#21【家庭教師は超有名進学校⚪︎⚪︎高校の⚪︎⚪︎―黒い男の正体】中学生の記憶⑧
"2年の不良グループ"
に見つからないように
息をひそめて過ごした日々
(不良グループの章はこちらから↓)
そして男子生徒が800人もいるというのに
恋をすることもなく
かずや君の思い出を引きずったまま
一年が過ぎていた
2年生になったある日、そんな私の前に
“条件付き”が現れた
家庭教師は20代の女性だったけど
たまに"黒い男"が追加された
真っ黒に日焼けした顔
ギョロッとした大きな目
そして近づいた瞬間に
ヤニ臭い息と、ヤニ臭い指
そして手にはタバコ

自己紹介もなく
「はい、始めましょ」
いきなり勉強開始
早口でペラペラと教材をめくり
カチッとタバコに火をつける
吸っては消し、吸っては消し
絶えず口にくわえられるタバコ
煙がゆらゆらと漂って
部屋の中がどんどん煙にまみれてゆく
勉強どころじゃない…
問題文が頭に入る前に
煙が先に入ってくる
その黒い男は
熱心に教えるわけでもなく、怒るわけでもなく
ただ、そこにいて
ただ、時間が過ぎるのを待っているような
妙に静かで冷たさを感じる人だった
後々知ることになるのだけれど
この黒い男はなんと
超有名進学校の校長先生だった
ほんとに有名な学校で名前を出せば
「ああ、あそこね」ってみんながうなずくレベル
なぜそんな人が私の家にいるのか
ほんとにうちの家は謎が多い
そしてやけに母と仲が良い
私にとって
この黒い男との“お勉強時間”は
なかなかの試練だった
勉強が嫌なんじゃない
そこは、ほら一応“いい子”でやってきたから
2人きりの空間と
タバコの煙と
あのヤニ臭い息
中学生には強烈すぎる、集中なんて出来ない
呼吸をどうするかで精一杯だった
あれは人生において、何の
“耐える訓練”
だったのだろうか
『立派な肩書きをもった大人』が吐き出す理不尽を
ただ黙って吸い込み続けなければならなかった
あれは、学びの時間なんかじゃない
逃げ場のない、私の絶望

そしてあの黒い男は
私に勉強を教えるためだけに
来ていたのだろうか…

次回
#22 【嗚咽しながら泣き崩れた夜】中学生の記憶⑨
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