春の風_05💉_【でこぼこ】【シロクマ文芸部】
春の風で舞った桜の花びらが肩にのると、佳雄がそっと取ってくれた。
佳雄の高校の入学式からまだ1年も経っていない。その佳雄がもうこの世にいないだなんて…
息子である佳雄の葬式を終えて、優子は何も手につかない状況であったが、一日中家に閉じこもっていると気が狂いそうになり、看護の職場に復帰することにした。
どこの病院も看護師不足で、看護の仕事は苛烈な状態が続いていた。その忙しさのおかげで業務に集中でき、他のことを考える余裕がなかったことは、優子にとって幸いだった。
佳雄の葬式のことはあまり覚えていない。しかし、ひとつだけ気になっていることがあった。それは、佳雄の友人の渡会凌太からかけられた言葉だった。
「佳雄のお母さんの画像がSNSで拡散されていました」
いったい何の画像が拡散されていたのだろうか?後日、警察官と捜査の進捗について話を聞く際に尋ねてみた。
「佳雄の友人から、私のことについてSNSで拡散されていたと聞いたのですが、なにかご存知ですか?」
「SNSの拡散の件ですね。ええ、そちらについても捜査を行っております」
「いったい、なにが拡散されていたのでしょうか?」
「ええ、まあ、いろいろと…」
「いろいろって、どういうことですか?」
「まあ、捜査に関わることなので…」
「教えていただけないんですか?」
「いや、まあ、その…。お母様が、その、夜の仕事をされていると…」
「夜勤のことですか?」
「いや、その夜勤ではなくて…」
なんだか奥歯に物が挟まったような言い方だった。
ショートストーリー?をつなげて連載中です。毎週金曜日頃投稿予定です。目次に各話のリンクを貼っていますので振り返りにどうぞ。
小牧幸助さんの企画に参加しています。
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