くにいたのは、後に結婚することになる坂巻史郎だった。えっと、これってもしかして――」
美加は真希那に向かって思いついたことを吐き出した。
「坂巻史郎は、小室真紀子を奪うために菊地新喜を殺したということですか?」
真希那は厳しい表情で「私もそう思います」と言った。
「後に結婚するくらいですから、もともと坂巻史郎は小室真紀子さんのことを気に入っていたのでしょう。ですが夜の岸壁で、親友の菊地新喜さんが彼女と結婚を前提に付き合っていることを知ってしまったのではないでしょうか。菊地新喜自身が親友にだけはと話したのかもしれません。最後の会話を漣くんが覚えていないので、これは推測です。
祝福されるかと思ったら坂巻史郎の反応は真逆でした。漣くんは、話の途中で急に怒り出したと証言しています。これは、坂巻史郎が嫉妬に狂ったと考えるのが妥当です。そして坂巻史郎は、菊地新喜さんを夜の海に突き落としました。殺害する意図があったかどうかは分かりませんが、結果的に菊地新喜さんは溺死してしまった。これこそが美加さんや漣くんが知りたかったこと。漣くんの前世が殺された理由でしょう」
呆気にとられる美加をよそに、真希那がこれまでに得た証言を並べていく。
①漣の前世はキクチという名前である。
②キクチにはタキウラという名前の親友がおり、映画『逢いたい』に一緒に出ている。
③キクチは映画撮影期間中にタキウラに海へ突き落とされ殺された。
④キクチが結婚の約束をしていた女性は小室真紀子である。
⑤小室真紀子がいる時代の映画『逢いたい』に出演しているタキウラは、坂巻史郎のことである。
⑥キクチが坂巻史郎と二人で話をしていると、坂巻史郎は急に怒り出して、キクチを海に突き落とした。
⑦坂巻史郎の親友は菊地新喜という名前であり、映画撮影期間中に岸壁から海へ転落し、死亡している。
次からは推測だ。
⑧坂巻史郎は、後に結婚する小室真紀子のことを以前から好いていた。
⑨坂巻史郎は小室真紀子と付き合っている菊地新喜に嫉妬した。
⑩菊地新喜は、坂巻史郎によって殺された。
「ここまで状況証拠が揃えば、あと私にできることは一つだけです」
真希那が声高に宣言した。
「私は前世記憶の専門家として、漣くんの前世が菊地新喜さんであると特定します!」
「なんてこと……」
美加の口から声が漏れた。真希那が予告したとおり、結婚の約束をした女性が判明したら、前世が誰かも、なぜ殺されたのかも、全てが明らかになった。
それだけじゃない。昭和の名優同士による結婚の陰に、殺人というとんでもない秘密が隠されていたことも明らかになってしまった。これが事実なら、芸能史に残る大スキャンダルである。
先走る美加を真希那がたしなめた。
「私はこれまでに得た証言や積み重ねた推測を基に、漣くんの前世を菊地新喜さんだと特定しましたが、坂巻史郎が菊地新喜さんを殺害したかどうかについては、物的証拠があるわけではないので、断定することはできません」
成田の資料によると、坂巻史郎は三十年前に六十二歳でこの世を去っている。小室真紀子は葛木亮を生んだ十年後に白血病で亡くなっていた。まだ三十八歳の若さだった。
当事者は全員鬼籍に入っている。七十年前の坂巻史郎の犯行を立証する物的証拠が、これから出てくるとはとうてい思えない。真相に繋がる唯一の情報は漣の前世記憶だが、「前世記憶が証拠です」なんて言ったら、世間から笑われるのがオチだ。
「成田さんも残念がっていました。テレビのネタとしては面白いが、実際に取り上げたら、葛木亮さんから名誉毀損で訴えられるって」
前世記憶だけでは、殺人者である坂巻史郎の罪を問うことはできないのだ。芸能史に残る大スキャンダルは、表舞台に出ることなく封印されてしまった。
それでも美加は、真希那による調査の結果にとても満足していた。もともと美加の望みは、前世が誰なのか、なぜ殺されなければならなかったのか、という息子の疑問を晴らしてあげることだった。真希那が特定してくれたことで、目的は十分果たしたといえる。漣にとっては辛い真相かもしれないが、丁寧に説明すれば理解してくれるだろう。
心残りがあるとすれば、漣が会いたいと願っていた小室真紀子がすでに亡くなっているということだが、これは仕方がないことだ。残念だけど諦めてもらうしかない。
喜ばしいのは、生まれ変わりや前世記憶が本当にあることを証明できたことだ。稲本志保には、誰よりも早く、生まれ変わりは本当にありましたと教えてあげたいと思っている。
そして真希那だ。彼女がいなければ、今でも漣の前世記憶を空想や妄想で片付けていたことだろう。彼女はこれからきっと忙しくなる。生まれ変わりや前世記憶に対する世間の認識を変えるという使命が彼女にはある。もし前世記憶の研究に力を貸して欲しいと頼まれたら、協力は惜しまないつもりだ。
美加は喜んでいるであろう真希那を見た。ところが彼女は、美加の意に反して緊張した表情を崩していなかった。訝しむ美加に、真希那が告げた。
「聞き取り調査を再開したいので、漣くんを呼んでくれませんか」
「あ、はい。それじゃあ漣を呼んできますね」
ソファーから腰を上げた美加を、真希那が呼び止めた。
「それから、お願い事があるのですが――」
美加は真希那の依頼を聞き、眉をひそめた。
