「そのパソコンの前にいるときしか使えない」を変えたかった。全盲の私が日本語点字Webアプリを公開しました
⚠️ はじめに、ひとつだけ注意喚起
Claude Codeは今かなり話題になっています。
私もこれまで、Claude Codeについて何本か記事を書いてきました。
便利ですし、頼もしい相棒だと感じています。
ただし、とても強い道具でもあります。
プログラム、Windowsのフォルダ構成、システムファイル。
こうしたものにある程度なじみがある人向けの道具だと、私は思っています。
PCの中で何が起きているのかを、最低限つかみながら使うものです。
この記事は、全盲の私がClaude Codeを使って、どこまで作れたのかという記録です。
💬 知人のぼやきから始まった
「いまスマホに来た文章を、すぐに点字で読めたらいいのに」
知人がそうぼやいたとき、全盲クリエイターとしての私に火が付きました。
商用の点訳ソフトは、とても優秀です。
補助制度を使って手にできる場合もあります。
でも、そこでどうしても気になることがありました。
使える場所が限られることです。
そのソフトが入っているパソコンの前にいるときだけ使える。
出先のスマホ。
職場にある別のPC。
家族から届いた短い文章。
そういうものを、どこにいてもすぐ点字に変換できる選択肢が、まだ足りないと感じていました。
手札はありました。
HTML、CSS、JavaScript、PHP、Python、SQL。
点訳エンジンには、無料で使えるliblouisがあります。
形態素解析では、以前MeCabを少し触ったこともあります。
ただ、一人で形にするには時間が足りませんでした。
そこに、Claude Codeという強力な相棒が現れました。
「そのパソコンの前にいるときしか使えない」を、どこからでも使える形に変えたい。
そう思って、作り始めました。
🧱 ずっと置いていた二つの壁
🌐 点字に変換するエンジンを、ブラウザで動かす壁
点訳エンジンliblouisは、ローカル環境で動かしたことがありました。
次の課題は、それをブラウザの中で動かすことでした。
読み込み方。
ファイルの置き場所。
呼び出す経路。
一つ進むと、また次のエラーが出ます。
画面を目で追う代わりに、私はスクリーンリーダーの読み上げを聞きます。
読み上げられた内容を聞き取り、原因を考え、直して、また試します。
かなり地味で、根気のいる作業です。
ここをClaude Codeと一緒に進めました。
エラーを耳で聞いて伝える。
原因の候補を出してもらう。
書き換える。
もう一度試す。
何度かやり取りを重ねて、ブラウザの中でliblouisが点字を出すところまで来ました。
ずっと止まっていた箱を、やっと開けられたような感覚でした。
🗾 サーバーに頼らず、ブラウザだけで日本語を読む
もう一つの壁が、日本語の解析でした。
形態素解析といえばMeCabが定番です。
ただ、私が借りているWebサーバーでは、MeCabを動かせる環境がありませんでした。
そこでClaude Codeに、その事情を伝えました。
すると、ブラウザだけで動かせる別の解析方法を提案してくれました。
そのまま実装まで進めてくれました。
私は方向を確認しながら、必要な判断をしていきました。
気づくと、漢字混じりの日本語が、サーバーを使わずに、ブラウザの中で品詞ごとに切り分けられていました。
サーバーを介さない形にできたことで、「どこからでもアクセスできる」という目的に、かなり近づきました。
🛠️ 第一段階として、こんなものができた
こうして形にしたのが、日本語点字Web変換ツールです。
漢字混じりの日本語を貼り付けると、かな化、長音化、助詞変換、マスアケ処理を経て、6点点字に変換します。
一番大事にしたのは、ブラウザだけで動くことです。
インストールはいりません。
スマートフォンからも使えます。
料金もかかりません。
「どこからでもアクセスできる」ことを、最優先にして作りました。
精度には、まだ改善するところがあります。
日本語の点字規則は細かくて、かなり奥が深いです。
「お父さん」が不自然に分かれてしまう。
「普通」が期待どおりの長音にならない。
そういう見落としは、これから一つずつ直していく必要があります。
それでも、まずは実際に触ってもらえるところまで来ました。
🧭 開発の主役は、当事者の判断だった
今回の開発でいちばん大きかったのは、全盲の私が、開発の判断をする側に立ち続けられたことです。
エラーを聞き取る。
原因を考える。
修正の方向を決める。
もう一度試す。
これまでは、その一つひとつにかなり時間がかかっていました。
画面を目で追えないぶん、状況をつかむまでに何度も行ったり来たりする必要があります。
Claude Codeは、その行ったり来たりをかなり短くしてくれました。
「このエラーは何が原因か」
「この構成でブラウザだけで動かせるか」
「スマホでも使いやすくするには、どこを直せばいいか」
そう聞くと、実装の案を返し、コードを書き換え、次に試す道筋を出してくれます。
目で確認する部分。
手で打ち込む部分。
何度も試す部分。
そこを助けてくれる相棒がいることで、私は「何を作るか」「どう使われるべきか」を考える側に集中できました。
最後に決めるのは、当事者である私です。
点字としてどこが読みにくいのか。
スマホで使う人がどこで困るのか。
先生が授業準備で使うなら、どんな出力が必要なのか。
家族から届いた短い文章を、すぐ点字で読みたい人にとって、何が邪魔になるのか。
実際、Claude Codeが書いたコメントの一行が原因で、画面に変な文字が出てしまった場面もありました。
私はプログラマではありません。
それでも、「これはおかしい」と気づき、原因の見当までは自分でつけました。
この時の話は、別の記事にまとめる予定です。
AIが作業を進めてくれるほど、人間がどこで判断するのかは、前よりはっきり見えてきます。
そこが今回、私にはしっくりきました。
「そのパソコンの前にいるときしか使えない」を、「どこからでもアクセスできる」に変える。
それが今回、いちばんやりたかったことです。
🔮 これから先のことは、まだ分からない
今は、第一段階を公開した記録として書いています。
この先どこまで広げるかは、まだ白紙です。
ただ、頭の片隅に、小さな引っかかりが一つあります。
AIモデルが世界中から公開されているHugging Faceを見ると、中国語や英語の点字関連モデルはいくつかあります。
一方で、日本語の点字関連モデルは、私が見た範囲ではかなり少ない印象でした。
「なんで日本語のはないんだろう」
その問いだけが、今もぼんやり残っています。
今回も、知人のひとことから火が付きました。
小さな気がかりを置いておくと、いつかまた燃える日が来るかもしれません。
今は、それくらいの距離感で気になっています。
🙋 試してほしい、感想を聞いてみたい
教育や福祉の現場。
点訳ボランティア。
視覚障害の当事者や、そのご家族。
短いメモでも、家族から届いた一文でもかまいません。
気軽に触ってみてもらえると嬉しいです。
変換結果に違和感があったとき。
こんな場面で使ったよ、という体験があったとき。
コメントで一言もらえると励みになります。
次の火付けの材料として、大切に読みます。
「亀でいい、見た目は兎でいたい」
これが私のスローガンです。
今回も歩みは亀そのものでした。
でも、出来上がったものは少し兎の顔をしていると思っています。
相棒に感謝しつつ、私はまた次のぼやきを待っています。
📎 こちらもよろしければ閲覧御願いします
コードが書けなくても大丈夫。AIと4行プロンプトで作る「点字学習ゲーム」
https://note.com/kind_fish6099/n/n2de118efb856
今回のWebアプリより前、AIと4行のプロンプトで点字学習ゲームを作った時の話です。点字とAIの最初の交差点として読んでもらえると嬉しいです。
全盲の二人がAIを「第三の目」にして記事を書いた話
https://note.com/kind_fish6099/n/n2d6370489787
当事者がAIを相棒にして、判断する側に立ち続けるとは何なのか。今回の開発で大事にした感覚と地続きの話です。
見えない私がCLIをブラウザで使ったら、全部読めた話
https://note.com/kind_fish6099/n/na6f8b3952a40
「ブラウザだけで動かす」ことの意味を、別の角度から書いた一本です。今回の点字Webアプリと地続きの感覚で読んでもらえると思います。
🎬 見えない映像クリエイターが作った動画
全盲の私にとってAIは「生み出す道具」ではなく、「できない」を取り去ってくれるパートナーだった、というテーマで作った動画です。今回の点字Webアプリ開発でClaude Codeと組んだときの感覚にも、そのまま重なります。
https://www.youtube.com/watch?v=IH1r1bG4ypM
