「運動会の準備の日、私はザ・ファントムギフトに取り憑かれた」第4回・最終回:ファントムとともに生きた37年(エッセイ)
「ザ・ファントムギフト35年ぶりの単独公演開催決定」
まさか、そんな時がくるとは…。
2024年4月28日に下北沢のFlowers Loftで「ザ・ファントムギフトの世界」と題したライブが開催されることが告知されたのだ。
開催日も週末。下北沢なら行きやすい。
ピンキーがボーカルではないのは残念だが、これは行かない理由がない。
チケット販売開始の3月10日となり、さっそくインターネットでチケットを入手。いい時代になったものである。あとは当日に向けて体調を崩さないように過ごすだけ…そう思っていた矢先、新たなニュースが飛び込んできたのだ。
「ピンキー青木逝去」
訃報が飛び込んできたのは、「ザ・ファントムギフトの世界」のライブチケットが発売されて数日後のことだった。ピンキーが62歳で亡くなったのだ。
これで、ピンキー青木をボーカルに据えたファントムギフトを見ることは、永遠に叶わなくなった。
今回のライブは元々、ピンキーは不参加の予定だったが、近年になって「from ザ・ファントムギフト」が「ザ・ファントムギフト」の名で活動することを認めたのにも、こうした状況が関係していたのだろうか。
ライブは、タイトルに「~ピンキー青木に捧ぐ」を加えることとなった。
「サリー久保田脱退。ファントムギフトはバンド活動休止へ」
3月も下旬になり、さらなるニュースが届いた。サリー久保田が、自身のオーバーワークなどを理由に、今回のライブを最後に脱退することを発表したのだ。ファントムギフトは活動休止となる。
存在を知ってから37年にして初めて参加するライブが、ピンキーの追悼、サリーの脱退、バンド休止前最後のライブになってしまった。
そして、“僕の祭り”は終わった
そして、2024年4月28日、ついに「ザ・ファントムギフトの世界~ピンキー青木に捧ぐ」のライブが開催された。私も無事、参戦できた。
当日の様子は、思い入れがありすぎて書ききれない。何しろ、初めて生でファントムギフトを見たのだから。
ナポレオン山岸のギターソロからはじまり、最初の自主制作シングルの両面である「ジェニーは嘘つき」「ベラドンナの伝説」へ。
高校生時代に唯一テレビで動くファントムを見た際にも流れていた「ベラトリーチェの調べ」、私にとって“olé olé”といえばマツケンサンバより、真夏のフラメンコより、WE ARE THE CHAMPより断然この曲である「太陽とベロニカ」、早川義夫作品の「海と女の子」、杉村ルイ加入後のシングル「真夏の夜の動物園」、グラスルーツの日本語カバー「今日を生きよう」までが第一部。
第二部は「ハロー」からスタート。「いい娘だね」「お前に夢中さ」「キル・ムーン・ライダー」「ブーン・ブーン」と続く。第一部の「真夏の夜の動物園」からこのあたりのルイさんのボーカル、かなりいい。冷たい地下室を思わせる「テル・ミー・モア」のあと、ヤンガーズの「マイラブ・マイラブ」と「離したくない」。そして代表曲「魔法のタンバリン」「夜空に消えたシンデレラ」「ハートにOK!」は高校、大学時代の記憶も呼び起こされて感涙もの。やはりピンキーの声で聞きたいが、ピンキーと違うルイさんの声によって、より心に“ずしん”と哀しみがくる感じ。アンコールは「夢うつつ」、そして、”さようなら”の歌詞が本当の終わりを感じさせる「夜明けに消えた恋」まで、全13曲(多分。間違っていたらすいません)。
欲を言えば、私の好きな曲でもある「幻の午前零時」と、チャーリーのボーカルによる「シェイキン・マイ・ソウル」も聞きたかったが、さすがに贅沢か。
詳しいライブの感想などは、ぜひともネオGSムーブメント時代にもライブを見てきた”ファントムメイツ”の方々の発信されたものにお任せをしたい。私はメジャーデビュー以降しか知らないうえに、ここでやっとライブ初参戦の若輩者である。諸先輩方は、自分などとは比べものにならないほど感慨深かったことと思う。
ボーカルがピンキーではないことは残念だった。
しかし、ファントムギフトをこの機会につなげてくれた杉村ルイ氏には感謝したい。
この日は、おおげさではなく、自分にとって節目の日となった。
およそ37年にわたる巨大な祭りが、ついに終わった気がした。
高校生時代にファントムギフトを知った私も50代半ば。
健康管理のためにスマートウォッチを装着しているが、2024年4月28日の夜は、ここ数年で最も大きな音量と、最も高い心拍数が記録されていた。
祭りのあとに
ついに祭りは終わったが、私の人生における最大の祭りだったのである。その大きさゆえに、1年が経とうした今でも、その余韻が残っている。
グループサウンズ研究の第一人者である黒沢進氏は、著書「日本ロック紀GS編」などの中で
「GS音楽は映像を伴うことによって感動が倍増する。」
と述べている。
これは、ネオGSにも当てはまるのではないだろうか。
「動くファントムギフト」「ファントムギフト映像集」のような“ギフト”がいつか届くことを願わずにはいられない。
(おわり)
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