改善策を導入したのに、現場の残業だけ増える──業務コンサルが「やめる仕事」を先に合意する
新しい業務システムを導入し、操作説明も終わった。報告会では「予定どおり稼働」と言える。ところが現場では、新画面への入力が終わったあと、以前の表計算ファイルにも同じ内容を転記している。管理者は新しい一覧を確認しながら、念のため古い帳票にも目を通す。改善したはずなのに、退勤時刻だけが遅くなる。
業務コンサルにとって、これは厳しい結果だ。仕組みを入れたことは説明できても、現場の仕事が軽くなったとは言えない。導入後の残業が増えれば、提案の実行可能性や現場理解まで問われる。
僕は、新しい手順を決めるだけでは業務改善は完了しないと思う。先に合意したいのは、「何を始めるか」と対になる「何をやめるか」である。現場、管理者、スポンサーが、旧作業を一つ選び、いつ、どの条件で終えるかを決める。その終了合意がなければ、新旧の仕事は安全の名の下で重なり続ける。
新しい仕事は始まるが、古い仕事は自然には消えない
新手順には、開始日、操作方法、担当者が置かれる。説明会があり、マニュアルがあり、稼働判定もある。一方、旧手順には終了日がないことが多い。「落ち着くまで」「念のため」「問題がなければ」といった言葉だけが残る。
古い作業が続くのは、現場が変化に抵抗しているからとは限らない。旧帳票が監査時の根拠だった。管理者が例外を見つける場所だった。障害時に業務を止めない控えだった。新しい仕組みが、その役割まで引き継げるか確認できていなければ、現場は簡単には手放せない。
だから、「もう新システムを使ってください」と伝えるだけでは足りない。旧作業が何を守っていたのかを確認せず廃止すれば、不安だけが増える。反対に、その役割を曖昧なまま残せば、二重運用が恒久化する。
やめる仕事を一つに絞る
全旧業務を一度に廃止しようとすると、例外や責任の議論が広がり、合意できない。最初は、負荷が大きく、新手順と明らかに重複している作業を一つ選ぶ。
ここからは仮想例で考える。新システムで申請状況を確認できるようになったのに、毎夕、担当者が一覧を表計算へ転記し、管理者へメールしているとする。このとき「旧一覧をやめる」とだけ決めるのではなく、旧一覧が担っていた確認を分ける。
管理者は何を見ていたのか。未処理件数か、期限超過か、特定金額以上の申請か。新システムで同じ確認ができるのか。できない例外はどれか。障害時の代替は何か。ここが分かれば、残すべき安全装置と、単なる重複作業を分けられる。
終了条件を、三者の会話にする
旧作業の終了を現場担当者だけへ任せると、「問題が起きたら自分の責任になる」という不安から止めにくい。業務コンサルだけで廃止を宣言すると、運用上の例外を見落とす。スポンサーだけが期限を決めても、日々の判断方法が残らない。
必要なのは、現場、管理者、スポンサーが同じ終了条件を見ることである。
たとえば、こう置く。
「新システム上で未処理と期限超過を管理者が確認でき、二週間の並行確認で差分が出なければ、毎夕の表計算転記を終了する。障害時だけ所定の控えを使い、復旧後に廃棄する」
二週間という期間は仮の例であり、標準ではない。大切なのは、誰が、何を確かめたら、どの旧作業を終えるかが一文で読めることだ。差分が出た場合は、旧作業を無期限に戻すのではなく、新手順の不足か、例外条件かを特定して再び終了日を置く。
終了合意には、再開条件も必要である。障害時、監査指摘時、特定の例外が出たときに、誰が一時的な旧手順を指示し、いつ解除するか。再開だけ決めて解除を決めないと、緊急対応が再び恒久運用へ変わる。通常運用と例外時の控えを分け、例外が終わったら何を廃棄・停止するかまで置く。
現場から「念のため残したい」と言われたら、反対せず、何を心配しているかを具体化する。データ欠落、承認漏れ、問い合わせ対応、責任追跡。その心配を新手順の確認で扱えるなら旧作業を終えられる。扱えないなら、旧作業の全部ではなく、必要な安全装置だけを新しい運用へ組み直す。
導入実績を、仕事が減った証拠へ変える
業務コンサルの成果を、稼働日や利用者数だけで残すと、現場負荷の変化が見えない。導入後には、新しく増えた作業と、実際に終了した作業を並べる必要がある。
残業時間が減ったと断定するには、実在する勤怠や業務記録の確認が要る。ただし、その前でも、毎日行っていた転記を終了した、二つの確認を一つに統合した、旧帳票の承認を廃止したという業務変化は記録できる。改善策を入れたことではなく、何をやめられたかが実装の証拠になる。
新しい仕組みを増やすだけなら、現場は古い安全装置を抱えたまま仕事を足す。業務改善で問われるのは、便利な機能の数ではなく、守るべきものを保ちながら不要な仕事を終えられたかである。
あなたの改善施策で、開始日は決まっているのに終了条件がない旧作業は、どれでしょうか。

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