目が見えない私が、AIで「編集部」を作って記事を書いた話
正直、少しさみしい。
AIツールの必要性や倫理性、便利さや著作権などの話は、毎日のように流れてくる。
でも障害者がAIで前に進んだ話は、ほとんど見かけない。
こんな使い方で前進できた。こう克服できた。
そういう話がもっとあればいいのにと思う。
だから自分で書いてみることにした。
🧑💻 私は全盲のクリエイターだ
初めてこの記事にたどりついた方もいるかもしれない。
目が見えない。
それでもnote、YouTube、プログラミングをやっている。
文章を書くのもコードを書くのも、使うのはメモ帳(Notepad)ひとつ。これが視覚障害者のスタンダードだ。
「0から1へ。1が大きいなら、0.1で。」これが私のモットーだ。
そしてある日、ちょっとした挑戦をしてみた。
AIの中に「編集部」を作って、1本の記事を書いてみたのだ。
🤖 1つのAIに聞くのではなく、7人を同時に走らせる
ChatGPTに「記事を書いて」と頼むのとは、まったく違う。
私が使ったのは、Claude Codeというツールだ。その中にあるエージェントチーム機能で、役割の違うAIを同時に走らせた。
新聞社の編集部みたいに、取材、構成、事実確認、文章の磨き、投稿前チェックを分業するイメージだ。
スクリーンリーダーでこれを回すには、応答が終わったことを把握する通知など一工夫いる。その話は別の機会に書きたいと思う。
今回は、編集部として動かしたときに何が起きたかだけを書いてみたい。
📝 「探し回る」から「選び取る」に変わった瞬間
まず、調査担当と資料担当が同時に動き出す。
一人が公式サイトなどからデータを集めてくる。
もう一人が私の過去記事やメモから、今回のテーマに使える素材を探してくる。
目が見える人なら、ブラウザのタブを10個開いてざっと目を通せるだろう。
私はスクリーンリーダーで一行ずつ聞くしかない。10ページ分の情報を耳だけで追いかけるのは、想像以上に時間がかかる。
それが、整理された状態で目の前に届くようになった。
私の仕事は「探し回る」から「選び取る」に変わった。これは大きかった。
次に、構成担当がタイトル案と見出しの順番を提案してくれる。
私はそれを見て、何を捨てて何を残すかを決める。
ここだけは、最初から最後まで私の仕事だと思っている。
何を、どんな順番で、どう伝えるか。ここは代わってもらえない。
🔍 書いたAI自身が気づかなかったミスを、別のAIが見つけた
ドラフトを読み返していたとき、校閲担当から指摘が入った。
本文中の数字が、調査担当が集めた一次情報と食い違っている、と。
書いたAI自身は気づかなかった。
でも別のAIが、元データと照らし合わせて見つけてくれた。
一つのAIに全部任せると、こういう食い違いはそのまま通ってしまうことがある。
人間の編集部でも同じだ。書いた本人は自分のミスに気づきにくい。
別の目で見るから見つかる。
AIでもそれは変わらないんだなと思った。
最後に、体裁担当と入稿担当が仕上げてくれる。
投稿先のルールに合わせて読みやすさを整え、タグ候補や文字数を確認して「このまま出せますよ」に持っていってくれた。
私にとってAI編集部は、時間を短縮する道具というより、作業そのものを成立させてくれる道具だった。
🚗 パワステと同じだと思うことにした
ふと思うことがある。私はラクをしているんだろうか。
身近なところにヒントがあった。
パワステがなかった時代、車のハンドルを回すには相当な腕力が必要だった。
パワステが普及して、力の弱い人でも運転できるようになった。
でもパワステを「ずるい」と言う人はいない。
どこに行くか、いつ曲がるか、どの道を選ぶかは、全部ドライバーが決めているからだ。
私にとってのハンドル操作も同じだ。
目が見える人は、Webページをざっと見て情報を集められる。
画面を分割して、デュアルモニターでマウスを行き来させながら作業もできる。
私はそれができない。
スクリーンリーダーで一行ずつ聞くしかない。
時間がいくらあっても足りなくなる。
AIの編集部は、その「目の役割」を補ってくれている。
情報を集める腕力。誤字を見つける腕力。体裁を確認する腕力。
ハンドルを握っているのは、私だ。
✍️ AIにできなかったこと
エージェントチームの協力を得て書いたのは、スクリーンリーダーの記事だ。
子どもたち、目は悪くならないでほしい→全盲クリエイターが語るスクリーンリーダー全11製品
AIの編集部は、11製品の正式名称を調べ、構成を整え、誤字をチェックしてくれた。
でも、記事の柱はAIには書けなかった。
PC-Talkerの日本語の漢字の読み分けが、長時間使っても疲れにくいこと。
NVDAでしか動かない開発ツールがあって、補助的に使い分けていること。
安いGalaxyでTalkBackを試したら、反応が遅くてもどかしかったこと。
MacのVoiceOverが丁寧すぎて、Windowsのキーボード操作に慣れた身には逆に使いにくかったこと。
新しいPCをセットアップしたとき、他のスクリーンリーダーを入れる前にNarratorが「とりあえず動く」安心感。
自作PCを組み立てたとき、マザーボードの極小4ピンコネクタをEnvisionで読み取って把握したこと。
これは全部、自分の手で触り、耳で聞いてきた体験だ。
AIが調べられるのはスペックや機能一覧であって、「使ったときにどう感じるか」までは書けない。
そして、子どもたちには目が悪くならないでほしいという切実な思い。
視力低下の統計に触れたとき、他人事ではないと感じた私の実感。
これもまた、AIには表現できないものだと思う。
調べる・整える・確認するという"腕力"はAIが担当してくれた。
でも、何を伝えるか。なぜ伝えるか。そこは最初から最後まで私の中にあった。
⚠️ 最後に、正直に書いておきたいこと
すべての音声読み上げソフトのユーザーがAIに詳しいわけではない。
ターミナル操作をベースにした環境づくりや運用ができるわけでもない。
私自身、ここに至るまでに何度もつまずいている。
だからこの話を、誰もが同じように再現できるわけではないことは素直に伝えたい。
だって、見える人でも、AIやターミナルが得意な人ばかりではないから。
それでも私は、0.1ずつ積み上げていきたいと思う。
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視覚障害者がAIと相性がいい理由 ― プロンプトより大切な"条件整理"の話
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🎬 見えない映像クリエイターが作った動画
【想像をAIで映像化】白杖に目をつけて街を歩いてみた
全盲クリエイターがAIで映像を作る。まさに今回の記事テーマそのものです。
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