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AIエージェントに会社を覚えさせる方法

前回、AIに経営させるために「人に使いやすい」ではなく「AIに使いやすい」で情報基盤を設計した方がいいという話を書きました。では、AIにとって使いやすい環境とは何でしょうか?

私たちが選んだ答えはGitHubでした。

GitHubはもともとエンジニアがコードを管理するためのツールです。でも使ってみて分かったのは、AIエージェントとの親和性が圧倒的に高いということ。なぜなら、GitHubにはAIが自律的に仕事を進めるための仕組みがすべて揃っているからです。

今回は私たちがAIに会社を覚えてもらうためにやったことを、順を追って説明します。


ステップ1:フォルダ構成を決める

最初にやるべきことは、情報の「器」を作ることです。

AIに仕事をさせるとき、ファイルがあちこちに散らばっていると、AIはどこに何があるか分からず迷います。同じファイルを複数コピーして履歴管理していたり、適切なフォルダに入っていなかったりすると、AIのパフォーマンスは出ません。

だから、最初からフォルダ構造を決めて、ファイルはAIに自動的に整理させるのがポイントです。私のおすすめはこんな構成です。

AIが理解しやすくフォルダを設計しましょう

このフォルダ構成のルールをAIに教えておけば、AIは新しいファイルを適切な場所に保存してくれます。人間が整理する手間はなくなります。

ステップ2:AIに会社を理解させるマニュアルを書く

器ができたら、次はAIに「うちの会社はこういう会社です」と教えます。

ChatGPTやClaudeに経営の相談をしたことがある方は多いと思います。でも、毎回「うちの会社はこういう事業をしていて、こういう戦略で…」と一から説明するのは大変です。しかも説明しきれない部分も多い。

そこで、AIが最初に読む「会社のマニュアル」を作ります。Claude Codeの場合は「CLAUDE.md」というファイルがこの役割を果たします。具体的には、こういった内容を書いておきます。

  • 事業概要 … 何をやっている会社なのか、ビジョン

  • 経営戦略の要点 … 戦略概要、方向性、重点テーマ、やらないこと

  • 用語集 … 社内の略語や専門用語の意味

  • 組織体制 … 誰がどの領域を担当しているか、キーパーソンの役割

  • ファイルの場所 … 経営戦略はここ、議事録はここ、決算情報はここ

  • ルール … AIにやってほしいこと、やってほしくないこと

  • 経営者の判断基準 … (可能なら)自分がどう世界を見ているか、意思決定の前提となる考え方

このマニュアルをClaude Codeの場合はExecutiveフォルダ直下に置いておくと、AIエージェントは仕事を始める前にまずこれを読みます。すると、毎回ゼロから説明する必要がなくなる。AIが最初から会社の全体像を把握した状態で仕事をしてくれるわけです。この差は想像以上に大きいです。

「戦略を文書化するのはハードルが高い」と感じる方もいると思います。

おすすめは、音声入力です。iPhoneなどに向かって、自分が考えていることをひたすら話す。整理されていなくていい。思いつくままに話したメモを、AIに「これを経営戦略としてまとめて」とお願いすれば、構造化された文書がすぐに出来上がります。完璧なドキュメントを最初から書く必要はありません。

ステップ3:会社の情報が自動的に貯まる仕組みを作る

マニュアルだけではAIが仕事をするには情報が足りません。生きた情報が必要なわけです。AIが参照できる情報を、どんどん増やしていく必要があります。

私のおすすめは、議事録から始めることです。

ファームノートでの議事録自動作成の流れ

ファームノートでは、n8nという自動化ツールを使って、Google Meetで文字起こしを自動作成し、Geminiで議事録化して、MarkdownファイルとしてGitHubに保存する仕組みを作りました。これを全社に展開したところ、短期間で700本ほどの議事録が自動的に蓄積されるようになりました。

ちなみに先ほどのマニュアルに用語集を設定しておくと、議事録を作成させるときに精度が上がります。おすすめです。

議事録が良いのは、会社のリアルタイムな動きがすべて入っているからです。誰が何を議論して、どういう結論になったか。AIがこれを読めると、「会社で今何が起きているか」を把握した上で仕事をしてくれるようになります。

議事録の次は、同じくn8nで決算データやKPI、業界ニュースなども自動取得してGitHubに流し込んでいきました。手作業でファイルを移すのではなく、情報が自動的に貯まっていく仕組みを作る。これがポイントです。

なぜMarkdownかは前回も書きましたが、AIが最も正確に読める形式だからです。Google DocsやWordの書式情報やコメント履歴はAIにとってノイズになる。Markdownならテキストだけで構造化されているので、AIが文脈を正確に把握できます。

(余談:ちなみにファームノートでは、すべてのKPIや牧場の生産データはBigQueryに保存しています。AIにBigQueryを直接叩かせることもできますが、あえてCSVに落としてGitHubに置いています。そうすることで、データもGitHubの履歴管理の対象になるからです。)

ステップ4:AIに仕事の進め方を学んでもらう

会社の情報が揃ったら、次はAIに「どう仕事を進めるか」を教えます。

やり方は、社員を育てるのとまったく同じです。

  1. まず、作業の意図と指示を出す。 
    たとえば「今月の決算データを分析して、前月比で大きく変化したKPIとその要因を整理してほしい」と伝える。

  2. 次に、出てきたアウトプットを確認し、フィードバックする。
    例えば「この分析は表面的すぎる。セグメント別に分けて、構造的な要因まで掘り下げてほしい」「この表現はうちの経営会議では伝わらない。もっと具体的に」と返す。

  3. そして、改善を指示する。
    AIはフィードバックを反映して、次からは精度が上がる。

このループを回していくと、Claude Codeの場合は、こうした業務のやり方をスキルファイルとして保存できます。私がやっているのは、経営業務をひとつずつスキル化していく(経営分析の作り方、戦略文書の更新ルール、戦略検討方法など)ことです。

指示 → 確認 → フィードバック → 改善。社員と同じサイクルを回すからこそ、仕組みとして定着するのだと思います。

さらに面白いのは、AIが自分で仕事のやり方を改善してくれることです。「この分析の精度を上げるにはどうすればいいか」と問いかけると、自分のスキルやルールを修正する提案をしてくれる。確認して承認すれば、次からは改善された方法で仕事をしてくれます。

Githubじゃなきゃダメなの?

「GitHubはハードルが高い。NotionやGoogle Driveでもいいのでは?」と思う方もいるでしょう。

私の感覚から言うと、慣れるまではNotionはありです。NotionにもMCP(AIがデータを操作するための接続口)があるので、AIからNotionのデータを読み書きできます。いきなりGitHubに移行するのが難しければ、Notionから始めるのは現実的な選択です。

Google Driveなども、情報がきれいに整理されていれば使えます。ただし、ステップ1で書いたように、ファイルが散らばっているとAIのパフォーマンスは出ません。

GitHubを推す理由は、AIが作業した記録が自動的に残ることです。AIに仕事をさせると、AIが自動的に作業記録(コミット)を保存してくれます。さらに重要な変更の場合は、「こういう変更をしました。確認してください」と変更提案(プルリクエスト)を出してくれる。これは部下が企画書を持ってきて「確認お願いします」と言うのとまったく同じ流れです。

もうひとつ、GitHubを推す理由があります。それは安全性です。

AIは一瞬で数十のファイルを編集します。判断を間違えたとき、被害も一瞬で広がる。NotionやGoogle Driveは大量のファイルが壊れたときに一括で元に戻すことができません。GitHubなら、コマンドひとつでファイル全体を任意の時点に巻き戻せます。

つまり、Claude Codeを車に例えるなら、GitHubはシートベルトです。

シートベルトなしで車を運転すると怪我する確率が上がる。それと同じです。AI時代にはいつでも元に戻せるという安全なシステムが必要なのです。

さらにチームでAIを使う場合は、「ブランチ」という仕組みも活きてきます。作業スペースのコピーを作るようなもので、誰かのAIがファイルを壊しても、他のメンバーの作業や本体には影響しません。

「GitHubは人が使いづらいから社内に浸透しない」という声はあると思います。正直、その通りですし、うちもまだまだ経営チームでの利用頻度にばらつきがあります。

でも、AIが文章を書き、分析を作り、ファイルを整理してくれるようになると、人間が直接ファイルを編集する場面自体が減っていきます。人が使いやすいツールの必要性が、どんどん薄れていく。今はまさにその転換期だと思っています。

※2026年3月、Google Workspace CLIプレビュー版が出ました。これが正式版になれば、DriveとGitHubを共存運用できるようになる可能性があります。

まず、始めてみる

ここまでお疲れ様でした。いきなり全部やる必要はありません。ファームノートも最初は経営ドキュメントだけでした。

まとめです。

1. フォルダ構成を決める(ステップ1の構成をそのまま使ってもOK)
2. 会社のマニュアルを作る(文章が苦手なら音声入力で話して、AIにまとめさせる)
3. 情報が自動的に貯まる仕組みを作る(特におすすめは議事録)
4. AIに読ませて、質問してみる(問題があれば改善を即す)

これを進めていくと「こんなに的確に答えてくれるのか」と驚くと思います。AIはいきなり精度が上がるものではなく「育てていくもの」です。社員の皆さんに仕事を覚えてもらうのと同じですね。

ここまで準備できれば、ClaudeアプリからGitHubを接続するだけで、スマホから指示を出せるようになります。前回書いた「iPhoneに話しかけて経営する」は、この仕組みがあってこそ成り立つのです。

AIは大量の情報を読み込めます。でも、整理されていなければパフォーマンスは出ません。AIの能力を引き出すのは、情報の整理の仕方次第です。

あなたの会社のAIは、会社のことをどれだけ知っていますか?

次回は、この仕組みの上に「AIでマネジメントチームを作ったら経営がどう変わったか?」の話を書きます。ひとりのAI社員が、10人のチームになったら何が起きたか。お楽しみに😎


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