「なんかそっちの方が面白そう」が、人生を動かす――芝居が教えてくれた、イメージの使い方
――俳優思考・第十八回
イメージ力が大事だという話は、昔からよく聞きます。
成功している自分をイメージしましょう。
夢が叶った姿をイメージしましょう。
スポーツ選手もイメージトレーニングをしてから試合に臨むなんて話も聞きます。確かにイメージは大事です。
ただ、私は少し違うところに面白さがあると思っていて。
それを今回、少し話させてください。
演技の難しいところって、何が起こるかわかっていながら、何が起こるかわからないように、振る舞わなければならないことなんです。
相手にビンタをされるシーンがあったとしましょう。
台本読んでるので、ビンタをされることはわかってる、でも、ショック!!まさかビンタをされるなんて!!っていう顔でいなきゃいけないわけです。
ね、難しいでしょ。
ところが、ビンタをされる前に、「こう言えば相手をムカつかせられるかな」「こう動けばビンタしたくなるかな」と予測しながら作っていったりする役者がいます。もちろん間違いではないし、台本に書かれている最低ラインは守らないといけない。
ただ、実は結構な落とし穴で、過剰な説明演技は、かえって芝居がつまらなくなるんです。なぜなら、人間は予測通りに動かないから。
考えてみてください。皆さんも、怒るときって、相手から怒らせようとされて怒ることって、あまりないですよね。お互いの主張がぶつかって、その結果として怒りが生まれる。そんな感じじゃないですか?
ビンタだって、本来はそういうものなんです。
だから私は、演技講師のときは、「そこで生まれるものを大事に!」と言いまくっています。でもやっぱり、生まれるものを大事にするのは怖いんです。不安なんです。わからない未来だから。
だから未来を決めて安心したいんです。そして、結果「安全な未来」ばかりを探し始める。でも、それって本当に自分が行きたい未来なんでしょうか。
私は脚本を書いていても、それを感じることがあります。
話はまとまっているし、破綻もしていない。なのになぜか面白くならない。
逆に、「いや、こっちの方が面白いだろ」と思った時の方が、なんかワクワクする。といった状態になることが結構あります。
もちろん、その選択が正しいかどうかは分かりません。
結果、書き直す羽目になることもあります。
ただ、少なくとも書いている本人がワクワクしているんです。
私は、その感覚をとても大切にしています。
人はよく、どうなりたいかよりも、どうなりたくないかを考えます。
失敗したくない。損したくない。怒られたくない。恥をかきたくない。
それは自然なことだと思うんです。危険を察知することで、人は生き残ってきたわけですから。
だからマイナスをイメージすること自体が悪いとは思いません。
ただ、それだけだと、人生は少し窮屈になってしまう。
確かに、失敗を避けることはできるかもしれない。
でも、面白い場所には辿り着けないかもしれない。
私は時々思うんです。
正しい未来って何だろう。成功する未来って何だろう。
そんなことを考えても、結局は分からない。
後になってみないと、答えなんて出ない。
失敗だったと思っていたことが転機になることもあるし、成功だと思っていたことが遠回りになることもある。だから未来を正確に当てることなんて、最初から無理なのかもしれない。
だったら私は、
「どうなったら面白いだろう」
と考える方がいいかなって。
面白い未来をイメージする。
面白い出会いをイメージする。
面白い挑戦をイメージする。
それが実現する保証なんてありません。
でも、少なくとも進む方向は見えてきます。
結局のところ、人は自分が見ている方向へ歩いていくものだと思います。
失敗しない未来ばかり見ていれば、失敗しないための人生になる。
面白そうな未来を見ていれば、面白い方へ足が向く。
どちらが正しいかは、分かりません。
ただ、どうせ想像するなら、少しくらい面白い方を想像していたいんです。
きっと人生を動かすのは、正しさよりも、「なんかそっちの方が面白そうだな」という、ちょっとした気持ちなのかもしれないから。
次回はこちら→『「でも」より先に、「なるほど」――受け入れた人から、世界は面白くなる』
前回はこちら→『人は失敗より、想像に負けている』
まとめはこちら→【俳優思考】
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