そのAI、ネットにつながず動きますか — 見えないクリエイターがポケットの中のローカルAIに触れてみた
🆓 その「無料」、いつまで気持ちよく使えますか
LINEを開くたびに、広告が増えた気がする。便利だから使い続けているけれど、最初の頃のすっきりした感じは、もうどこかへ行ってしまった。
無料で使わせてもらうかわりに、こちらの時間と注意が、少しずつ持っていかれている。
同じことが、これからのAIチャットにも起きると思っている。実際、OpenAIは2026年1月にChatGPTへの広告導入を発表し、2月からアメリカでテストを始めた。日本も対象に入る予定だという。
いまは高い有料プランこそ対象外だが、LINEがたどった道を思い出してしまう。
だから私は、別の選択肢に興味を持った。スマホの中だけで動く、ローカルAI だ。
使った機種やAIの正式な名前といった細かい技術の話は、記事の最後にまとめてある。途中は気にせず、まずは気軽に読み進めてほしい。
💻 パソコンの話だと思っていた
自分の機械だけでAIを動かす話は、高性能なパソコンを持つ人のものだと思っていた。そうではなかった。
スマホの中でも、AIは動く。ネットにつながっていなくても返事をする。打った言葉も見せた写真も、どこかのサーバーに送られない。電波の弱い場所でも、海外でも止まらない。
あなたは、自分の書類や写真を、どこの誰が触っているかも分からないサーバーに預けることに、ためらいはないだろうか。私はあった。
目が見えないぶん、中身を自分の目で見返せないものを外に出すのは、ずっとどこかに引っかかっていた。それが手元だけで完結する。この安心感は、すてがたい。
そして私は、それを自分のiPhoneで確かめてみた。もう新しくはない、iPhone 13 mini。さて、どこまでいけるのか。
💥 まず、あっけなく落ちた
最初に評判のいいモデル(Googleの小型AIの、少し大きめのもの)を入れたら、読み込み途中でアプリごと落ちた。
私のiPhoneが非力だから、と片づけられる話ではない。たしかに13 miniは、今となってはスペックの低いほうだ。
ただ、動くか動かないかを最初に決めたのは、計算の速さではなく、メモリ(一度に作業できる広さ) だった。
メモリを作業机の広さにたとえると、AIを動かすのは机に道具を広げることだ。机が狭ければ、大きなAIははみ出して崩れる。
私の13 miniは、その机が狭すぎた。賢いかどうか以前に、机に乗らなかったのだ。
🔥 限界を探して、熱で気づいたこと
もっと小さいAIを探すしかない。音声読み上げでモデル一覧をたどり、重い版を選んではまた落ちた。
何度も試し、ようやく収まる上限が見えた。Metaの小さなLlama 3.2 1Bだ。
これは動いた。画面に最初の一文が出たとき、思わず手が止まった。ネットを切ったこの小さな機械が、たしかに自分の中だけで言葉を作っている。
いちばん驚いたのは、返事の中身ではなかった。スマホには冷却ファンがない。少し動かしただけで本体がはっきり熱くなって、「ああ、本当にこの中で計算しているんだ」と納得した。
この熱が、AIが手元で動いている何よりの証拠だった。
😅 動いた。でも日本語で話しかけたら
うれしくなって日本語で話しかけた。「自己紹介してください」。
返ってきたのは「以下のようなことをご案内します。以下のようなことをご案内します……」と、同じ一文の繰り返しだけ。文字が出る速さは悪くないのに、言っていることは空っぽだった。
プログラムも書かせた。「ブラウザで動くゲームを作って」。土台のコードは最後まで出たが、中身は同じだった。
肝心の動く仕掛けが抜けていて、開くと黒い点が一個出るだけ。遊べない。

あと一歩なのに届かない。私のiPhoneで動かせるAIは、ここまでだった。
🛠️ では、もし8GBだったら
机がもう少し広いスマホなら、どうなのか。それを確かめるため、家の力の強いパソコンを借り、8GBのスマホが動かすはずのAIを走らせて、返事の中身だけを覗いた。
ここは曖昧にしたくない。これは「iPhoneで動かした」ではなく、広い机のスマホなら手に入るはずの賢さを、別の機械で代わりに見ただけだ。速さや発熱は本物とは違う。
それでも、出てきた返事は別世界だった。日本語の自己紹介は自然で意味が通り、ゲームも遊べる形で返ってきた。クリックすると背景の色が変わる、シンプルだが、きちんと動くゲームだ。

同じローカルAIでも、机の広さがひとつ上がるだけで結果はここまで変わる。分かれ目は、新しさでも値段でもなく、机の広さ、つまりメモリだった。 私の機械が、たまたまその一歩手前だっただけだ。
目の見えない人に定番のiPhone SEに当てはめると、第2世代は3GB、第3世代は4GB。第3世代は私の13 miniと同じ机の広さで、同じ壁の前にいる。
一方、新しいiPhone 16eや17eは8GB。SEから同じ廉価ラインに替えるだけで、私がパソコンで覗いた広い机が、最初から手元にある。
🚧 全盲の私にとっての、二重の壁
最後に、目の見えない私ならではの話を。AIの日本語が崩れて同じ言葉を繰り返したとき、画面が見える人なら一目で「壊れてる」と分かって止められる。
でも音声で聞く私は、その崩れた文章を最後まで読み上げられてしまう。気づくのにも止めるのにも、ひと手間よけいにかかる。
アプリ自体も英語表示が多い。日本語で入れるアプリは途中で詰まり、よく動くと評判のアプリは入口が英語。どこかで必ず引っかかる。
これが私の「デジタルとアクセシビリティの壁」の、いまの姿だ。
📱 うまくいかなかった。それでも残ったもの
うまくいかないことばかりだったけれど、ポケットの中でAIが動く感覚を一度つかめたのは大きい。
机の広いスマホなら、ネットにつながず、広告も入らず、賢いAIを自分のものとして持ち歩ける。クラウドに広告の波が来る前に、そんな逃げ場が用意されつつある。
それを知っているかどうかで、これからの選び方は変わると思う。
0から1へ。1が大きいなら、0.1でいい。 今回の私は、たぶん0.1。でも、机の広さの正体が分かっただけでも、前に進んだ。次は、もう少し机の広いスマホで、続きを試したい。
(次回予告)今度は逆に、机を思いきり広げてみた。自宅の24GBのGPUマシンで、スマホには乗らない大きめのGemma 4、26Bと31Bを動かした記録を、機会があったら別の記事に書いてみたい。
(今回の環境)
端末: iPhone 13 mini、メモリ4GB
アプリ: PocketPal AI
動いたモデル: Llama 3.2 1B
落ちたモデル: Gemma 2 2B
「8GBなら」の検証: 家のパソコン上のGemma 4 E2Bで中身だけを確認。本物のスマホでの速さや発熱は確かめていない
よく使われる機種のメモリ: iPhone SE 第2世代が3GB、第3世代が4GB、iPhone 16eと17eが8GB
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ポケットの中のAIに触れた話、いかがでしたか。手元で動かすこと、端末を選ぶこと、そして大手に預けすぎない安心。今回つながった三つの糸を、それぞれ深掘りした過去記事を置いておきます。お時間があれば、こちらもなぞってみてください。
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