「なぜ人はモノを買うのか」の答え|クリステンセン『ジョブ理論』の核心
顧客は商品を「購入」しているのではなく、自分の生活に「雇用」しているのだという考え方。ある特定のシチュエーションで人が成し遂げたい進歩をジョブと呼びます。機能だけでなく、社会的・感情的な側面を含めて、どういう流れの中で人は何が必要で何をしたくて、その中で何を選ぶのかというコンテクストと因果関係を理解することが全てです。
イノベーションのジレンマとジョブ理論、この2つを同じ人が世に残したというのはすごいことです。著者のクリステンセンは2020年1月に亡くなっていますが、この本に書かれていることはプロダクト作りに関わる全ての人にとって、今なお最も重要な視点の一つだと思います。
📖 この本を読むべき人
プロダクト開発に携わっている人
マーケティングの本質を理解したい人
ユーザーインタビューの質を上げたい人
著者プロフィール: クレイトン・M・クリステンセン
ハーバード・ビジネス・スクールのキム・B・クラーク記念講座教授。9冊の書籍を執筆し、ハーバード・ビジネス・レビュー誌の年間最優秀記事に贈られるマッキンゼー賞を5回受賞。イノベーションに特化した経営コンサルタント会社イノサイトを含む、4つの会社の共同創業者でもある。「最も影響力のある経営思想家トップ50」(Thinkers50、隔年選出)の2011年と2013年の1位に選出。
メモ
「ある特定のシチュエーションで人(顧客)が成し遂げたい進歩を“ジョブ”と呼ぶ」
ジョブを進める手段として、人は特定の製品やサービスを消費する。その行為を「雇う(ハイア)」と呼ぶ
ジョブは、顧客が商品・サービスを購入するかどうかの判断材料である。よって、顧客の置かれた状況により、雇う製品は左右される
ジョブは機能的な側面だけを持っているわけではない。達成することによる感情的や社会的なご褒美がある
感想
この本のように、インサイトを集めて、根本的なジョブを探していくというのは謎解きみたいで面白い。
人が何を考えて、どのように行動するのかを見ていくのは知見に富む。
「ある特定のシチュエーションで人(顧客)が成し遂げたい進歩を“ジョブ”と呼ぶ」
時間的な軸はあまり考慮されていないのかも。
その瞬間、短期の時間軸。
スイッチングコストの高さとそれに値するだけの価値があるのかどうか。
ジョブは多層的でかなり感情に左右される。
直感的にプロダクトを選ぶ。
ここに想起されるものを使う必要がある。
問題の深さや緊急度、ユニークさによって、雇用されるプロダクトが変わってくる。
マットレスの話を聞いて、あのようにインサイトを集めないといけないと思った。
インタビューがすぐ終わるようでは、インサイトの量が足りない。
使っているユーザーに対するインタビューもそうだが、他のプロダクトを使っているユーザーはなぜそれを使うのか。
この分野における根本的なジョブは何なのか?
User interviewのやり方とユーザーのWhyとWantを深ぼっていくのには、工夫がいるなと思った。
どういう欲求があって、何を解決したいのか、今その問題を解決するために何を使っているのか、どうしているのか?
Glaspの例はStrong enoughなのかどうか。
機能的な側面だけを持っているわけではない。達成することによる感情的や社会的なご褒美がある
この部分がソーシャルの持つ強みなのだろうと。
ストーリーが大事。人形の例。
オリジナルWebサイトに足りていないのが、Why、What、Howの部分だと思う。(Substackにはある)
実際にジョブがわかった後も、そのマーケティング方法も工夫が必要。
インサイトに基づく必要がある。
Glaspの例で言うと、なぜか1ヶ月ぐらい経って戻ってくる人がいる。
その人が直感的に何かを想起して、Glaspをジョブのために使っているということになる。
ここで発生しているジョブが、Glaspが解決しているジョブになる。
これを明確にしていく必要がある。
Hookとも通じる。
スイッチングコスト。
想起させる = Activateさせる。
N1分析とも通じる本。
Successful founding storyには、Founderしか知らない隠れたインサイトがある。= Job
デザレットのJobとケースが役に立つと思った。
紙媒体のニュースメディアがどのように生き残っていったのか。
人はニュースを読んだ後も、そのニュースについて気にしている。
人はニュースや起こっていることについて、インサイトを持っていると思われたい。
人は同じ考えを持つ人と集いたい。
ソーシャルメディアを立ち上げ、コミュニティを作っていった。
Chompの時のHidden Insightsに「人は自分が食通だと思われたいが、そのために長いレビューを書いたりするのは嫌だ」というのがあったが、それに似たものを感じた。
Glaspにおけるソーシャルにおけるインサイトだと、「人はある物事についてよく知っている、専門家だと思われたいが、そのために長い記事を書いたり、ソーシャルメディアにたくさんの投稿をするというのはめんどくさい」とかはありそう。
会社が始まった時に、Job型の組織であるが、後にFeature型の組織になるというのが気をつけないとだと思った。
ジョブはコンテクストと因果関係の中にある。
切り口がFeatureとは違う
WantsやNeedsとも違う
2回目も読んでみて、やはりユーザーインタビューとインサイトの質と量がすごい。
ミルクシェークの例も、最初はいわゆる一般的なマーケティング戦略・インタビューが見てとれたが、その後のインタビューとインサイトが全然違った。
Innovationはサイエンス?
どこまで管理・Reproduceできる?
人間の欲求をカテゴライズする、源流があるのであればできるのでは。
輪読会で議論したこと
Airbnb・Uberの隠れたインサイト
ファウンダーだけが知っているインサイトというのは確かにあります。Airbnbはまさにそうで、普通に考えたら人の家に泊まりたくない。でもコンテクストを見ていくと、旅行するなら現地の体験をしたい、現地の人がどんな生活をしているか知りたい、ホテルよりお金もセーブできる。まだ表層化されていないけど、コンテクストを辿っていくとそこにたどり着きます。
Uberも同じです。最初は「人の車に乗って大丈夫かな、変なところに連れて行かれないかな」と思っていたのに、今では逆にタクシーの方が怖い。盛られそうだし、評価システムもない。直感に反するものの中にこそ隠れたインサイトがある。普通に考えたら事件が起きるじゃないかと言われるようなサービスが、やり続けた結果どこかで伸びた。安全性を確保し続けたのもすごいです。
Airbnbは旅行者が現地の人のおすすめを聞きたいという需要と、家を貸したいというホスト側の需要がマッチングしている。Uberも移動したい人と使っていない車を有効活用したい人がマッチングしている。両面のジョブがちゃんと噛み合っています。
アメリカンガールの感情的・社会的な価値
アメリカンガールという人形のブランドの話が印象的でした。どの企業も同じような人形を作っているのに、競合を倒せない。それは機能や見た目だけではない、感情的・社会的なつながりがあるからです。おばあちゃんが使っていて、お母さんも使っていたから、娘にも買ってあげたい。これは相当エモい話で、見た目を真似て機能を真似たところで超えられないものがあります。
一度感情面で確立してしまうと、いくら2番手3番手が入ってきても崩せない。Facebookを取られたから次にまた同じFacebookは作れないというのと同じです。ブランディングの本質は、人の頭に認知されるナンバーワンのブランドがネットワーク効果を持つということ。シェアライドといえばUber、検索といえばGoogleのように、想起集合に入ることが最初のブランディングです。
マットレスのユーザーインタビューの技法
本の中で紹介されていたマットレスのインタビューがすごかったです。「何が困っているんですか」と聞かれてもわからない。でも周りを埋めたり、聞き方を変えたり、「普段どうしてるんですか」「このプロダクトがなかったらどうやって問題を解決したんですか」と聞いていくうちに、実はここにあれがあったんだと気づく。
「いつから悩んでたんですか」「奥さんは何か言わなかったんですか」「10年使えるって言ったのに2年くらいで終わってるじゃないか」。一次転換ではなく、結構長い間考えていてその行動にたどり着いたというパターンがある。背景が長いのが面白い。大型購入は特にスイッチングコストが高いから、本当に切羽詰まらないと動かない。
ウェイトリストの矛盾
新しいプロダクトのウェイトリストに入れたけど、アクセス権が来るのは2ヶ月後。「何か来たけど何のプロダクトだっけ」となる。ウェイトリストを押している瞬間が一番気温が高くて、一番興奮度が高い。インストールしてアカウントを作ってしまえばそれで終わりなのに、一番いい時を逃している。
2週間以上だったらもう体験としては微妙な感情を残して終わる。次の日ですら忘れる人もいる。解除のメールはスパムだと思われる。よっぽどの理由がない限り、ウェイトリストはつけない方がいいという意見もあります。
忘却曲線に沿った認知の仕方をしてくれたらすごく記憶に残る。忘れた頃にメールが来るブランドは確かにあります。大学のオンラインコースで、問い合わせを送ったらすぐ電話が来るところを選ぶ傾向があるというデータも紹介されました。忙しい人はさっさと決めたいし、最初に理解したところを選びます。
コンサルとジョブ理論の矛盾
メンバーの一人がコンサルティングファームで働いており、ジョブ理論を読んで「自分がやっていることは意味があるのか」と揺さぶられたという話が面白かったです。
フレームワークをたくさん知っているからそれに当てはめる。でもジョブ理論的に考えると、人間は一人一人違う生き物で、フレームワークに当てはめた時点で何かを見落としている。PMになるコンサル出身者が「会計のフレームワークでマーケットを見ていてユーザーのインサイトに気づかない」とよく言われるのは、まさにこの問題です。
コンサルの社会的地位が担保されているからこそ成り立っている部分もあります。暴力団関係者が全く同じレポートを作ってきたら、同じ内容でも信用されない。社会的な安心感であって、コンテンツの質だけの話ではない。クライアントが社内で説得するための安心材料としてコンサルを使っている側面がある。これもある意味ジョブです。クライアントの本当のジョブは「社内を通したい」であって、「最高の戦略が欲しい」ではないかもしれない。
ジョブに寄り添ったプロダクトの抽象度と具体度
ジョブはある程度抽象度が必要だと書かれていますが、逆にある程度の具体度も必要です。Notionが「everything in one place」を目指していても、やっぱりカッティングして覚えてもらいやすくする必要がある。抽象度と具体度のバランスの感覚がプロダクトと合っているかどうか。そこの境目を表現するのは難しいけど、そこが価値につながります。
代替手段が存在しない、もしくは欠けている場合は、抽象度が高くてもジョブとしては満たしている可能性がある。マーケットの中における位置によって変わってきます。
引用
この「進歩」のことを、顧客が片づけるべき「ジョブ」と呼び、ジョブを解決するために顧客は商品を「雇用」するという比喩的な言い方をしている。
イノベーションの世界では、多くの企業が周転円をつくり出す世界から抜け出せないでいる。つまり、近似や推算の精度をあげることばかりに熱心なのだ。大量のデータを集め、微調整し、相互参照させると、成功を正しく予測できるような気がしてくる。だが、顧客が なぜ その選択をしたのかを理解できていなければ、根本的に欠陥を抱えたプロセスの進め方がうまくなるだけだ。イノベーションの宇宙の中心にある因果関係のメカニズムを正しく理解していない企業は、天動説のつじつま合わせにもがくようなものである。
イノベーションにとって重要な知見を得るには、広さよりも深さを追求すべきなのだ。
純粋な知見とは、現れた瞬間に真として体験される思考だと言う。
ジョブを解決するために必要な情報は、顧客が苦労している文脈のなかにある。そのような情報は声をあげず、はっきりした構造もなく、推進者もおらず、行動計画もないことから、われわれは「受動的データ」と呼ぶ。
この記事で掲載した引用は、Glaspの機能を使ってエクスポートしています。Kindleのハイライトをエクスポートすることに興味がある方は、以下の記事をご覧ください。
また、この本のトップハイライトは以下のリンクよりご覧ください。
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