マスコミはガツガツすべきか?【千賀滉大投手NY取材編】
「マスコミはガツガツすべきか?」
取材において私が勝手に悩んでいることです。
11年間テレビ局の現場で働いてみて、
【ガツガツした場合】のメリット・デメリットを
自分なりに整理するとこんな感じです。
【ガツガツするメリット】
・独自情報を入手できる可能性が格段に上がる
・すごい貴重な映像が撮れる可能性がある
・心身ともにタフになる
【ガツガツするデメリット】
・そもそもそんな重要じゃない情報に
ガッついてしまう
・取材対象者の信頼を失うリスクがある
・一歩間違えるとマスゴミと呼ばれる
一方、【ガツガツしなかった場合】の
メリット・デメリットはこんな感じです。
【ガツガツしないメリット】
・取材対象者が「ガツガツ時」より
心を開いてくれやすい
・物事を俯瞰して見ることができる
・トラブルが少ない
【ガツガツしないデメリット】
・全然情報を取ってこれない
・全然貴重な映像を撮ってこれない
・周囲に「やる気あんの?」と思われる
こうやって見るとガツガツした方が
良い結果が出そうですよね?
因みに私は、あんまガッつけないタイプです。
できればガッつきたい時もあるけど、
結果ガッつけないタイプです。
「あれを聞いとけばよかった」と
後悔したことが何度あったか。
もう一押しすれば核心に迫れたことが
何度あったか。
ではやはり、「ガツガツが正解」か?
いや、そんなことないです。
この仕事においては、「一歩踏み出さないこと」が
正解になることもあります。
それを確信したのは2022年の冬、
福岡ソフトバンクホークスから
メジャーリーグへ移籍した千賀滉大投手の
番組を作った時です。番組はこちらです。
このnoteを読むメリットは以下の通りです。
・地方局の海外取材のリアルがわかる
・メディアの働き方のリアルがわかる
千賀投手については以前こちらの記事にも
まとめています。詳しく知りたい方はぜひ。
「来週ニューヨーク来れますか?」
私の人生においてこう問いかけられることは
2度とないでしょう。
電話の相手は現在ニューヨーク・メッツで
活躍中の千賀滉大投手のマネジャーさんでした。
「わかりませんが、行きます」
私はそう答え、電話を切りました。
なんとか上司の許可をもらうと、
私はすぐに自分とカメラマン2人分の
チケットを購入しました。
格安サイトの最も安いプラン。
復路は、
ニューヨーク→ミラノ→イスタンブール→仁川→福岡
という信じられないトランジットでした。
今でも思い返すと腰が痛くなります。
なぜニューヨークに呼ばれたか?
メッツの入団会見に臨む千賀投手の裏側を
撮るためです。
私にとってメジャー取材は未知の領域でした。
その時すでに12月の中旬。
指定された期日は6日後でした。
6日後に真冬のニューヨークに、いる。
「事前の申請とかどうするの?」
「そもそもいくらかかるの?」
様々な疑問が沸いてきました。
ディレクターの仕事は
「不安要素を事前に潰すこと」
これに尽きますが、
この時ばかりはそんなこと言ってる余裕はなく、
何が撮れるのか? 何が聞けるのか?
どこまで心を開いてもらえるのか?
飛行機に乗っているときには、
これらの疑問が頭の中をぐるぐると回っている
状態でした。
高額な取材費がかかっている。
それに見合った取材をしなければならない。
そういったプレッシャーも感じてはいましたが、
なるようにしかならない。
そう考えている自分もいました。
「なぜ事前に打ち合わせをしなかったのか?」
こんな疑問が浮かんだ方もいるとは思います。
私の他の記事を見て、
「お前毎回決まってなくて焦ってばっかだな」
と思った人もいるかもしれません。
しかしリアルな密着取材の現場において、
内容を事前に詰めきれることはほぼないです。
先方も忙しいし、こちらが撮りたいものを
一方的に伝えることは時にはマイナスです。
ガツガツのデメリットが出るとすればここです。
なので私の場合は複数の選択肢を持ち、
いろんな撮影の可能性を探ることにしました。
例えば、
・朝の散歩とかしないかな?
・暇で自由の女神とか見に行かないかな?
・会見日の球場入り同行させてもらえるかな?
・会見前後でインタビュー撮れないかな?
こんな叶いそうもない妄想を
延々としていました。
孤独な作業です。
ここでこんなことをしゃべってもらう、
このコメントの後にこんなプレー映像が入る
この辺まで妄想を具体化できたら、
あとは成り行きに任せます。
言うなれば、「究極の行き当たりばったり」です。
事実私が渡米前にわかっていた事は
千賀投手の宿泊先と、
翌日会見があるということだけでした。
飛行機に乗った途端マネジャーさんとの連絡も
一時途切れます。
最悪の場合、
行ってみたら会見のみの共同取材で、
独自映像はゼロ。
こんなことだってありえたわけです。
今回の取材の良し悪しによって番組の構成も
大きく変わってくる。
もしかしたら1から作り直しかもしれない。
既に番組の放送日は決まっていました。
どんな取材状況であっても、
オンエアはやってきます。
この不安の中でこそ、ディレクターが
成長できるのも事実ですが、
その環境はぶっちゃけストレス半端ないです。
詳しくはこちらに書いてますのでぜひ。
ガッつかない事が起こす奇跡
話が逸れましたが、妄想だけ膨らませ
「究極の行き当たりばったり」で
臨んだ私はニューヨークでどうだったか?
結果的に以下のものを撮らせてもらいました。
・マンハッタンの街並みバックにインタビュー
・入団会見の朝、ホテルから車までの移動
+移動の車内でのインタビュー
・メッツの本拠地 シティ・フィールドの
ロッカールーム
・メッツのGMと千賀投手の会話、握手
・千賀投手が背番号「34」に触れる瞬間
・会見直前までの密着インタビュー
・球場内施設
誇張なく言えば、
想像を遥かに超えるものが撮れました。
球場に入ってからは驚きの連続で自分の妄想が
ちっぽけに思えるほどでした。
別に自慢がしたいわけではありません。
私がしたいのは今後の検証です。
この場合、
ガッついていたら、
もっと良いものが撮れたのでしょうか?
ガッつかなかったから、
ここまでのものが撮影できたのでしょうか?
私は後者だと思います。
なぜそう思うのか?
理由は以下の2つです。
①千賀投手のマネジャーさんは、
我々の取材の為に球団と交渉してくれていた
②球場施設を案内してくれたのは
現地の球団スタッフだった
それぞれ説明します。
まずは【①】。
千賀投手のマネジャーさんは、
会見の裏側に福岡のメディアが入るという事を
メッツ側に伝えその為のパスの準備を密かにしてくれていました。
もしこの時に私が、
「あれが撮りたい」「これが撮りたい」と
ガツガツいっていた場合、
果たしてここまで動いてくれていたでしょうか?
私が希望した中の幾つかを実現させてくれたかもしれませんが、メジャーのロッカールーム撮影ができるなどとは夢にも思っていない私を同行させてくれるでしょうか?正直疑問です。
続いて【②】。
千賀投手がロッカールームでGMと話し込んでいる間、私はポツンと佇んでいました。
すると球場スタッフの老人がいきなり英語で
話しかけてきたのです。
「カモン」
基本は何を言ってるか全くわからなかったのですが、ロッカールームから私を連れ出し、
球団の施設を案内してくれます。
もちろん、撮影OK。
「ここは選手たちがくつろぐ場所」
「ここはトレーニングルーム」
「これはプール、温水と冷水が出る」
こんなことを伝えてくれていたそうですが、
現場では全く聞き取れませんでした。
その方はきっと、
異国の地からやってきたよくわからない
ディレクターが少しでも充実した取材ができる
ように気を利かせてくれたんだと思います。
これがもしガツガツした主張強めの、
なんにでもカメラを突っ込むディレクター
だったらどうでしょう?
案内どころか警戒されますよね。
最悪つまみ出されると思います。
ガッつかない事で、稀に多くのメリットが
天から降ってくる事がある
これが私がニューヨーク取材で確信した事です。
まとめ
・ガツガツのメリットとデメリットを理解する
・非ガツガツのメリットとデメリットを理解する
・事前打ち合わせのない一発勝負の取材はある
・延々と妄想する事で備える事はできる
・一歩引く事がもたらす奇跡的なメリットがある
もちろん、
ガツガツいくことを否定するわけではありません。多くの場合、そのガッツが利益をもたらす。
しかし一歩引く事で得られるものもある。
この駆け引きこそ、
ディレクターの醍醐味なのかなと思っています。
最後に印象的だった千賀投手の言葉を
お伝えします。
「僕の好きな言葉の中で『為せば成る』という
言葉があるんです。夢のためにどう行動するか考えるのが、僕は好きなんです」
自由の国アメリカで、
ガツガツいくべきか?
一歩引くべきか?
その答えをくれた千賀投手に心から
感謝したいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
独立後のリアルやAI活用の本音は、Substackで毎日コツコツ書いています。
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最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
