《闇夜に刻まれた印》外伝:仮面の日(II)~魔王のお気に入り羊羹を食べてしまった件について~/《烙印於黑夜之印》外傳:面具日(II)~關於我不小心吃了魔王最愛羊羹這件事~
作者便り(26年3月)
前編
日本語訳
【外伝:仮面の日(II)~魔王のお気に入り羊羹を食べてしまった件について~】
第II小隊の全体会議は、
本来は業務報告の場である。
しかし実際は、
薬の売上から石化事件の苦情へ、
そしていつの間にか――
冷蔵庫の羊羹を誰が食べたのか、という議題へ移行する。
闇夜騎士団において
本当に恐ろしいのは魔物ではない。
魔王のお気に入りを
うっかり消費してしまうことだ。
(責任は各自で取ること。)
エルールは軽く咳払いをし、次のページをめくった。
「次の案件——」
書類に目を落とす。
「抗石化薬が『ナトゥールリフ(Næturlyf)』で好調らしい。もう黒字が出始めてる。」
ユリが顔を上げ、わずかに微笑む。
「最近、あの薬屋は評判がいいですね。貴族まで並んでいるとか。」
レイノールのペンは止まらない。
「もともと王宮級の処方ですから。」
ユリが瞬きをする。
「言い方がストレートすぎない?」

メデューサは相変わらず目隠しをしたまま、淡々と口を開く。
「少し安い。効果は同じ。」
「石像にされるよりは、まし。」
エルールが静かに補足する。
「それに、最近この一帯で石化呪詛系の魔物が増えてる。需要が伸びるのは当然。」
ユリは小さくため息をついた。
「いいなあ。みんな薬を作れて。私は符を描くことしかできない。」
「術式も薬剤も、ただの手段だよ。」
レイノールは最後の一筆を書き終える。
「大事なのは——誰かが生き延びること。」
メデューサは何も言わなかった。
だが、ほんのわずかに、頷いた。
「でも——」
エルールは書類をめくりながら、淡々と続ける。
「早朝巡回の騎士団員に“解石化”された犯人から苦情が来てる。」
一拍置く。
「薬を飲んだのに石化した。ナトゥールリフを“誇大広告”で訴えるつもりらしい。」
室内が一瞬で静まり返った。
そして、全員の視線が同時にメデューサへ向く。
メデューサは背筋を伸ばしたまま、いつも通りの落ち着いた声で答えた。
「ラベルには明記してある。」
「小型魔物による石化への予防のみ。」
「執行型および大型個体——防止対象外。」
一拍。
「最後まで読まなかったのは、彼の問題。」
誰も反論しない。
レイノールが手元のメモをめくりながら、さらりと付け足す。
「読解力は、薬剤で補強できる領域ではありません。」
ユリが思わず吹き出しかける。
メデューサは表情を変えず、さらに続けた。
「団内および他騎士団へ配布しているものは、完全版。」
「ご安心を。」
目隠し越しにも、
その瞬間だけ空気がわずかに冷えた気がした。
エルールは書類を閉じ、軽く息をつく。
「それなら——」
声はほとんど感情を帯びていない。
「自業自得、ね。」
その一文は、議事録には記載されなかった。
「でもさ、ナトゥールリフが黒字って、正直奇跡じゃない?」
ノットディスが言う。
「薬を配って、往診まで引き受けてるんだろ?
潰れないのがすごい。」
「重要なのは、あそこが持つ“情報価値”のほうよ。」
エルールは書類を整えながら答えた。
「第IV小隊に聞いてみればいいわ。どれだけの情報が、あそこから流れているか。」
「ひとまず、今日はここまで……」
エルールは書類を整え、そっと机に置いた。
「それはそうと、ちょっと聞きたいんだけど——」
顔を上げる。
「冷蔵庫にあったあの……なんて言ったっけ、確か“ようかん”っていうお菓子。きれいな箱に入ってたやつ。さっき戻ったら見当たらなかったんだけど。」
「僕は冷蔵庫なんて見てないよ。」
レイノールは顔も上げずに答える。
「知らない。」
メデューサは蛇髪を整えながら、淡々と言った。
「何のことだ。見ていない。」
ノットディスは腕に抱えた自分の頭を軽く撫でながら首を傾げる。
室内が、ほんの一瞬だけ静まり返る。
そして。
全員の視線が、ゆっくりとユリへ向いた。
「……殿下、とか?」
ユリは少し後ろめたそうに言う。
「殿下は、もう一か月近く来てないよ。」
エルールが呆れ気味に答える。
「じゃあ……処刑人?」
「彼女はそこまで甘党じゃない。」
レイノールは相変わらず記録をまとめながら言った。
「じゃ、じゃあ……えっと……」
ユリの思考が明らかに高速回転している。
そして。
ぴたりと止まった。
小さく息を吐く。
「……はい。
私が食べてしまいました。」

ユリは立ち上がり、
エルールに向かって九十度の礼をした。
「エルール、本当に申し訳ありませんでした!」
エルールは、またひとつため息をつく。
「やっぱり、あなたか。」
そう言ってユリを見る。
声は、さっきより少しだけ柔らいでいた。
「……どうしたの。ホームシック?」
ユリの目が、わずかに陰る。
「扶桑は遠いですし……王都じゃ、扶桑のものはあまり手に入らなくて。ちょうど手持ちも切れかけていて……見た瞬間、つい……」
「すぐに買い直します!」
ユリは勢いよく言った。
「もう間に合わないよ。」
エルールは淡々と告げる。
「その商人、もう王都を出たよ。売り切れ。」
「……」
「しかもあれ、レイノールに車椅子を押してもらって、わざわざ買いに行ったんだよ。最後の一つだったから。」
そこで、エルールは少しだけ言葉を切った。
「……魔王が前に目を覚ましたとき、“おいしい”って言ったから。だから急いで、最後の分を買いに行ったの。」
空気が、一瞬で凍りつく。
「……っ!」
ユリの全身の毛が、ほとんど逆立つ。
「わ、私、実家に頼んで一番おいしいのを送ってもらいます!」
慌てて言い募る。
「エルール、陛下が目を覚ましたら、少し時間を稼いでください! 必ず手配します、直接お詫びしますから!」
「でもさ、ユリ。」
ノットディスが、自分の頭を撫でながら、のんびりと口を挟む。
「実家とは、あまり連絡取ってないって言ってなかった? 大丈夫なの?」
「大丈夫じゃなくても大丈夫にします!」
ユリの声が震える。
「命のほうが大事ですから!」
言い終わるや否や、
彼女はラウンジを飛び出していった。
扉が、後ろでふわりと二度ほど揺れる。
「……『ようかんより命』か。」 レイノールが淡々と呟いた。
誰も、否定しなかった。
室内に、静寂が戻った。
エルールは表面上、何事もなかったかのように書類を整理している。
だが、意識の奥底では——
(クールマ、これ何のつもりよ。ユリ、あんなに怯えてたじゃない……)

心の中で文句を言いながら、象徴的にぽかぽかと数回殴る。
「ははは、それでこそ悪戯だろ?」
クールマは実に楽しそうに笑う。
(まったく……)
エルールは内心でため息をつく。
「じゃないと、彼女が自分から実家に連絡すると思う?」
クールマの声音は軽い。
「自分の郷里の老舗だって、包装を見ても気づかないほうが悪いんだ。」
エルールは一瞬、言葉を失う。
(本当にもう……)
叩くのにも疲れ、ついに諦める。
(まさか、実家が人を寄こして直接届けるとは思わなかったけど。)
「それはそれで、楽しみじゃないか。」
クールマの声が、ゆっくりと遠のいていく。
「彼女はまだ気づいていない——」
「家のほうこそ、ずっと待っていたってことを。」
ユリが飛び出していったあと、
会議はほとんど終わったも同然だった。
椅子が元の位置に戻され、
書類は一束ずつ丁寧にまとめられていく。
レイノールは議事録を整理しながら、
ふと最近買い出しに出たときの話を口にした。
「この前、果物商がこっそりいくつか実をくれた。」
「臨時墓園のあたりにしかない品種らしい。」
「皆、だいたい前半夜に摘みに行くんだとか。」
「……どうして前半夜?」
誰かが問い返す。
商人は、意味深に笑ったそうだ。
——後半夜になると、
あの場所で“首なし騎士”が、
腕に抱えた頭へ、静かに餌をやっているのを見かけるからだと。

室内が、一瞬だけ静まり返る。
ノットディスは否定しなかった。
ただ、誰かが小さく呟く。
「三百年も経てば、土の記憶も薄れる。」
「でも、夜の習慣は……まだ残るんだな。」
最後の椅子が、静かに机の下へ押し戻される。
そのとき、入口のほうから声がした。
「ヘレン、ダイヤ、フレイ、ありがとう!
お疲れさま!」
「もう終わったのか?」
魔王初登場
メデューサと石化
ノットディスと神罰日
以上の翻訳は ChatGPT による翻訳文をもとに、自ら校正・監修した形でお届けしています。
もし文体や語調などに不自然な箇所がありましたら、ぜひご指摘いただけますと幸いです。
ご感想やご質問などございましたら、コメント欄にてお知らせください。できる限りお返事させていただきます。
改めまして、本作品をお読みいただき、誠にありがとうございます。
中国語本文
【外傳:面具日(II)~關於我不小心吃了魔王最愛羊羹這件事~】
第II小隊的全體會議,
理論上是處理公務。
實際上,
通常會從藥劑盈餘談到石化詛咒,
再一路歪到——
誰把冰箱裡的羊羹吃掉了。
在闇夜騎士團裡,
真正致命的從來不是石化魔物,
而是——
不小心動到魔王最喜歡的甜點。
(至於後果,請自行負責。)
艾露爾清了清嗓子,翻到下一頁。
「接著是下個案子——」 她瞄了一眼文件。
「抗石化藥在『奈圖爾利夫(Næturlyf)』賣得很好,已經開始有盈餘了。」
由莉抬起頭,露出一點笑意。
「那間藥店最近名聲不錯呢。聽說連貴族也會去排隊。」
萊諾爾筆沒有停。
「本來就是王宮等級的配方。」
由莉眨了眨眼。
「你講得太直接了吧?」
梅杜莎坐在一旁,依舊戴著眼帶,語氣平淡。
「便宜一點,效果一樣好。」
「比讓人直接石化成雕像強。」
艾露爾淡淡補充: 「而且附近最近石化詛咒魔物增加,需求本來就會上升。」
由莉嘆了口氣。
「真羨慕你們能做藥。我只會畫符。」
「術式跟藥劑都是手段而已。」 萊諾爾寫完最後一筆。 「重點是——有人因此活下來。」
梅杜莎沒有說話。
但她微微點了一下頭。

「但是,」艾露爾翻著文件,語氣平平,
「有被清晨巡邏的騎士團員『解石化』的犯人抱怨——」 她停了一下。
「說自己明明吃了藥,還是被石化,準備告奈圖爾利夫廣告不實。」
房間瞬間安靜。
然後,所有人的視線,同步落到梅杜莎身上。
梅杜莎坐得筆直,語氣依舊冷靜。
「標籤寫得很清楚。」
「僅預防小型魔物傷害。」
「執法型及大型魔物——無法防止。」
她停了一拍。
「是他自己沒看完。」
沒有人反駁。
萊諾爾翻著筆記,淡淡補一句: 「閱讀能力不是藥劑能補強的範圍。」
由莉差點笑出來。
梅杜莎語氣不變地補充: 「團內與其他騎士團配發的版本,是全效型。」
「請放心。」
雖然戴著眼帶, 但那一瞬間, 氣氛莫名地更冷了一點。
艾露爾合上文件,嘆氣。
「那只能說——」
她語氣淡到幾乎聽不出情緒。
「賊星該敗。」
會議記錄上,這句話沒有被寫進去。
「但是『奈圖爾利夫』能盈利真的是奇蹟吧?」諾烏蒂斯說道,「送藥還出診...沒倒真的很厲害了。」
「那個地方重要的是情報價值,」艾露爾邊整理文件邊說,「要不然去問IV小隊,多少東西是那邊流出來的?」
「大概到這邊吧……」
艾露爾整理了一下文件,又放了下來。
「不過想問一下大家——」
她抬起頭。
「有人看到冰箱裡那個……叫什麼來著,好像是『羊羹』的甜點嗎?用蠻漂亮的盒子裝的。我剛剛回來就沒看見了。」
「我都沒看冰箱。」萊諾爾說,頭也沒抬。
「我不知道。」梅杜莎一邊理著蛇髮。
「什麼東西?沒看過。」
諾烏蒂斯摸著自己的臉——只是她的頭在臂彎裡。
空氣安靜了一瞬。
然後,所有人的目光慢慢轉向由莉。
「會不會是……殿下?」由莉有點心虛地說。
「殿下已經快一個月沒來了。」艾露爾無奈地回答。
「那應該是……處刑人?」
「處刑人沒那麼愛吃甜。」萊諾爾依然整理著記錄。
「那……那……應該是……」
由莉的大腦明顯高速運轉。
然後,突然停住。
她嘆了口氣。
「對,是我吃掉的。」

她站起身,對著艾露爾鞠了個九十度的躬。
「艾露爾,真的非常對不起!」
艾露爾又嘆了口氣。
「果然是妳。」
她看著由莉,語氣放緩。
「怎麼,想家了?」
由莉的眼神微微黯下來。
「因為扶桑太遠了……扶桑的東西在王都不太好買到。剛好自己手上的也快沒有了,一看到就忍不住……」
「我馬上去買回來!」
「來不及了。」艾露爾淡淡地說。
「賣那個的商人已經離開王都了,賣的一個都不剩。」
「那個還是我要萊諾爾推著我,划著輪椅去買的……因為——」
艾露爾頓了一下。
「魔王上次醒來的時候說很好吃,我才趕快去買最後一趟的。」
空氣瞬間凝住。
「……!」
由莉的汗毛幾乎全豎了起來。
「我、我請老家的人幫忙買最好吃的過來!」
她慌忙開口。
「艾露爾,麻煩陛下醒來的時候幫我拖一下時間,我一定盡快買到,親自賠罪!」
「可是由莉,」
諾烏蒂斯一邊摸著自己的頭,一邊慢悠悠地說,
「妳不是說跟老家已經很少聯絡了?有辦法嗎?」
「沒辦法也得有辦法!」
由莉聲音都在發抖。
「命比較要緊啊!」
話音未落,她已經衝出交誼廳。
門板在身後輕輕晃了兩下。
「看來,命比羊羹重要。」萊諾爾淡淡的説。
沒人反駁。
室內恢復安靜。
艾露爾表面上仍低頭整理文件。
但在意識深處——
「庫爾瑪,妳這什麼主意啦。妳看由莉嚇成那樣……」
她在心底一邊抱怨,一邊象徵性地捶了對方幾下。

「哈哈哈,這才叫惡作劇嘛!」
庫爾瑪笑得很開心。
「妳喔……」
艾露爾無奈。
「不然她怎麼會主動跟家裡聯絡?」
庫爾瑪語氣輕快。
「只能怪她自己連包裝都認不出來。明明是她家鄉的老店。」
艾露爾停了一下。
「真的是……」
她捶累了,乾脆放棄。
「只是沒想到她老家會直接派人來送東西就是了。」
「那就等著看好戲吧。」
庫爾瑪的聲音慢慢淡下來。
「她應該沒想到——家裡其實在等她。」
由莉跑出去之後,會議其實也差不多結束了。
椅子被拉回原位。
文件一疊一疊收好。
萊諾爾一邊整理筆記,一邊隨口說起最近出去買菜時的事。
有水果商人偷偷塞給他幾顆肥美的果實,說是臨時墓園那邊才有的品種。
大家多半前半夜去摘。
「為什麼是前半夜?」
商人笑得意味深長——
說後半夜常看到一位無頭騎士在那裡餵懷中的頭。

室內安靜了一瞬。
諾烏蒂斯沒有否認。
只是有人輕聲說,三百年過去,土壤的記憶也會淡。
但夜裡的習慣,卻還在。
最後一張椅子被推回桌下。
門口傳來聲音。
「赫倫、黛雅、弗蕾,辛苦了!」
「開完了嗎?」
