【和陰少女】第二幕「鶴凰会」|オリジナル小説|連載|ダークファンタジー|和風
前回
空が青から少しオレンジ色に染まりつつある午後、
城下町の裏通りを二人は並んで歩いていた。
「団子はまだかぁ……」
「あとちょっとよ。」
「先程もそう言っておったぞ……
それにしても、人里はいつ来ても慣れんの」
「へぇ、あんた人里来たことあるんだ。
まぁ、妖怪なんてそんな珍しくもないしねー。」
「まぁの。
この城下町には毎年、神幸祭の折に来ておったのぉ
その時はもてはやされたものじゃ。」
「へぇ、妖怪にも、憧れて真似するとかあるのねー」
「憧れ?
真似?……」
「だってそれ、神様の真似でしょ?
神幸祭に神社から来てたし。
綺麗な神様だったなぁ……」
「真似じゃない!
それがわしじゃ!!」
「はいはい。
髪のヘビだけちょっと似てますねぇー
あんたのは白うんちだけど」
「あ!また言ったな!!
訂正ーー」
「ついたわよー」
紫乃が大きな木造の門の前で立ち止まる。
門のノブ付近には羽の豪華な鶴の金色の紋が入っている。
「むぅ。 ここは団子屋では無いではないか。
ここは。」
「ここはあたしんち。」
「ほ?」
「いったでしょ? 若頭って。
訳あって先代がいなくなったから、
今では、私がこの鶴凰会かくおうかいの若頭。
まぁ、組の事はおじいちゃんにお願いしてるけどね。」
「なんと! お前さんが鶴凰会の若頭なのか。
それは落ちぶれるのも仕方なかろう……」
「あんた、失礼ね!」
「お互い様じゃ!
それに、わしは根に持つタイプじゃ」
「器が小さいこと。
てか、あんたうちの組知ってるの?」
「まぁ、やくざ者と祭事は切っても切れん縁があるからの。
毎年祭事の準備をお前さんのとこの若い衆が手伝うてくれとったわ」
「へぇ、そこまで神様の役に入れるとは大したものね。
結構ちゃんと調べてるのね。
もしかして芸人志望?」
「だから!
わしがその神!!」
ーーガチャ
突然門が開き、中から白い髪を後ろで束ねた、
少し筋肉質な老人が飛び出してきた。
「おーーーーーー!
そこに居るのは!
愛しき我が孫!!!」
「げっ!……」
「3日と14時間もおじいちゃんを
一人にしてどこに行っておったんじゃぁ!!!」
「ちょっと!!
おじいちゃん!!
スリスリしないで!!」
「すぅーはぁー
孫のいい匂いじゃぁ!!
孫臭じゃ!孫臭じゃ!」
「離せって言ってるでしょ!!!」
ーードカッ
紫乃の肘鉄が老人の後頭部を襲う。
「アイタァッ!!!
ちょっと!肘は……駄目じゃろ……
わし、目、飛び出てない?
大丈夫?2つ付いてる?
イケジジイの顔面、変になってない?」
「大丈夫、いつもの木の皮みたいな顔のままよ。」
「木の皮て……なんて口の悪い……
誰に似たんじゃ……
ん?
この、お隣の可愛らしいチンチクリンは何じゃ?」
「チンチクリン……
この失礼さ……遺伝じゃな。」
「もう!
後で紹介するから、家に上げてよ。」
「おう、そうじゃな。
お風呂入るかの?
3日も外に出て入ってないじゃろ?
流石におじいちゃん補正でも臭いぞ。
臭孫じゃ。臭孫。」
「お前は棺桶に入るか?じじい。」
「調子乗ってごめんなさい。
まぁ、その子とさっさと入ってきなさい。」
「はーい。
ほら、しろ行くよ。」
「風呂か。
久しぶりじゃの。」
ーーお風呂
二人は6畳間ほどの広さの浴室で、
各々桶風呂に浸かり汚れと旅の疲れを取っていた。
「はぁー……」
「ほぉー……」
「生き返るー……」
「生き返るのー……」
「しかし、なんで風呂が3つもあるんじゃ?
そういうものなのか?」
「あー、うちはちょっと特別。
組員が結構いたからねぇ。
ちょっと前までは……」
「ふーん。そうなのか。」
「……あ、珍しいのよ、
家にお風呂があるのって!」
「そうなのか?
風呂がない家もあるのかぁ……
こんなに気持ちいのにのぉ……」
「一応、みんな銭湯には行ってるわよ。」
「セントウ?」
「二人とも、湯加減どうじゃ?」
格子窓の外から火の番をしている紫乃の祖父が声をかける。
「うむ、良い湯加減じゃ……」
「それは良かった。」
「なぜお主がそんなことしておるんじゃ?
火の番なぞ、若いのにやらせればよかろう」
「何じゃ。
紫乃、話しておらんのか?」
「んー。 さっきちょっと話したけど、
うち今ほとんど人いないのよー。」
「何じゃ、ホントにそこまで没落したのか。」
「まぁ、色々あってのぉ。
まぁ、そういうことはお団子でも食べながら話そうか。」
「団子!団子があるのか!!」
「お座敷においてあるぞ。
後でお茶も入れるからゆっくり」
「団子!
早いものがちじゃ!!」
「あっ! こら!しろ!!
待ちなさい!!」
しろはビチョビチョの体も拭かず、
猫のようなすばやさで、脱衣所の方に駆けていった。
「あっ!!! わしの着物がない!!!
何故じゃ!!」
「あーすまん。 ちとボロボロじゃったからの。
後で洗って、繕ってやろうと思ってな
代わりに紫乃の着物をおいてあるからそれを着なさい。」
「んー?どこじゃー?」
「あっ、えっとな。 よいしょ。
そこを…
ハッ!!
孫ちっパイ!!!」
ーーブスッ!
格子窓からしろの様子を伺おうと、
浴室を覗いた祖父の両目を紫乃のチョキパンチが襲う。
「アイタァアアアアア!!
目がぁ!
目が脳に刺さったぁ!!
これ絶対脳まで押し込まれたぁ!」
「何ノゾいてんだエロジジイ!!
あと、誰がちっパイだ!」
「はぁ……イテテ……
とんでもなくヴァイオレンスな孫じゃ……
しろちゃん、そこの右の棚じゃ……
……さて、わしはお茶でも用意するかの
紫乃も後で来なさい。」
「はーい」
紫乃が風呂から出て座敷に向かうと、
しろは我が家のようにくつろぎながら、
ほっぺたをパンパンにし、
モチュモチュと団子を食べていた。
「ふー。 いいお湯だったぁー
てか、団子めっちゃ食べてるし」
「まだいけるぞ!!
あと、30本は余裕じゃな」
「食べすぎでしょ。
私も一個もらおっと。
よいしょっと…
あ、私の着物、
結構似合ってるじゃない。」
団子を片手に畳に腰を下ろした紫乃が、しろの着物姿を見る。
黒地に金色の菊模様があしらわれた着物に、金の帯がピシッと締められている。
「まぁ、わしほどの美少女であれば、
何でも似合うからの。
じゃが、ちと胸がきつい気がするのぉ……」
「着物だから胸の大きさは関係ないわよー
気のせいでしょ。」
「いや、でも……」
「まだ言うか?」
「おー、揃ったの。
それじゃ、団子を食べながら自己紹介でもしようかの
わしはーー」
遅れて居間から入って来た祖父の
流れるような自己紹介の導入をしろが遮る。
「待て、まずはワシから話させてもらう。
お主らのあまりにも不敬な態度を改めさせる意味でもな。」
「不敬も何もあんた、ただの妖怪でしょ?
モノマネ芸人志望の。」
「それじゃ!
その不敬な態度じゃ!」
「えー……
まぁ、いいわ。
どうぞ。」
「オホンっ! わしの名前はしろじゃ。
先月くらいまでそこの蛇神神社で祀られておった神じゃ!」
「ていう設定でしょ?
モノマネの。」
「だから違うというに!!
変な薬で小さくされたんじゃ!」
「最近神様が代わったからって、
流石にその設定は無理あるわよ。
見た目は子供で頭脳はババアですか?」
「い、言っておるわしも恥ずかしいが、
ホントなんじゃって。」
「はいはい、
何?次は黒の組織でも出るの?」
「うぅ……
ホントなのにぃ……」
「じゃあなんか証拠見せなさいよ」
「証拠かぁ……良かろう。
おい、じじい。
お主、源一じゃろ?」
「えっ?
なんでおじいちゃんの名前知ってるの?
おじいちゃん名前教えたでしょ!」
「お、教えておらん!」
「フフン。
よく見ておったからのー。
お主、幼いときよく巫女の着替えを覗きに来ておったろ。」
「ちょ、ちょちょちょ、
しろさん!?……」
「おじいちゃん?」
「それだけでなく、
壊した灯籠の笠を使ってわしの入浴ーー」
「しろさん!……しろ様!!
紫乃。
この方は先代の白蛇様本人じゃ。
間違いない。」
「おじいちゃん!?」
「ふふふ、信じてもらえたようじゃの。
まぁ、そういうことじゃ。
訳あって今はこんな姿じゃがの。」
「んー……
全然納得できないんだけど……
だって白蛇様は、身長はスラッっとしてて、
ボンキュッボンで、気品があって、
今にも消えそうなくらい儚い美人だったじゃない。
それがこんな……今にも死にそうなセミみたいな顔したーー」
「死にそうな……セミ?……」
「紫乃!
蛇神様に失礼じゃぞ!!
見てみろ、あまりの言葉にほんとにセミみたいな目になっておる。」
「じじい。
お前は一体どんな弱みを握られてるんだ。」
「まぁ……しろちゃんの過去はわかったから。
今度はわしらの話をしようかの。
旅に同行してもらうには目的の説明が必要じゃろ?」
「うん……そうね……
じゃあ、話すわね。
私の旅の目的とその理由。」

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