【和陰少女】第五幕 「阿雲姉妹」|連載小説||和風ダークファンタジー|妖怪|美少女|AIイラスト
前回
紫乃達一行が子鬼らを探している頃、
件の子鬼たちは、河原で盗んだ戦利品の確認作業をしていた。
「雲鬼ー。
センリヒン何個あったー?」
「んー……
多分12個。」
「なんだよ多分って。
十数個も数えられないのか?
馬鹿だなぁ」
「ばか?……
お姉ちゃんより?」
「何ゴニョゴニョ言ってんだよ?
はっきり言えよなー。
しかし、12個かー。
最高記録だなー。
今度こそパパ達に褒められるなっ!」
「ばかって言った……
私よりばかのくせに……
ばかって言った……」
「なんか言ったか?
だからはっきり言えって。
ん?
何だこの巾着?」
戦利品の山の中にひときわ目立つ、
小さな黄色い巾着があった。
「おっ?
これ!振ったらジャラジャラ言うぞ。
お金だ!きっとお金だ!!
おい、雲鬼!
お金だぞ!こーんなに!たくさん!
数えてくれ。」
ーーポイッ
赤鬼がその巾着を特に中身の確認もせず、雲鬼に放り投げる。
「あー。
こりゃママとパパに褒められまくるな!
晩ごはんきっと豪華だろうなぁ」
「んー?
お姉ちゃん。
これ、中身お金じゃない。」
ーーポイッ
雲鬼が中身を確認して赤鬼に投げ返す。
「はぁ?
んなわけ無いだろ?
こんなにジャラジャラ言ってんだ。
きっと小銭ってやつだ!」
赤鬼が巾着の口を開いて中を確認する。
「……
……
……
豆?……
クソがっ!こんな豆巾着に入れるんじゃねーっ!! 」
ーーベチッ
赤鬼が巾着を河原に叩きつけると、
中に入っていた豆の大半が
勢いよく四方八方に飛び散った。
「あー……
もったいない……
ママ、豆好きなのに……」
「へっ!
あんなキタねぇ豆、
ママに食べさせたらお腹壊すだろ!
絶対腐ってるぜ。
きったねぇ。
……よいしょっと!」
赤鬼が岩からヒョイと飛び降り、
川で手を洗っていると、何やら騒がしい声が聞こえた。
「あ!
見つけた!!
鈴女ちゃん?
あれ?」
「あ!そうです!!
あれです!
あの赤いのがバカです!!」
遠くから鈴女が紫乃の後ろで指さしながら駆けてきていた。
「あ"?
何だぁ?
何つった今?
バカつったかぁ?
聞き間違いかぁ?」
「これ……
待たんか……はぁ……はぁ……
体力……バカども……
急に走りおって……はぁ……はぁ……
…………
なんじゃ?……
バカ面が増えたの……
アレが探してたやつか?」
少し遅れて、息を切らしながらフラフラとしろが追いついてきた。
「あーっ!!
バカって言った!!
はっきり言った!!
あたしはバカじゃねー!!
いっつもママに天才って言われてるんだ!!」
「あー、はいはい。
どーでもいいけどさ、
あんたたち、
この子の巾着持っていったでしょ?
返してあげなさいよ。」
「そうです!
返してください!!」
「どーでもよくねぇ!!
あぁん?……巾着ぅ?……
あー、それか?」
赤鬼が指さした方向にはぺちゃんこになった巾着が
河原と川の間で石に引っかかり、
ゆらゆらと揺れていた。
「あっ!あぁ……
おかぁさんの……お豆!……
なんで!?ぺっちゃんこです!!」
鈴女が巾着に駆け寄り急いで中身を確認する。
「中身!……中身!……
無い!……
どこです!!
どこにやったんですか!!
まさか全部食べちゃったんですか!?」
「あぁ?食うわけねぇだろ。
きったねーからそこらにぶち撒けたわ。
感謝しろよ。
腐ってたぞあれ。」
「腐ってません!!!」
鈴女は小石の隙間などに落ちている豆を
唇を噛み締めながら、必死に拾い集め始めた。
「あ、あった……
ここにも……グスッ……」
「うえー。何だこいつ?
きったねぇのー。
顔クシャクシャにして腐った豆拾ってやがる。
お似合いだな!ハハッ」
「きたなく……ないです!!
お母さんが……
お母さんが、鈴女のために集めてくれた……
大切な……大切な豆です!!
絶対汚くなんかないです!!グスッ……
一緒に……一生懸命集めたんです……
……
大切なお豆です!……
……うぅ…………
私が……私が……栗に夢中になったせいで……
また……私のせいで…………」
「ハハハッ!あんなに顔ぐちゃぐちゃにして。
傑作だなぁ!ハハハッ!
大切ならしっかり持ってろよー。
みっともねぇなぁ。
そんなーー」
「うるさい!!!」
腹を抱えて笑う赤鬼の言葉を遮って紫乃が怒鳴った。
ーーポンッ
紫乃がしゃがみ込み、鈴女の肩に手を置く。
涙と土でボロボロになった顔で振り向く鈴女に、
片手に収まるほどの数粒の土のついた豆を手渡した。
「鈴女ちゃん。
ごめんね、こんだけしか見つからなかったけど、
もうちょっと一人で探してて……」
「ふぇ?……
あ、ありがとうございます……」
「……
おい、そこのバカ鬼。
拾いなさい。」
「あぁ?
またバカつったな?
もう3度目だ……
仏の何とかもなんとかだぞ。」
「なんとかじゃなくて、三度までじゃ」
「うるさいっ!!
……
雲鬼!来いっ!
いいか?お前ら!
冥土の土産に覚えておけ!
あたしは阿鬼だ!
鬼一族一の天才!阿鬼様だ!
そしてこいつが妹の雲鬼!!
二人合わせて!
……(せーのっ)
阿雲姉妹だ!!
…………
おいっ!!
言えよ雲鬼!!
二人で言うからかっこいいんだろ!!
一人だと可哀想だろっ!!」
「やだっ!
お姉ちゃんさっき、ばかって言ったもん。
それに……それ恥ずかしいもん」
「何だよぉ!
細かいやつだなぁ……
もぉいいよ!!
悪かったって!
さっき拾った絵巻あげるから!
ほら、雲鬼!
行くぞ!!」
「ほんと!?
ふー……
わかった……」
阿鬼と雲鬼は横に並び、
それぞれ鏡合わせのように片手を地面につけてポーズを取る。
「二人合わせてー…………」
「阿雲姉妹だ!!」

「人間!
舐めた口きいたこと、
後悔させてやるぜっ!
行くぞっ!
ひっさーつーー」
二人は長い爪を構え、
阿鬼が上から、雲鬼が下から同時に
紫乃に飛びかかる。
紫乃はそれをひらりと避け、
技名を叫んでいる途中の阿鬼の頬を鞘でぶん殴り、
そのまま柄で雲鬼の頭頂部を殴りつけた。
ーーバキッ
「ヌギャ!!」
「ピャッ!!」
阿鬼は水切り石のように派手に川を跳ね飛んでいき、
雲鬼は顔が砂利にめり込んだ。
「……」
「……」
二人はゆっくりと起き上がり紫乃の方を見る。
頭に大きなタンコブを作って。
「ごちゃごちゃうるさいわね。
拾いなさいって言ったわよね?」
「うぅ……うっ……うわあぁぁあああああんっ!!」
「うぅ……うっ……うわあぁぁあああああんっ!!」

「いだいよぉ!!…………」
「いたいよぉ……ままぁ…………」
「えっ…………
ちょ……ちょっと!
そんな強く殴ってないでしょ!!
な、泣き過ぎよっ!!
これじゃまるで…………」
「弱いものいじめじゃな。
しかし、ゴリラみたいな腕力じゃな。」
「えーん!よわぐないもぉおおおん!!」
「あーっ!
もうっ!!
分かったから!
やりすぎてごめんね!
だから泣くのやめて!」
「うぅぅ……グスッ……」
「うぅぅ……グスッ……」
「ふー……
泣き止んだ?
いい?
人から物を盗っちゃダメ。
ましてや、それを捨てたりなんてしちゃダメ。」
「なんで?……」
「なんでって……
大切なものは人によって違うの。
あんた達の大切なものは?」
「ママとパパァ」
「ママとパパァ」
「ママとパパ悪く言われたら嫌でしょ?」
「うん」
「だからダメなの。
さ、鈴女ちゃんにごめんなさいして、
あんたたちも拾いなさい」
「はい……」
「はい……」
二人はトボトボと鈴女の所に歩き、謝罪をした。
「おい……雀の妖怪……
腐った豆捨ててごめんなさい……」
「ごめんなさい」
ーーゴンッ
「いだっ!」
「いたいっ!」
「腐ってないって!
ちゃんと謝りなさい」
「ごめんなさい……」
「ごめんなさい……
私はちゃんと謝ったのに……」
「いいです……
私も……ちゃんと持ってなかったので……」
「はい、じゃあみんなで拾うわよー」
紫乃と鈴女と鬼姉妹は、
地面に這いつくばり豆を拾い始めた。
「見ろっ!
いっぱい拾ったぞ!
褒めろ!!」
「あんたのせいでこうなったんでしょーが!」
ーーゴンッ!
「いだっ!!」
「なんで私まで……
お姉ちゃんのせいで……」
「連帯責任よ」
四人で豆を拾い続け、
巾着は以前ほどではないが、
ある程度膨らみを取り戻した。
「みなさん……
ありがとうございます。
全部ではないけど……
充分……集まりました……」
「良かったわね、鈴女ちゃん。」
「ふぅ……。
動いたから腹減ったぁ……
確か戦利品に弁当があったよな」
「こら、あんた。
さっき人のもの盗るなって言ったばかりでしょ!!」
「だってぇ……
あれ!?
おかしいぞ!!
弁当がない!!
どこにーー」
ーーもぐもぐ……くちゃくちゃ
「ゴクッ……
なんじゃ?
やらんぞ?
わしがそこから拾ったんじゃ。」
岩の上でしろが顔をパンパンにしながら戦利品の山を指さす。
「おい人間!!
こいつあたしが盗んだもの盗み食いしてるぞ!!」
「しろ!!
あんた何やってんの!?」
「これ!
人聞き悪いことを言うでない!!
盗んでおらん!!
拾ったんじゃ!!」
「一緒でしょーがっ!!」
ーーゴンッ
「あだっ!!
ちゃぁー……ほ、骨が!
頭蓋骨がめり込んだぁ!!……」
頭を抑え、河原でのたうち回るしろをよそに
戦利品の山を見て紫乃がため息を付く。
「しかしまぁ……
こんなに盗んじゃって……」
「まさか……
返してこいとか言うのか?」
「いや、なんかめんどくさいからいいわ。
持てっちゃいなさい。
あたし関係ないし。」
「おい!
なぜわしは殴られたんじゃ!!」
「ついでよ。
子鬼の前だし。」
「ついで…………」
「まぁ、今回はもういいけど、
もう悪さするんじゃないわよ。
じゃあ、それ持って帰りなさい。」
「はーい」
「はーい」
ーータッタッタ
子鬼たちは素早く戦利品をまとめ山の方に走っていった。
豆粒ほど小さく見えるほど距離が離れた所で阿鬼が叫ぶ。
「おーい!
にんげーん!!」
「紫乃、赤いのが何か呼んでおるぞ」
「何だろ?
どーしたのー?」
「ママに言いつけてやるから覚えてろー!!
ばぁーかー!!」
「あいつら……」
捨てぜりふを吐いて子鬼らは素早く山の中に逃げ去ってしまった。
少し経ち、紫乃達は鈴女と出会ったあたりの十字路に戻っていた。
「あのー。
お二人とも。
今日は本当にありがとうございました!!
この恩は多分忘れませんっ!!」
「いーのよ。
気にしないで。
勝手にやったことだから。」
「わしは振り回されたがな!
礼としてーー
むっ……むぐっ……」
紫乃が何か言おうとするしろの口を塞ぐ。
「鈴女ちゃんはこれからどうするの?」
「私はこの先に稲川村という村があるらしいので、
そこに向かおうと思います。」
「一人で大丈夫?
一緒に行ってあげようか?」
「おい!
これ以上は付き合いきれんぞ!!」
「大丈夫です!
一人で行けます。
しろさんが言うように、
これ以上、お二人の邪魔はできません。」
「そっか。
分かった。
豆、植えれる畑見つかるといいね!」
「はいっ!
お豆が採れたら、まずお二人に食べてもらいます!
紫乃さんもお姉さん見つかると良いですね。
ではっ!
またいつか!」

そう言うと鈴女は巾着を振り回しながら分かれ道を歩いていった。
「大丈夫かアレ?」
「あっ!お豆がッ!!!!」
「はぁ……いくぞ……」
「そうね……」
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