見出し画像

小説『Snowdrop Surfer』第十二話:【英雄への憧れと、謎の言い伝え】

(簡単なあらすじ)
理不尽な左遷により、北海道の赤字企業で四刀流の過酷な新社長業に奮闘する元芸人、トップセールス・佐々木真二郎。

前回、松原から、権田が過去に部下を「生贄」にして雪明とのトラブルを隠蔽した事実を聞く。さらに出張先の東京で再会した戦友・田脇に現状を打ち明けると、この北海道への左遷こそが真二郎を合法的に潰すための「完璧な処刑台」であると指摘され、全ては仕組まれた罠だったと確信する。
(第十一話)

【前回】

第十二話:【英雄への憧れと、謎の言い伝え】

東京での会議を終え、新千歳空港に降り立った俺を
冷たい北風が容赦なく出迎える。

「……それって、無理ゲーじゃないですか」

田脇の残した言葉が、この北風よりも鋭く、
防寒のダウンを突き抜けて俺の胸に突き刺さる。

(「無理ゲー」、か……
でも、もし歴史の偉人達だったら、こんな窮地をどう脱すると言うんだろう......)

俺は、帰りの雪道に車を走らせながら、
そんな物思いにふけっていた。

いや、『下手の考え休むに似たり』か、

北海道に戻ってきたら、やっぱり、
ジンギスカンでパワーチャージするか。

でも、先週も食べた気がするな。

俺は小学校の頃から、かなりの歴史好きだった。

図書室では、皆が恐竜や謎解き漫画を読む中、
俺だけが『歴史まんが』ばかり読み進めていた。

そんな俺を特に惹きつけたのは、
戦の天才・『源義経』だった。

奇襲攻撃、八双飛び ───
小よく大を制し、
軽やかで鮮やかに戦場を駆け抜けるその姿に憧れていた。

そして、ある時、
『佐々木』という名字の祖先に、

あの牛若丸と全く同じ「源義経」という字を持ちながら、
「みなもとのりつね」と読む武将がいることを発見した。

後に、
「佐々木義経(ささきのりつね)」と名乗る、
宇多源氏の血を受け継ぐ人物だった。

それを知ってから、子供の頃の俺は、
どこかで、牛若丸の源義経に、
『遠いご先祖様のような縁』を感じるようになっていた。


数日後、営業の空き時間。

俺はふらっと、街外れのブックオフに車を停めた。

古本屋特有の、乾いたインクと微かな埃の匂いを感じながら、
ビジネス書のコーナーを一通り見渡す。

小説のコーナーに足を向けると、
平台に置かれていた一冊にスッと目が留まった。
表紙に大きく『義経』と書かれた厚めの文庫本だった。

「そういえば、
先週行った美味いジンギスカン屋の名前も『義経』だったな……」

そんな些細な繋がりを感じながら手に取ると、
背表紙の100円の値札を思わず二度見して、俺はそのままレジへ向かった。



その夜。
食事を終え、明日の用意をしようとビジネスバッグを開けると、
昼間買った『義経』の表紙が再び目に飛び込んできた。

そういえば、100円で買ったんだったな

そんな軽い気持ちで、パラパラと目次に目を通す。

源義経の幼少期、生い立ち。

好きだったとはいえ、実際には、
子どもの頃に牛若丸の絵本で見たことと、

歴史まんがや教科書に書いてあるぐらいの知識しか無かった俺だったが、

気づけば、小一時間が過ぎるほど、
小説『義経』の世界にのめり込んでいた。

そして、明日の仕事の用意を一通り済ませると、
俺はまた『義経』を開いた。

源義経の苦しんだ幼少時代。

孤独、理不尽、不条理の中で牙を研ぐその姿に、
過去に自分が苦しんだ状況や、
今の境遇を重ね合わせ、

小説の中で、
源義経と共に過ごしている感覚になるほど感情移入していた。

そして、半分近くを読み終えるころだった。

ページの余白に、
なぜか不自然なほど達筆な文字が目に飛び込んできた。

(おいおい、めっちゃ大きい落書きあるじゃん。
しかも達筆……
ちゃんと中見て買えばよかったよ。

まあ、100円だったからな。そういうことか。
でも、これ何て書いてある……?)

筆ペンで書かれたようなその文字は、こう記されていた。

『水龍と天弓が交わり、風が・・・』

いや、何このドラクエの言い伝えみたいなやつ(笑)

しかも、「・・・」って。

風が、何なのよ。

風が・・・って。

書くなら、最後まで書いてよ!
そのあとめっちゃ気になるし!!

前の持ち主のイタズラ感には呆れたが、
100円本との出会いにくすりと笑い、
その日は、そこまでで読むのを止めた。

翌朝。
冷え込んだキッチンで熱いコーヒーを淹れながら、
昨日の『あの達筆な文字』が不意に頭に浮かんだ。

『水神と天龍、、、?』
なんだっけ?

(……意外と、続きが知りたくなっていた)

なんで途中で終わってるんだよ。
気になりすぎる。

もしかして、
権田を倒す『勇者の剣』のありかなんじゃないのか?

昼休み、急ぎ早にランチを済ませた俺は、
おもむろにあのブックオフへと車を走らせた。

一直線に小説コーナーへ向かい、棚の奥を探る。

「……あった!」

一冊だけ残っていた
『義経』の『下巻』。

無我夢中でページをめくる。
パラパラという紙の音が、急ぎ足の心音と重なる。

だが、そこに「続き」の落書きはなかった。

ふう、と小さく息を吐き出す。

そりゃ、そうだよな。
だって、そもそも同じ人が売った『上巻』と『下巻』じゃないかもしれないもんな......

というか、なんなんだよ、あの落書き......!
『水球と天丼、、、!!』

続きを教えてくれよ!

勇者の剣は!?

Tell me why!!

とか、ぶつぶついいながらも、

俺はしっかりと背表紙の100円の値札を確認し、

義経の下巻を購入して店を出た。

第十二話も最後まで読んでいただきありがとうございます!

▼続きはこちら

▼こちらは、まとめ読み用マガジンです。

▼1~10話をまとめた公式ガイドブックはこちら

▼自己紹介です。
『Instagram』&『X』もやっていますので、
ぜひフォローいただけると嬉しいです。


いいなと思ったら応援しよう!