ドイツ一人旅_写真撮影_09_07【海外旅行】
1999年冬 9日目 フュッセン
Nさんは橋の真ん中でなかなか撮影できないでいた。
なぜかというと、首からぶら下げている、その小柄な体格には似合わないほどの大きな一眼レフカメラのせいである。
そのカメラで撮影するには左手でしっかりと固定してピントを合わせ、右手でシャッターを切る必要がある。
つまり、手すりから両手を離さなければならないのだ。極度の高所恐怖症のせいか、その両手をなかなか離せないので、いつまで経っても同じ格好をしていた。
僕は立ち止まり見守っていた。しかし、なかなか決心がつかないらしい。あまりプレッシャーをかけるのも良くないと思い、見守るのをやめて白亜の城を眺めることにした。
『カシャ』
Nさんを見ると先ほどと同じ格好のままだった。しかし確かにシャッター音は聞こえたはずなので一瞬で撮影したことは間違いない。僕は元きた道に向かって歩き出した。
「ちょっと待って…、まだ撮りたい…」
後ろから声が聞こえた。まだ、とはもう一回撮影したということだろう。何しろ先ほどの素早い撮影ではピントが合っていない可能性が高い。
僕は立ち止まり、再び白亜の城を眺めることにした。チラッと横目で見ると、今度は恐る恐る両手を離しているところだった。慎重にカメラを構えて『カシャ。カシャ』と2度シャッターを切った。僕と視線が合うと、緊張の糸が切れたような声でいった。
「撮れた~」
まあ、何はともあれ最後まで一人でやり遂げたのだから立派だ、と僕は偉そうに思った。
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