短編小説|七福神シリーズ2|第3話 【偽狛犬の出没と、空飛ぶ宝船の緊急発進!】
七福神の大切な物が、式神に次々と消されていく
祠(ほこら)の中で、偽の狛犬に姿を変えた式神が、
ケラケラと嘲笑いながら逃げようとする。
昨夜、宴で笑っていた“あの狛犬”の面影はどこにもない。
その瞳は、まるで別の何かに塗り替えられていた。
どこかの誰かが、式神に術をかけ、神の福徳である大切なものが
奪われた。
このまま、逃がしてはならない。
逃げ場を探す偽狛犬を見た寿老人は、
「おのれ……これでも喰らえっ!」
寿老人は、自らの立派な白い顎髭を数本引き抜き、空中にふっとばらまいた。
すると!その一本一本が黄金の光を放ち、
ピシャーーン!
と鋭い稲妻が走る。
同時に、祠の扉がばぁーーーーん! と豪快に開いた。
天空から稲光に包まれながら舞い降りてきたのは、
まばゆいばかりの 「宝船」だ!
「今だっ!」とばかりに開いた扉から偽狛犬が逃げ出す。
神たちはすぐさま宝船に飛び乗ろうとした――その時。
「待て!境内の隅を見ろ!」
恵比寿が指さした先。
境内の木陰に、まるで深い眠りに落ちたように動かない狛犬の「阿形(あぎょう)」と対の片割れ、「吽形(うんぎょう)」、そして、その傍らに控える「獅子」の姿があった。
「偽狛犬め……われらの仲間にも術をかけていたのか……!」
大黒天が悔しそうに拳を握る。
昨夜の宴の最中、狛犬の阿形はしきりに外を気にしていた。
あれは――式神の気配を察知していたのだ。
「術で深く眠らされておるようじゃな……。
今は起こしている時間はない! 行くぞ!」
寿老人の合図で、七福神は宝船へ向かう。
「よっこらせ、っと〜」
「どっこいしょ!」
老体の寿老人と福禄寿が掛け声をあげる。
だが、そこは老いてもなお神。
猫のようにしなやかに「ぴょん!」と、平屋の屋根ほどもある船体へ軽々と飛び乗った。
一方、優しい毘沙門天は、弁財天にそっと手を差し伸べる。
琵琶を奪われた弁財天だったが、凛とした表情は崩さない。
彼女が澄んだ声をひとつ響かせると、その体はふわ〜と宙に浮き、
涼しげな顔で乗船した。
宝船は空へと舞い上がり、追撃を開始する。
「西へ逃げたぞ! 追えっ!」
必死に逃げる偽狛犬を追い、宝船は雲を切り裂いて突き進む。
槍もない。小槌もない。
大切な武器を奪われ、敵の正体さえ分からぬまま、彼らはほとんど裸一貫で戦地へと向かうのだ。
「待て待てぇ〜い! 逃がさんぞ!」
武器はなくとも、八百万(やおよろず)の神としての意地がある。
夕闇を切り裂いて進む宝船の先に、
不気味な黒い雲が渦巻き始めていた……。
──第4話へ、つづく
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