連載「菌活ボーイがゆく」㉗天国と地獄
こうじの魅力にはまった猫サラリーミャンの菌活実践記です。
「育て上げた醤油こうじを食べてしまうのが心苦しくて」の心境で菌との触れ合いの日々を送る。
さっちー師匠ににゃんだかんだ巻き込まれながら“菌友”づくりに励む。
文/菌活ボーイ
イラスト/ちぐ

悪魔のラーメン鍋を食べた翌日、「地獄を見た」という男の話を聞いた。
夕暮れの神社の前。
「あっ、影に入っとる!」
急に足元を指さされた。
高1の夏。
球児だった彼は突然、3年生からグローブで顔面を殴られた。
弾みで後ろに倒れたが、バックネットにぶつかって、ぐわんと前に跳ね返った瞬間、再び顔を殴られた。鼻血を出した彼を、「影に入った」と先輩は叱った。
通っていたのは男子校。
部員が影で涼むことはご法度だった。
「でも、自分から入ったわけじゃない。日が陰って、影が勝手に近づいた」
なのに。問答無用だった。
「3年生は神様だった」
理不尽を耐え忍び、彼は主将になった。
それから数十年。
僕らは知り合い、酒を酌み交わした。
「授業中、鏡で反射させた光で先生の顔を狙ってた」なんて、男子校の思い出は面白かった。
「いまでは笑い話。でも、当時は地獄。放課後が近づくと心臓がバクバクした」
天国はどこにあるのだろう。
発酵食品のあるところ、には違いない。
(続く)
