【第8回】 私立古賀裕人文学祭:募集要項
開会の言葉
桜の季節になりましたが窓の外は雪景色、皆々様におかれましては年度末の予算使い切りに向けご多忙のところ本日はお集りをいただき誠にありがとうございます。只今ご紹介に与りました、古賀コン8実行委員長の古賀裕人でございます。
さっそく本題ですが、皆さまは「自分の親の泣くところ」、見たことございますでしょうか。
急にこんな話でごめんなさい。実はわたくし、うんこを漏らしまして。
何かおかしいなぁと思ったんです。
カーテンの隙間から零れる朝日に照らされて、パチリとそのピュア可愛いおめめを覚ましますと、ほのかに感じる温かみ。じんわりなんだか温かい。
でもそこって、でもでもそこって朝、目が覚めたときに、温かみを感じても良い場所なのカナ~?って。
もしかしたら、感じては、いけない場所じゃないのカナ~?って、寝ぼけ眼と呼ぶにはあまりにもクリクリとしすぎたおめめでそう思ったんですそんな風に思ったんです。
あぁ幼少期、母に抱かれたあの温かみでもなければ、よちよち歩きで初めて猫に触れたあの時の温かみでもない。
出来たてでバユンバユン揺れている台湾カステラのあの感じでもなければ、雑なバニラアイスにかけて楽しむ誇り高きエスプレッソのあの感じでもない。
思い返せば先週の金曜日、会社からボーナスの代わりにと送られてきた牡蛎、あの牡蠣、社長の友人が卸しているとか何とか言っていた牡蛎、あの牡蠣、新の鮮でプリプリプリとしたあの牡蛎が届いたもんですから、わたくしはそいつをやぁっ!と湯がいておろしポン酢で食べてみたり、えのきと一緒にでやぁっ!と醤油バター炒めにもしたりなんかして、一度にバクバクバクッとね、二十個以上も一気食いをしてしまったんですよね。バクバクバクッとね。
あればあるだけの仕事を一気にこなすタイプの男はね、牡蛎だってあればあるだけ食うんです。
そんなところがわたくしのキュートな一面であることに異論はありませんが、こう見えて今年で三十七歳になりますから、その厚い胸板の内に一片の自制心くらい持ち合わせていなくてはと、そんなご先祖様からのお小言をビンビンのアストラル体に受容しながらゆっくりと、ゆ~っくりと布団を出て、そっと、そ〜っとお風呂場まで行ってスウェットとパンティをガババッと同時に下ろします。
「くっ…殺せっ…!」
記憶は曖昧ながらもそんな言葉が口から零れた気がします。
三十七年前、わたくしは東京都の江戸川区に古賀家の長男として生を受けました。
ふたつ下にはもち巾着みたいに膨れた弟。
六つ下には菜々緒みたいに尖った妹。
どちらも底抜けに可愛くて、どちらもよくうんこを漏らす子たちでした。
弟は中学生になるまで自我が芽生えないという特殊な体質の持ち主で、小学生の内はまだ自分がこの世界に存在していることをまるで認識していなかったそうであります。
兄である私から見ても、たしかに「そんな」感じの子でした。いつもボーっとしていて、心ここにあらずというか、こいつ中身入ってんのか~?お〜い?という感じで、もうかわいくてかわいくてね。
一緒に風呂に入っている時なんかぷりぷり~って音がしたと思ったら水面にうんこがプカ~っと浮かんでくるわけですよ。
わたくしはそれを桶でひょいひょいっと掬って、トイレまで行って流す。ザパーッ。
ぷりぷり~っ。プカ~。ひょいひょいっ。ザパーッ。
ぷりぷり~っ。プカ~。ひょいひょいっ。ザパーッ。
いえ、良いんです。
だってわたくしは長男ですから。
かわいい弟の面倒を見るのは当たり前のことなんです。
それに比べたら妹なんかは酷いもんで、もう成人した後だったと記憶しておりますがリビングでテレビを観ているわたくしの目の前に立ち塞がってですね、わたくしの顔面に向かってバァー!っと屁をこいた拍子にうんこを漏らすような女です。
その頃の妹は客の隣に座って短いスカートの股上にハンカチーフをそっと置くタイプの薄暗い飲み屋で働いていたので、このうんこ漏らしに鼻の下を伸ばして金を落とす連中に憐れみを禁じ得ませんでしたね。
拝啓、あの頃のお客さんたちへ。
妹宛のLINEに返信をしていたのはわたくしです。
ごめんね。
いえ、良いんです。
だってわたくしは長男ですから。
かわいい妹の面倒を見るのは当たり前のことなんです。
そんなうんこ漏らしの一族に在って、わたくしだけはうんこを漏らしたことがありませんでした。
うんこだけじゃありません。
弱音のひとつさえ漏らしたことはございませんでした。
長男はね、心の括約筋も強いんです。
昭和六十三年生まれのわたくしは頑固一徹、家父長制の鬼、亭主関白の九州男児なのであります。
親の脛は齧っても弟妹の世話にはならねえ。
それが長男の矜持ってもんでやす。
そんなわたくしの妻も実はわたくしよりもふたつ年下。
わたくしの弟と同い年の三十五歳なのでやす。
これはつまらんプライドなのかも分かりませんが、妻とは大学の先輩後輩の間柄であった時期に知り合いましたもんで、わたくしの方がふたつ年上だから、そりゃあしっかりしなきゃといいますか、後輩に舐められちゃあお仕舞いよといいますか、結論、いつまでも「格好良い先輩」で居たいんだと、そんな風に思っていた自分も心のどこかに居たのです。
だからシャワーの音に気付いた妻が寝室からやって来て、風呂場のドアを開けた時に流れたわたくしの涙のワケを、古賀家先祖の英霊各位にだけは分かって欲しい―――
さて、うちの親父はといえば、水泳で県の記録を持っていたり、大学ではラグビーをやっていたりと、かなり「頑丈」な鉄筋コンクリート男でありまして、たとえば骨なんか折っても全然平気な兵なのです。バキ折れしていても泣き言ひとつ言わなくて、まだ治ってないのに草ラグビーの試合出て二度折りしたりだとか。
だからそんな親父が涙を流して泣いているところってわたくし、全然見たことがなくてですね。
この三十七年間で二回、たったの二回しか見たことがないのですよ。
一度目は親父の兄、わたくしからすれば叔父にあたる兄ちゃんが雪崩に巻き込まれて死んだ時の葬儀の場で、こらえきれずに。
二度目は、親父自身が牡蛎にあたった時、そのあまりの痛みに、こらえきれずに。
涙って、こらえきれずに、零れるものなんですよねうんこと一緒で。
牡蛎にあたって、親父は痛くて痛くて泣いて。
牡蠣にあたって、わたくしは漏らして泣いて泣いて。
俺たちタイプは違うけれどやっぱり親子だよなって。
繋がってるよなって言われたようで、なんだか嬉しくなって。
買ったばかりだったクイーンサイズのマットレスに除菌スプレーを死ぬほどかけて、掛け布団のカバーを洗濯機にぶち込んで、病院に行ったら「車から出るな」って言われて、車窓の外から腕だけ伸ばして聴診器当てられて「貝毒カナ~」って言われて、「1,220円で~す」って言われて。
昨日、弟の結婚式だったんですよ。
中学に上がるまでずっと意識不明瞭で肉体と精神が分離していたくせに大卒で勤めた会社で営業成績ぶっちぎって親会社に栄転してそのままずっとサラリーマン続けて三十五歳で十個も下のカラテガールと結婚するのだから人間ってやつは杓子定規で測れんものです。
アホな弟とおバカな妹に囲まれてただ一人孤高の天才を気取っていたわたくしも、三十路を過ぎれば一介のうんこ漏らしに相違なく、形而下においては普遍なる凡夫へと成り下がった夫を唯一支え得る偉大なる妻への感謝だけが、いまこの胸の内に宿る確かな温かみとしてじゅんわりと感じられます。
結婚とは、牡蛎のようなものだ。
胃袋を掴まれたら、逃れられない―――
以上を開会の言葉に代えさせて頂きまして、#古賀コン8 、軽やかにスタートいたします。
香り高い文学の祭典を、どうぞ最後までお楽しみください!
👏🏻👏🏻👏🏻👏🏻👏🏻 <ワーッ !
本文学祭のコンセプト
古賀コンこと私立古賀裕人文学祭は「時給1万円の文学祭」がコンセプトの私的なオンライン文芸イベントです🐸
「1時間で書き上げた文章、優勝したら1万円」
テーマに沿って1時間で書いて出す。
ただそれだけの企画です。
ただし、この古賀コンは何と言っても「体験型のイベント」。
出す出さないは一旦置いておいて、ぜひ書いてみてください。着の身着のまま、衝動に身も心も預けてとりあえず書いてみてください。
書いてみれば必ず発見があります。
無意識に出る手癖や、気づいてなかった嗜好、思いもよらない展開、そんな驚きが得られる1時間を、ぜひ楽しんでください。
それでもし具合が良ければ、えいやあっ!とエントリーしてみてください。
途中で切れちゃっててもOK、誤字脱字だらけでも大丈夫です。
最初から最後まで全部間違っていたって全く問題ないのが古賀コンです。
皆さまからのうっかりを、心よりお待ち申し上げます☺︎
応募方法
作品のご応募はTwitter(X)にDMいただくか、メールでもお受付しています。
応募作品をご自身のnoteやブログ、あるいはTwitter(X)などに投稿して頂いて、そのURLを私まで提出下さい。
作品のどこかに「#古賀コン」「#古賀コン8」をつけてもらえたら嬉しいです!(もちろんつけなくても審査には影響しないのでご安心を☺︎)
提出先はTwitter(X)のDMか下記メールアドレス好きな方をお選び下さい。
※Twitter(X)は相互フォローじゃないとDM送れないのでぜひフォローして下さい~☺︎
応募時に教えて頂きたい情報
① 筆者名(ふりがなも!)
② 作品のタイトル(タイトル大事です!)
③ 作品のURL(掲載先に指定はありません、ご自由に!)
応募先 1:Twitter(X)へDM
https://twitter.com/koga_hiroto_13
応募先 2:メールアドレス
※メールかDMでの参加表明をもって「エントリー完了」となります。お気をつけください。ハッシュタグ投稿ではエントリーになりませんのでお気を付けください。
※お受付が完了した際にはわたくしから返信を差し上げています。もし返信がない場合はお手数ですがご一報ください。(迷惑メールフォルダに紛れていたり、DMが受け取れていないことが過去にありましたゆえ、お手数ですがよろしくお願いいたしますm(__)m)
優勝作品の選定と各賞概要
ご応募頂いた作品は古賀が責任もって拝読し、優勝作品および各種優秀賞を選定致します。
前回の結果発表記事はこんな感じ↓
■「最優秀古賀賞」とは
・最優秀作品に与えられる賞で、今回の優勝作品です。
・嘘偽りなく真っ直ぐに私の胸を打った作品に授与します。
・魂が震える作品、お待ちしております。
☆賞品:アマギフ1万円分
■「裕人賞」とは
・優秀作品に与えられる賞です。
・私の文学的琴線に触れた作品の中から、
・特に言葉や文章の魅力を重視して選出します。
☆賞品:何かわたしっぽい粗品
■「🐸賞」とは
・優秀作品に与えられる賞です。
・私の文学的琴線に触れた作品の中から、
・特に構成や着眼点の面白さを重視して選出します。
☆賞品:何か🐸っぽい粗品
■「🌸賞」とは
・優秀作品に与えられる賞です。
・観覧者による人気投票で最多得票であった作品に授与します。
・最優秀古賀賞/裕人賞/🐸賞とのダブル受賞も有り得ます。
☆賞品:何か🌸っぽい粗品
本文学祭に関する注意点
※本件は古賀裕人による私設文学祭であり、最優秀古賀賞を受賞されてもキャリアに箔はつきません。全然つきません。でもたぶん嬉しい。
※審査は古賀裕人が単独で実施いたします。誰にも相談しません。
※それでも良いよと面白がってくださる方、お祭りをポジティブに楽しめる方のみ、ご応募ください。
※エントリー頂く作品数に制限はありませんが、持ち時間は1人1時間です。1時間以内に複数ご執筆頂いた場合には、全てまとめてご提出ください。ただし作品数自体は選考に影響しません。
※提出頂いた作品の著作権は100%著者にあります。が、もしこの企画が長続きして、作品集作ろうよってなったらその時はまた相談させて下さい!
※古賀コンは募集要項も応募作品も結果発表も誤字脱字だらけで毎回お送りしております。もし見つけたら優しく教えてね☺︎
ほんの少しだけ癖のあるイベントなので、初めて参加される方はこちらも併せてご参考ください☺︎
応募いただける素敵な作品
ジャンルは不問です。
小説、エッセイ、短歌、官能、なんでもOK。
NG項目はありません。
セリフ有なら漫画も可!
ただし募集期間内に1時間で書き上げた新作に限ります。(字数制限なし)
また後述する課題テーマが作品に盛り込まれていることが条件です。
テーマは開催回によって変わるので、毎度チェックよろしくお願い致しますね。
また規定の「1時間」をどう捉えるか、テーマをどう扱うかなどは、全て執筆者の方の自己判断にお任せ致します。自分が1時間だと思ったらそれが1時間なのだ!
※「持ち時間」が1人1時間です。1時間以内に複数の作品をご執筆頂いた場合には全てまとめてご提出ください。
応募いただける素敵なあなた
年齢性別国籍問わず、どなたでもご参加頂けます。
ただし、過去に支払いを受けた原稿料を時給換算した時にその時給が1万円を超えたことがある方は参加ご遠慮下さい。
※遠慮しない場合はエントリー可
作品募集期間
2025年3月6日(木)21時
~ 同年3月10日(月)21時 迄
※募集期間は毎回あえて短めに設定しますのでご注意下さいませ!
◎それ以降のスケジュール・3月10日(月)22時頃 ~ 3月14日(金)13時迄:人気投票受付期間
・3月10日(月)22時頃 ~ 3月17日(月)13時迄:人気投票受付期間・3月14日(金)19時頃:結果発表
・3月17日(月)19時頃:結果発表
・3月20日(木)21時〜:古賀コン8後夜祭@Xスペース
第8回私立古賀裕人文学祭テーマ
今回のテーマは、、、
「 孤高の天才未満 」
とします。
このテーマをどう解釈するかはあなたの自由!
好きなものありったけ詰め込んだ作品、ぜひ読ませてください。
ご応募お待ちしておりまーーーす!(/・ω・)/
ご観覧の皆さまへアンケート投票のお願い
今回も人気投票、実施いたします。
「ええな〜これ!これええな~!」と思ったものに一票ご投票を頂けましたら幸いでございます。
もちろん全ての作品をご覧になる必要はありません。
気になって覗いたものの中から、「あなたの一番」を教えてください。
ご協力のほどよろしくお願い申し上げます☺
以上
主催者プロフィール
古賀 裕人(こがひろと)
博士(芸術学)、演出家、ビジネスコンサルタント
東京生まれ東京育ち現埼玉住み孤高の36歳。
専門は演技論、社会心理学、対人コミュニケーション、食べ歩き。
福岡のご当地うどんチェーン「牧のうどん」を心から愛する男。
トルストイの『幼年時代』や、『岩谷テンホーのみこすり半劇場』を超える作品に出合いたい。
そんな思いでこのコンテストを主催しています。
出て来い!!未来の文芸ご意見板!!!
\ あっぱれ /
