【和陰少女】第四幕「雀の鈴女」|連載|ダークファンタジー|和風
陽が山から少し顔を出し、
空が少し白くなった頃、
紫乃としろと源一は屋敷の門の前に立っていた。
「はぁ、また行ってしまうんじゃなぁ……
はっ!せめて選別にさらしを置いて行ってくれんか?
孫臭を感じれる物ーー」
「キショいんじゃエロジジイ!!」
ーードカッ!
紫乃が源一野原を殴る。
「アイタァ!!!
あぁ……内臓が……内臓がこんなに飛び出たぁ……」
「それはさっき食べた団子でしょ!
ゲロジジイ!!」
「お主らは朝から騒がしいのぉ
ふぁぁ……眠い……」
しろが呆れながら欠伸をかいていると、
源一が顎のゲロを拭きながら二人に見送りの言葉を言う。
「……はぁ…。
行くんじゃな。
まぁ、二人とも、怪我だけは無いようにの。
しろちゃん、紫乃を頼むの。」
「うん、行ってくる!」
「うむ。」
「あ、寂しかったらすぐ帰ってくるんじゃぞ!」
「さみしくなるわけ無いでしょ!
……じゃ、またね。」
源一は山の方に向かっていく二人を少しの間見ていた。
「二人とも、気をつけての……
さて、美女組員の勧誘でも行くかのぉ。」
源一はニヤニヤしながら屋敷に戻っていった。
家を出て、紫乃としろは城下町から少し離れ、
左右に田んぼや畑が広がっている道を歩いていた。
民家も少なくなり、聞こえるのは鳥のさえずる声と紫乃の昔話。
「でねー、
お父さんのお酒をその若い衆が飲んじゃってさぁ
お父さんめっちゃ怒って、その若い衆のこと切ろうとしたのよ!」
「お主の組はバカばっかりじゃのぉ」
「別にそういうやつばっかりじゃないわよ!
でさーー」
「困りました!
大変です!」
「でさー、そのほかにもーー」
「大変です!!
とっても困りました!
これは緊急事態です!!」
ーーギュー
しろの帯が、下から強く引っ張られた。
「むぅ……
何じゃ!!
離さぬか!帯を引っ張るな!!
失礼じゃろ!」
「失礼はあなた達です!!
こんなに困っているのに!
なぜ無視するんですか!」
声のする方に視点を落とすと、
茶色い短い髪を小さなツインテールにしている、
薄茶色の着物を着た少女がいた。
少女は背中の茶色い羽をばたつかせ顔を膨らませ、
しろの帯にしがみついている。
「はぁ……
あんた妖怪でしょ?
どうしたのよ?」
「困っているのです!」
「それは聞いたから、
どう困ってるのかを聞いてるのよ」
「私のーー」
「おい、紫乃。
変なことに首を突っ込むな。
ただでさえ遠出で疲れておるんじゃ。
そんな弱小妖怪ーー
イダダダダっ!!!
わしの髪に何をする!!」
少女がしろの毛先のヘビを下からグイグイと引っ張る。
「私の話を遮ったからです!
豆が……豆が盗まれたのです!!」
「豆なんぞそこらに売っておるじゃろ
くだらんことでワシの髪を……」
しろが涙を流している毛先のヘビをいたわりながら、
少女を睨む。
「そこらの豆じゃだめです!
お母さんの……大切な豆なのです!」
「んー……しろ、
ちょっと理由だけでも聞いてあげようよ。」
「ふんっ
わしは知らんぞ!」
「はぁ……
器の小さい神様ね……」
「なんじゃと!」
「何も言ってませーん。
で、あなたーー」
「鈴女(すずめ)です!」
「すずめちゃん。
そのお母さんは?
お豆ってのは、お使いか何かだったのかな?」
「お母さんは……大きな妖怪に食べられました……
お家も……壊されちゃって……」
「……そう。
ごめんね……辛いこと聞いて……
……
……ねぇ、しろぉ」
「ふんっ。
よくあることじゃな。
お主、雀の妖怪じゃろ?」
「そうです……」
「雀の妖怪は、他の妖怪に餌として食われることは珍しくもない。
最弱じゃしの。」
「ちょっと、そんな言い方ひどいじゃない!」
「人間も妖怪も同じじゃ。
弱いものは搾取される。」
「……でも、
そんなの……」
「いいんです。
事実なので……
お母さんが食べられたのも、
鈴女が気をつけなかったせいなので……
鈴女がちゃんと……お約束守らなかったから……
だから……お母さんの残したお豆だけは……」
「…………」
紫乃は着物の袖で目をこする鈴女を黙って見ていた。
その表情を見てしろが遮る。
「おい、重ねるでないぞ。」
「……重ねて……ないわよ。
……だめだ!
私やっぱりほっとけないわ。」
「おい!
お主、姉探しはどうするんじゃ!」
「だって出会ったんだから
仕方ないじゃない。
神様のお導きよ!」
「わしの前でそれを言うのか……
はぁ、もう知らん。」
「鈴女ちゃん。
盗まれたって言ったわよね?
その時の状況を教えてくれる?」
「はい!
あれは少し前です。
鈴女が、お豆の入った巾着を持って、
お豆を植える畑を探す旅の最中でした。
大きな栗の木を見つけたので、
巾着を岩の上において、
木登りをしました。」
「おい、何の話をしておるんじゃ?」
「お豆が盗まれたお話です。」
「そんなとこに置くからじゃろ。
犬でも拾っていくぞ。」
「それはそのとおりですが……
大きな栗の魔力に負けてしまって……
つい……
あれには誰も抗えません。」
「その時に盗まれたの?」
「はい……」
「犯人は見た?」
「はい!
赤と青の着物を着た鬼の姉妹でした!」
「鬼の姉妹?
なんか他に特徴無いの?」
「そうですねー。
あと、なんというか……
馬鹿そうでした!」
「鬼なんぞたいてい馬鹿じゃ」
「そうなの?」
「違います!
鬼の中でも格の違う馬鹿でした!
特に赤い鬼がスバ抜けてました!
ずいずいずっころばしの
ずいずいずっころばーし♫の部分だけ永遠に歌ってました。」
「判断が難しいが……
たしかに馬鹿そうではあるな。」
「で、その鬼たちがどこに向かったか分かる?」
「えーっと、
多分あっちの山のほうです!」
そう言うと鈴女は力強く近くの山を指差した。
鬼鳴き山付近の河原の近くに2つの影があった。
「ずいずいずっころばーし♫
ずいずいずっころばーし♫
ずいずいずっころばーし♫
ずいずいずい♫
ずいずいずっころばーし♫」
岩の上に座り、足をバタバタさせて歌う、
髪色と同じ赤い着物を纏った子鬼。
「お姉うるさい……
……3……4……」
そして、小さな岩の上にちょこんと座って、
何かを数える青い髪色と同じ着物を纏った子鬼。
「何だよぉ……
いいじゃん!
気分がいいんだよ。
ずいずいずっころばーし♫
ずいずいずっころばーし♫」
「お姉うるさい……
戦利品、数えられない……
6……5……
あれ?……」
「ヘクチッ!!
ヘックチ!!
ヘクッチ!!
何だぁ?……
誰か噂でもしてんのかぁ?……」
次
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