連載「菌活ボーイがゆく」㊷ういやつ
発酵の世界にハマるきっかけは、いつも小さなひと匙から🥄✨
こうじの魅力にはまった猫サラリーミャンの菌活実践記です。
「育て上げた醤油こうじを食べてしまうのが心苦しくて」の心境で菌との触れ合いの日々を送る。
さっちー師匠ににゃんだかんだ巻き込まれながら“菌友”(菌活友だち)づくりに励む。
文/菌活ボーイ
イラスト/ちぐ

冷蔵庫を開けて、玉子がなかったときのショックは大きい。
がび~ん。なんでや。
すでにラーメンの袋は開けている。
鍋も火にかけている。
コーヒーでも飲もう。
気を取り直そうとしたら、ミルクもなかった。
ありえん。コーヒーが飲めん。
わが家の美学が許さない。
とはいえ、今さらコンビニに出かける気力もない。
おなかすいたなあ。コーヒーも飲みたいよお。
なんとなく、熱い視線。
「私を好きにしてください」
という目で、醬油こうじのボトルが見ていた。
さんきゅ。気持ちは、確かに受け取った。
でも、お前との関係を焦りたくないんだ。
鍋の湯がぐつぐつ沸き出した。
玉子なしラーメンを食べるべきか否か。
決断をせかされている。
そうだ。
冷凍庫にネギがあった。ゴマもある。
今夜の栄養はなんとかなるだろ。
またも熱い視線。
真正面から受け止め、はっきり言った。
「勘違いすんな。お前のことはちゃんと見てる」
こうじは目を伏せ、おとなしくうなずいた。
いとしくなる。
食べたくなるほど、かわいいやつ。
さっちー師匠にご注進しなくては。
キジトラ道場には「報連相(ほうれんそう)」の扁額が掲げられている。
総本山におもむくと、師匠もラーメンをすすっていた。
顔が隠れるほど丼を傾け、スープを飲み干し、ひとり言のようにつぶやいた。
「そうとう疲れてるようだにゃ」
(続く)
